共鳴のヴァルキュリア (全話再編集完)

成瀬瑛理

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第6章―運命の選択―

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「名誉の死も勲章も、死んだ奴にはわからない。ただそれは単なる気休めだ。だが、そんな気休めでも誰かの慰めにはなるだろう…――」

 ケイニッフィは彼の何気ない言葉に俯いて拳を強く握った。そこに他の整備員が、バッツに声をかけた。帽子を被った若い整備員は、耳元で彼に報告をするとそこで頷いて返事をした。

「よし、インフィニティの補給は既に済んだようじゃな。良かろう。あとはわしに任せろ!」

バッツは整備員と会話を済ますと、首にぶら下げていた分厚いゴーグルを顔に装着した。

「翼を失った鳥は飛ぶことはできん。だが、その失った翼をもう一度取り戻せるとしたら、お前はどうするKよ。それでも再びあの空を飛ぶか?」

「バッツじいさん…――」

「だが、あの空は険しいぞ。お前に決して甘くはない。今よりも辛い事が起きるだろう。それでも耐え抜くか?」

 バッツは目の前でそう語りかけると、彼のヘルメットを手渡した。

「ワシはお前さんよりも、純粋ではない。多くの哀しみや仲間の死を嫌というほど沢山みてきた。だが、もしワシがお前にしてやれることがあるとすれば、失った鳥に再び翼を授けてやれる事ぐらいだ。さあ、どうするKよ。それでもお前はあの空を飛ぶか――?」

「ああ、俺は仲間を死なせやしない……! 翼があれば俺はどんな時でもあの空を飛んでやる!」

「よし、ならば再び飛んで行け! 全てが手遅れになる前に…――!」

「ああ、言われなくてもそうするさ!」

 彼からヘルメットを受けとると、揺るぎない力強い眼差しは雄姿に溢れた。

「少し待て! ワシがお前さんのインフィニティを直してやる――!」

 バッツは彼にそう告げると他の整備員と作業場へと向かった。そして彼の戦闘機を修理する作業にとりかかった。素早い彼の指示の下、若い整備員達は忙しそうに動いていた。

ケイニッフィは彼らに自分の戦闘機を預けると、作業場から一人抜け出して外に向かった。彼は外に出ると白い壁に背中をつけて凭れた。

ふと空を見上げると、自分の部下達の顔が自然と浮かんできた。ケイニッフィは宇宙に取り残してきた仲間達の事が心配で気がかりだった。だが、どんなに気持ちが焦ってもどうにも出来ない無力な自分に苛立ちを募らせた。そんなやり場のない思いを込み上げると、彼は自分の右手を握って空を見上げたのだった――。
 
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