無能はいらないとSランクパーティを追放された魔術師の少年、聖女、魔族、獣人のお姉さんたちにつきまとわれる

おさない

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第35話 兜の大男

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「おいおい、こりゃあどういうことだ?」
「ボス、ガキどもが逃げ出したみたいです」

 手下の一人が、大男に耳打ちする。

「そいつは見りゃわかる。だが、俺が言いたいのはそういうことじゃねぇ」

 大男は肩を揺らしながら歩み出て、マルク達の前に立ちふさがった。

「こっ、子供達には手を出させません!」
「それ以上すすんだら、ライムちゃんがぼこぼこにする!」

 マルクとライムは立ちはだかる巨軀《きょく》を見上げながら、戦いに備え身構える。

「――マルク、どうしてテメェがここにいる?」

 しかし次の瞬間、大男の口から発せられたのは意外な問いかけだった。

「どうして僕の名前を――!?」
「そうだな……今は色々と都合が悪い。――テメェらは後ろを向いてろ、振り返ったら殺すぞ」

 手下たちは、大男の指示に従い慌てて後ろを向いた。

「一体……何をするつもりですか……!」

 異常な事態に、警戒を強めるマルク。しかし、大男は余裕そうな態度で話を続けた。

「待てよ、これ以上はテメェとやりあうつもりはねぇ」
「………………?」
「つまりこういうことだ」

 そう言いながら、兜を外す大男。

 そこから姿を現したのは、ゴルドムだった。

「――っ! ゴルド「俺の名前を言うな。殺すぞ」
「理不尽です……!」
「俺の正体はほとんどの人間に明かしてねえ。テメェは特別だ」

 ゴルドムはそう言いながら兜をかぶり直す。

「ライムちゃんはいいの?」
「ばらしたら殺す」
「マルク、このひとこわい」

 ライムは、ゴルドムに威圧されてマルクの後ろにさっと隠れた。

「目的はなんですか……どうしてこんなことを……?」
「それは、俺が正体を明かした理由について聞いてるのか? それともガキどもを捕まえてる理由が聞きたいのか?」
「両方ですっ! こんなこと、到底見過ごせる行為じゃありません!」
「なるほどな。ガキどもを捕まえてる理由は単純だ。簡単に運べて、奴隷として売れば高くつく。要するに金になるからだ」
「最低ですっ!」

 あまりにも自分勝手な理由に、マルクは憤る。

「そんなことのために……みんなをひどい目にあわせて……それでも人間ですかっ!」
「F*ck yourself !」

 ゴルドムは、大声でマルクのことを怒鳴りつけた。

「綺麗事ばかり抜かしてるんじゃねえ! 金が無けりゃ何もできねえことは、テメェが一番知ってんだろ? え?」
「でも、こんなやり方許せません!」
「――もし仮に、テメェが一枚噛めるとしてもか?」
「…………?」

 ――言っている意味がわからない。

 マルクは困惑する。

「俺がテメェに正体を明かした理由、それは取り引きをするためだ」
「取り引き……?」
「ガキどもについては黙ってろ、そして俺たちのパーティに戻ってこい」
「そ、そんなの勝手すぎます! そもそも、僕のことを追放したのはあなた達の方じゃないですか!」
「ああそうだ。だが少し事情が変わった。……もし、俺の言う通りにすればテメェにもガキどもを売り捌いて手に入った金を分けてやる。そしたら、テメェが必死こいて稼ごうとしてる額がゴミに見えるほどの大金が手に入るぜ?」

 ゴルドムはそう言いながら、兜の下でいやらしく笑った。

「死にかけの姉ちゃん助けなきゃいけねぇんだろ? 欲しくて欲しくてたまらねぇよなぁ?」
「………………!」

 マルクは、何も言わずにうつむく。

「マルク……だいじょうぶ……?」

 その様子を見たライムは心配そうにマルクの腕を握った。

「みんなのこと、マルクは見捨てたりしないよね……?」
「心配しなくても、大丈夫ですよ」

 それに対して、マルクは小声でそう伝える。

「何の相談をしてやがる? 悩むことなんてねぇだろ。さっさと「お断りします」
「あ?」
「そんな方法で助かっても、お姉ちゃんは絶対に喜びません。――初めから取り引きにすらなっていないんですよ。ゴルドムさんは交渉が下手ですね」
「テメェ、俺の名前をッ!」

 マルクは名前を言ったことで、ゴルドムの手下達がざわつく。

「ゴルドム……? あの勇者パーティの……?」
「ボスが、ゴルドムだって……!?」
「勇者側の人間がこんなことを……?!」
「Shut up!」

 それらを一喝し、ゴルドムは大斧を構えた。

「そうか……なら交渉は決裂だな」

 そして、怒りで肩を震わせながら叫ぶ。

「Dust to dust. 塵に帰れクソガキどもがッ!」
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