共鳴のヴァルキュリア (全話再編集完)

成瀬瑛理

文字の大きさ
119 / 193
第7章―消えゆく命の残り火―

3

しおりを挟む
「此処には『大人』の人がいません。僕達だけの判断では…ぐすっ…この状況を…ぅぅっ……」

 急に彼が泣き出すと雪矢は固まった。

「それにグラギウス艦長の命令は『絶対』だから…ぐすっ…それに従わないと僕達はグラギウス艦長に怒られます…ひっく…。艦長は怒ると鬼のようにめちゃくちゃ怖い人だから、きっと僕達は彼に銃殺される……! だからお願いします雪矢さん、艦長が戻るまで此処に居て下さい!」

 ジノは泣き落とし作戦で、彼にすがると雪矢は迷った。
 
「そっ、そんな捨て犬のような目で僕を見ないで欲しいね。そんなんで僕が揺らぐと思ってる?」

そう言って両腕を組むと彼らから目を反らした。しかし、まだ無言で見てくる彼らに対して気持ちがついに折れると、雪矢は深いため息をついた。

「――わかったよ。僕の負けだよ。やればいいんだろ、やれば? だからそんな捨て犬のような目で僕を見てくるのは止めてくれるかい?」

 雪矢がそう言って艦長の椅子に座ると、ジノは嘘泣きをやめてニヤッと笑った。

「言っとくけど僕がここに座るのは、グラギウスが戻ってくるまでだからね。で、僕はどうすればいいの?」

オペレーターのジノは、彼に現在の状況について一通り報告した。

「――成る程ね。で、その偵察機の方はいまどうなってるの?」

「はい! 偵察機の方は地上より、本艦の上空をさっきから何度も飛び回っています。恐らく我々がこの基地にいる事を敵は知っているか知らないかのどちらになりますが、この場合は下手に動かない方が賢明かと思います」

「わかった。じゃあ動かない方で決まりだ。そのほうが良いよ。うん、きっと彼だったらそうするだろうね」

 雪矢は艦長の椅子に座ると彼なりに考えた。

「我々がいるのは地下の戦艦収容施設です。恐らく地上からのレーダーでは、敵に感知されにくいかと……」

「それって『安全』て意味? 僕は若いままで死にたくはないからね。ちゃんと安全なのかをこの際ハッキリして欲しいな」

 雪矢は一言言い返すと半信半疑で疑った。

「仮に敵に居場所を発見されても、我々の戦艦には最新のSPS機能が搭載されている為、その場をしのぐことは出来ます」

「え、SPS機能? なにそれ?」

雪矢は不思議そうに首を傾げるとジノに尋ねた。

「SPS機能とは特殊機能のステルス・ファントム・システムのことです」

「何そのステルス何とかって?」

「SPS機能を使用することで戦艦を透明化して、敵に見えにくくする効果があります。また使用時には、敵のレーダーにも感知される心配はありません。そもそもSPS機能はですね――」

 ジノが得意気に説明して話すと、雪矢はそれを遮った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

異世界で農業を -異世界編-

半道海豚
SF
地球温暖化が進んだ近未来のお話しです。世界は食糧難に陥っていますが、日本はどうにか食糧の確保に成功しています。しかし、その裏で、食糧マフィアが暗躍。誰もが食費の高騰に悩み、危機に陥っています。 そんな世界で自給自足で乗り越えようとした男性がいました。彼は農地を作るため、祖先が残した管理されていない荒れた山に戻ります。そして、異世界への通路を発見するのです。異常気象の元世界ではなく、気候が安定した異世界での農業に活路を見出そうとしますが、異世界は理不尽な封建制社会でした。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

『25歳独身、マイホームのクローゼットが異世界に繋がってた件』 ──†黒翼の夜叉†、異世界で伝説(レジェンド)になる!

風来坊
ファンタジー
25歳で夢のマイホームを手に入れた男・九条カケル。 185cmのモデル体型に彫刻のような顔立ち。街で振り返られるほどの美貌の持ち主――だがその正体は、重度のゲーム&コスプレオタク! ある日、自宅のクローゼットを開けた瞬間、突如現れた異世界へのゲートに吸い込まれてしまう。 そこで彼は、伝説の職業《深淵の支配者(アビスロード)》として召喚され、 チートスキル「†黒翼召喚†」や「アビスコード」、 さらにはなぜか「女子からの好感度+999」まで付与されて―― 「厨二病、発症したまま異世界転生とかマジで罰ゲームかよ!!」 オタク知識と美貌を武器に、異世界と現代を股にかけ、ハーレムと戦乱に巻き込まれながら、 †黒翼の夜叉†は“本物の伝説”になっていく!

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...