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7章 西への旅路

第341話 様子がおかしい

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「お二人とも何をしているのですか?」

「いやーケイ君がナンパされてるなーと思って。」

「......。」

入口から体を半分だけ出しているリィリさんとナレアさんに問いかけると、リィリさんが笑いながら出てくる。
因みにナレアさんは体を半分隠したまま、凝視するようにこちらをじっと見て来ている。
いや、迂闊なことは今回は言っていないし睨まれるようなことは何も無い筈......。

「いえいえ、リィリさん。私にまったく靡きませんでしたよ。これは絶対本命がいると思います。」

「そっかー誰だろー気になるなー?」

なんかめんどくさい人が増えた......いや、待て。

「今この店員さん、リィリさんの名前呼んでいましたよね?」

「うん。」

「お知り合いですか?」

「「うん。」」

「さっきまでのやり取りは?」

「全部見てたよ?」

「それは何となく分かっていましたが......そうじゃなくって......狙いはなんですか?」

俺は並んでこちらを見ている店員さんとリィリさんにジト目を送るが......二人は俺のそんな視線もどこ吹く風といった感じだ。

「聞きたい事があったんだけどねー、ケイ君全部無視するからなー。」

悪びれる様子は全くなく......なんだったら先程までの続きを始めそうな雰囲気だけど......結局俺に何を言わせたかったのか......いや......流石になんとなく分からなくはないけど......。
俺がナレアさんの方に視線を向けると、先程までと変わらず体を隠し顔だけを出した状態でナレアさんがこちらをじっと見つめてきている。
なんで出てこないのですか?

「いきなり初対面の人に、そんな話するはずないじゃないですか......。」

正直相当うざかったし......。

「じゃぁ、初対面じゃない私はいいよね?ね?」

「......いや、そういうのはちょっと。」

いつもの様子とは若干違うリィリさん......何故か妙にしつこい。
何かあったのだろうか?
後ナレアさんの視線が痛い。

「「......。」」

「いや、じっと見られようと何も言いませんよ?それよりもリィリさん、食事の注文はいいのですか?」

「......はぁ。ケイ君はほんと駄目だ......レギにぃと双璧を成すくらいダメダメだよ。」

「......その手の話をこんな場所で大っぴらに出来るほど、開けっ広げじゃありませんから。」

「じゃぁ、今度二人っきりで!」

それだとなんか告白したりするみたいじゃないですか?
なんだか物凄く疲れた......。

「じゃぁ、リィリさん後で聞かせてねー。」

「うんー。」

二人っきりの意味が全くない......。

「あーリィリよ。」

「勿論ナレアちゃんにもー。って言うか当然だよね!」

ナレアさんが扉の所にいるのを止めて食堂に入ってくると、リィリさんが満面の笑みで身も蓋も無い事をナレアさんに告げる。

「い、いや、リィリ。そうではないのじゃ。へ、ヘネイに連絡を入れねばならぬのでな、妾はちょっと出てくるのじゃ。」

「あ、そっか。うん、わかったよ。そんなに遅くならないよね?」

「うむ。詰所にいる知り合いに手紙を渡すだけじゃからな。すぐに戻ってくるのじゃ。」

「了解!じゃぁ少ししてから料理は頼んでおくね。」

「では、料理が醒める前に戻ってくるのじゃ。」

「うん、楽しみにしててね。じゃぁ、ケイ君もナレアちゃんと一緒に行っておいでよ。」

「うぇ!?」

リィリさんの申し出にナレアさんが変な悲鳴を上げた。
なんだか今日のリィリさんは脈絡がないな......。

「レギにぃもまだ来ないし......ケイ君がここに残っていても、私達に色々言われるだけで気が休まらないと思うよ?」

それ本人が言うのはおかしくないですか?
なんかリィリさんと店員さんが並んで非常に嫌な笑みを浮かべている......。
っていうか、店員さんはさっき仕事に戻っていったはずでは?
まぁ、ここに残るという選択肢はないようだ。

