7 / 10
7
しおりを挟む耳を澄ますとそれは花火の音だった。近くで花火がうち上がる音が聞こえてきた。その途端、俺は思い出した。
――そういえばこの前、千里が花火大会に行こうと誘ってきた。そしてそれは今日だった。俺とした事がその約束をすっかり忘れていた。それと同時に、彼女からのメールの意味に気づいた。
その瞬間、千里が俺のことを今も待っていると思うと居ても立ってもいられなくなった。そして、最後の力を振り絞ると今まで以上にドアをバンバンと叩いて助けを呼んだ。喉もカラカラで声を出すのも辛かったけど、俺は構わずに助けを求めた。そして、最後の力を出しきるとそこでついに力尽きた。もうドアを叩く気力もなくなった。もうダメだと悟った瞬間、そこでエレベーターの明かりがパッとついた。それと同時に扉が開いた。
「大丈夫ですか!?」
扉が開いた瞬間、警備員がライトを照らしてきた。俺は助けてくれと手を振った。警備員はそこで慌ててエレベーターの中に乗り込むと、外に引っ張り出してくれた。エレベーターの外は涼しかった。警備員が、何かを言っていたが、俺はそんな事よりも水をくれとジェスチャーで伝えた。そして、まもなくすると警備員がペットボトルを手にして戻ってきた。俺はそれを奪うと慌てて一心不乱にゴクゴクと飲み干した。
「あの、大丈夫ですか……?」
警備員がそう言って尋ねてくると、俺は何も答えずに鞄を手に持つとフラフラと前に歩きだした。そしてそのまま、彼女が待っている場所へと歩き出した。
0
あなたにおすすめの小説
貴方なんて大嫌い
ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と
いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている
それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
届かぬ温もり
HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった·····
◆◇◆◇◆◇◆
読んでくださり感謝いたします。
すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。
ゆっくり更新していきます。
誤字脱字も見つけ次第直していきます。
よろしくお願いします。
【短編】ちゃんと好きになる前に、終わっただけ
月下花音
恋愛
曖昧な関係を続けていたユウトとの恋は、彼のインスタ投稿によって一方的に終わりを告げた。
泣くのも違う。怒るのも違う。
ただ静かに消えよう。
そう決意してトーク履歴を消そうとした瞬間、指が滑った。
画面に表示されたのは、間の抜けたクマのスタンプ。
相手に気付かれた? 見られた?
「未練ある」って思われる!?
恐怖でブロックボタンを連打した夜。
カモメのフンより、失恋より、最後の誤爆が一番のトラウマになった女子大生の叫び。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる