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最終章 狼の子
第497話 ですし?
しおりを挟む「既に吸収されてしまったとは言え......いえ、吸収されてしまったからこそ、その処理を僕の手でやりたいのです。」
俺は三人の事を見据えながら想いを伝えた。
これは俺の我儘ではあるけど......どうしても譲りたくなかったのだ。
「......それは分かるがの?」
硬い表情でナレアさんが言うが、俺はそのまま言葉を続ける。
「実験として母さんの魔力をダンジョンのボスに吸収させたのはキオルですが......まぁ、彼からしたら実験ですし、そこに悪意も善意もありません。あったのはただの好奇心ですかね?行ったことに対する責任はあるでしょうけど......そこを問うたところで意味はありませんし、あれはそういうことを気にするような人じゃないですね。」
「それは、ケイの言うとおりじゃな。じゃが、ケイが一人でその責任を負う必要はあるまい?」
「いえ、元々の責任は僕にあると言えます。」
「どういう意味じゃ?」
「......アザルが神域に来た時。本来であれば母さんが魔力を奪われるようなことはあり得ません。例え、僕の蘇生で大量に魔力を消費していた状態だったとしても、そんなこと何の問題でもなかったはずです。」
「「......。」」
「ですがあの時、僕が崖から落ちてしまい......それを助ける為に母さんは隙を見せ、その結果魔力を奪われました。」
万全であろうとなかろうと、母さんがアザル程度に魔力を奪われるなんてことは絶対にありえない。
母さんにアザルを殺す気はなかったとしても、相手になるとかならないとかそういうレベルですらないだろう。
「それがどうしても許せないのですよ。あの時襲われたことにびびって滑落して......あれはこの世界に来て最初の、そして最大の失敗だと思っています。しかもその結果、普通の人達では討伐出来ない様な魔物が生まれることになりました。」
「......その時の話は聞いておるが......どう考えてもケイのせいではなかろう?」
先程までとは違い、困ったような表情になったナレアさんが言う。
「ケイ一人で背負う必要は無い事じゃし、御母堂だってそんなことは望まない筈じゃ。」
「母さんなら恐らくそう言うとは思いますが......ですがやはり僕のせいだと......。」
「助けた相手に責任何ぞ背負って欲しくはないじゃろう。それにその魔物が何かやらかしたわけでもない。まぁ、檻の構成員に被害は出ておるかもしれぬが......そっちは自業自得みたいなもんじゃろ?まだ被害も出ておらぬような魔物なぞ居って居らぬようなものじゃ。責任も何もあったものではなかろう?」
「いや......それはそうかもしれませんが。」
「それにケイが御母堂の魔力を奪われることになった原因というなら、そもそもケイをこの世界に召喚してしまった鳳凰......そして鳳凰にその召喚魔法を使わせた魔神......さらに言えば魔神をこの世界に召喚した国にあると言えるじゃろうな。」
「遡り過ぎじゃないですか?」
そんなことを言いだしたら最終的には人類が誕生したことが悪いみたいな所まで行ってしまうような......。
「そうかの?ケイが言っておることと大して変わらぬじゃろ?元をたどっての責任なんて話をしだしたらキリが無いのじゃ。」
「......。」
確かにその通りだと思いますけど......。
俺が何も言い返せずにナレアさんを見ると大きくため息をつかれる。
「では、件の魔物をは全員で戦うという事で良いの?」
「いや、ちょ、ちょっと待ってください。それとこれは話が!」
「何を言っておるのじゃ?今しておったのはずっとその話じゃろ?」
「い、いや、確かにそうですけど......。」
駄目だ!
この流れでナレアさんを言いくるめられるはずがない!
レギさんやリィリさんは......あ、駄目だ。
この話題になってから相当厳しい目のままだし......それは今もベッドの上で威圧感を放っている子も同じだ。
「分かりました。言い方を変えます。母さんの魔力を魔神の魔力に吸収されているのが心底気に食わないので僕が片をつけます。」
「む......。」
「責任だなんだというのは......まぁ建前です。本当はその建前でナレアさん達が納得してくれればと思っていたのですが......やっぱり駄目でしたね。」
「......ふん。責任だなんだで命を賭けさせる訳なかろう。相手はファラ以上と聞かされておるのじゃぞ?」
まぁ......言われてみればそうなのかもしれない。
仮に、ナレアさんが魔道国の事で責任があると言って一人で危険に飛び込もうとしたら、俺は全力で反対する。
どうも考えが独りよがりになっている感じだな。
「そう......ですね。すみません。」
「じゃが......まぁ、さっきの啖呵は良かったのじゃ。その理由であれば拒みにくいが......。」
そう言ってナレアさんは俺から視線を外す。
「ケイ。」
ナレアさんに任せていたのか今まで黙っていたレギさんが口を開く。
「はい。」
「ケイが戦う場には俺達も行く。それはいいな?」
「はい。」
「ギリギリまでは俺達も手を出さない。だが本当に危険だと思ったら手を出す......というか、恐らく勝手に動いちまう。」
真剣な表情を変えずにレギさんが言葉を続ける。
ギリギリまでは抑えてくれる、か。
相手の強さを考えると、今までの戦闘のように圧倒するって訳にはいかないからな......。
「......危なげなく、というのは難しいかもしれませんが......出来る限り心配させないように頑張ります。」
「油断していないのならいい。」
「......流石にファラより強いって評価を得ているような相手に油断なんて出来ませんよ。」
「ちげぇねぇ。」
レギさんが表情を変えて苦笑する。
その横でリィリさんも困ったような表情で笑い......どうやら二人とも納得してくれたようだね。
相変わらずベッドの上から強烈な視線を飛ばしている子は......困ったなぁ。
一月程前......南方の魔物退治に参加する直前にこの話をしたのだけど......まぁ、その反応は物凄い物だった。
最近シャルに冷ややかな視線を向けられることは......偶にあったけど、それとは比べ物にならない視線......いや、視線だけじゃなくってお言葉も頂戴した。
まぁ......俺を心配しての事だけど......うん......この世界で一番恐怖を覚えた瞬間だったかもしれない。
それでも何とか話を聞いて貰って......とりあえずは納得してくれた......と思っていたのだけど、今の様子を見るにあまり納得してくれているとは言い難いようだな。
「えっと......シャル?」
『何でしょうか?』
「まだ納得してくれないかな?」
『私はケイ様の眷属筆頭です。ケイ様のすることに否やはありません。』
「......。」
その台詞が出る時ってほぼ間違いなく納得してない時だよね......?
俺はベッドの上に居たシャルを抱き上げると膝の上に居たマナスに代わりシャルを乗せる。
『......。』
膝の上に乗せてもシャルは何も言わない。
俺はそんなシャルのことをゆっくりと撫でる。
『......。』
「シャル......どうしても俺がやりたいんだ。まぁ、相手も強いから心配かも知れないけどさ。」
『......いえ、ファラより多少強い程度、ケイ様であれば問題ないと思われます。』
......いや、それは俺を過大評価し過ぎだと思うな。
『......それにケイ様が御一人で戦われるというのも、今更の事ですし?私達は今まで通り後ろに控えているだけですし?私は何も不満などありませんし?』
なんかシャルの口調がおかしいですし?
まぁ......それはさておき、かなりシャルの鬱憤が溜まっているな......でもシャルのストレス発散って難しいよなぁ。
俺はナレアさん、レギさん、リィリさんと順番に視線を送るが......ナレアさんは何やら不満そうにこちらを見返し、レギさんは明後日の方向を見て、リィリさんはいつも通りニコニコとしている。
......俺は途方に暮れながらシャルの頭を撫で続けた。
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