「いや、しかしじゃな......ちょいとそこまで行くだけじゃからな?手紙を渡すだけじゃし、ついて来ても何も良い事はないのじゃよ?」

「......いえ、ついて行かないと碌でもない事になりそうですし、お供させてください。」

「む......う、うむ。そうじゃな。ここはちょっと危険な感じがするのじゃ。疾く行くとするのじゃ。」

そそくさと宿を後にする俺達をなんとも言い難い表情で見送るリィリさんと店員さん。
一体何なのだろうか......。

「なんか......リィリさん、これでもかって言うくらいおかしくないですか?」

「う、うむ。一体何があったのやら......。」

「この手の雰囲気の場合レギさんは頼りにならないですが......ちょっと相談してみようかな?」

「う、うむ......そうじゃな。リィリには困った物じゃ。」

こういった話題というか......リィリさん達が悪ノリしている時はレギさんだろうがカザン君だろうがほぼ役に立つことは無いけど、今日のは流石に様子がおかし過ぎる。
なんで急にリィリさんはあんな感じになったのだろうか?

「......まぁ、リィリがあんな感じになったのは妾のせいじゃ。すまんのう。」

「......えっと、何かあったのですか?」

俺が問いかけると若干気まずげにしたナレアさんだったが、真剣な表情になりこちらを見る。

「まぁ、丁度いい機会じゃな。ケイに少し聞きたいことがあるのじゃが......。」

「なんでしょうか?」

随分と様子の変わったナレアさんに俺も背筋が伸びる。
そのまま神妙な顔をしたナレアさんが通りを無言で進んでいく。
自分から切り出したものの、何と言葉を続ければいいのかと悩んでいるように見える。

「その......何と言うか......あー、ケイよ。その......最近、悩みとかはないかの?」

ナレアさんの言葉を聞き一瞬キョトンとしてしまう。
何だろうか、この......思春期の子供の扱いに戸惑う親御さんの様な質問は。

「えっと......特にはありませんが......どうかしましたか?」

「......そうじゃな......以前、ケイの目的は神獣全員に手紙を届ける事、それと両親に連絡をすることと言っておったな?」

「えぇ。そうですね。」

「それは今でも変わっておらぬのかの?」

「えぇ、勿論。」

俺がそう返事をすると一瞬顔を顰めたナレアさんだったが、軽くため息をついて話を続ける。

「詳しく聞いたことは無かったが、何故連絡をしたいのじゃ?」

「え?それはまぁ、何も言わずに突然いなくなってしまいましたからね。心配しているでしょうし......ちょっと事情があって何かしら連絡を取らないと拙いことになりそうで。」

「拙い事じゃと?」

「えぇ......。」

俺は両親が再婚するために離婚したことを伝え、突然俺が失踪したりしたら責任を感じたりして再婚を諦めたりするのではないかと懸念している事を話した。

「つまり、ケイが両親に連絡を取りたいのは......心配しなくてもいいと伝えたい、自分の事は気にせず両親に幸せになってもらいたいという事じゃな?」

「そうです。流石に、自分のせいであの両親が罪悪感を覚えたりして......再婚を取り止めたり、妙なことになったりしたら悪いですからね。」

「ふむ。確かにそれは気になる所ではあるのう。」

「ですよねぇ......早い所何とか連絡を送って、こちらの事は気にせず仲良くやって欲しいと伝えたいのですよね。まぁ、僕のスマホと僕自身は同時に召喚されたにも拘らず、この世界に到着したのはかなり時間差がありましたし......多少遅くなっても大丈夫かなと思っているのですが。」

「ふむ......確かに時間差は相当あるようじゃが......まぁ、その辺はどうなるかは分からぬのう。」

「ですよねぇ......。」

そもそも連絡を取る手段も全く目処が立っていないんだよね......そのことについて悩んだりはしていなかったけど......あ、もしかしたらナレアさんの気にしていた悩みってこれかも?
確か仙狐様の神域から出る時に、連絡を付ける算段が全く付かない事を考えたりしていたっけ。

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