無能はいらないとSランクパーティを追放された魔術師の少年、聖女、魔族、獣人のお姉さんたちにつきまとわれる

おさない

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第44話 勇者エルネストの没落 その5

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 残されたエルネストは、脱出口を見ながらほくそ笑む。

――貴様の無駄な努力のおかげで助かった。感謝するぞ。

 そして、心の中で老人に感謝の言葉を述べる。

「看守は…………いなくなったな」

 エルネストは周囲の様子を確認しながら呟いた。

「……悪いが、俺は一度この場所から脱出させてもらうぞ。お前のことは後ほど助けに来る。
「………………」
「どうしたんだ、ゴルドム?」
「……俺は……絶対にこの場所から出ねぇ!!」
「何を言ってるんだ? 頭がおかしくなったのか?」
「ここなら……奴らに見つからない……安全なんだよぉ……ッ! 俺のbigなDi*kはwackなbit*hどもから守られるんだッ!」

 そう言って、膝を抱え込むゴルドム。

「意味がわからないが」
「うぅ……うおおおおおおおおおおおおおん!」
「泣くな気持ち悪い」

 かつての威勢がすっかり消え失せたゴルドムに、エルネストは呆れ果てる。

「とにかく……俺は何があってもここから出ねえぞ!! 来るならかかって来い! ぶっ殺してやる!」

 ゴルドムは、ついさっきまで泣いていたかと思えば、今度は何かに向かって威嚇し始める。

「貴様には失望したぞ……勝手にしろ」
「や、やめろ……く、来るな! 頼むこの通りだ、やめ、うがあああああああああああああああああああああッ!」

 エルネストは、何かの幻影と格闘するゴルドムのことを見捨ててベッドの下へ潜り込み、穴に入って牢獄から脱出した。



  狭い抜け穴の中を腹ばいになって通り抜けると、老人の言った通り下水道へ出ることができた。

 エルネストは、周囲の安全を確認してから通路へ降り立つ。

「ふん、なぜ俺がこんな場所をこそこそと歩き回らなければいけないんだ」
 
 文句を言いながらも、出口を探して下水道の探索を始めた。

「衛兵風情が……この俺に無駄な手間をかけさせやがって……覚悟していろ……!」

 薄暗い道に、水の流れる音だけが鳴り響いている。

 そうしてしばらく道を進んでいると突然、背後で不気味な音がした。

「…………何事だ?」

 振り返ると、そこに居たのは三体のスライムだった。

 スライムはびちゃびちゃと飛び跳ねながら、エルネストの様子を伺っている。

「……なんだ、ただの雑魚モンスターか。生憎、今の俺は武器を持っていないが、貴様らなど素手と魔法で十分に対処できる」

 エルネストはそう言いながら戦闘態勢に入った。

 しかしその時、あることに気付く。

「いや……待てよ。確か下水道に居る浄水用のスライムは人間を襲わないんだったな」

 彼が今いる場所は下水道。ということは、目の前に居るスライムは、品種改良された温厚な種のはずだ。

「……まあいい、雑魚モンスターは大人しくこの俺のストレスケアに付き合えッ!」

 だが、エルネストにそんなことは関係ない。彼にとって、下等生物である魔物は全て討伐対象なのである。

「くらええええええええッ!」

 エルネストは、拳を振り上げながらスライムへ向かっていく。

 こうして、窮地に追い込まれた一人の勇者《おとこ》の戦いが始まろうとしていた。

 ――ここから、俺の新たな伝説がスタートする。

 エルネストは、自身の気分が高揚していくのを感じていた。



 数分後、ぼこぼこになったエルネストが三体のスライムにもみくちゃにされていた。

「やめろおおお! 俺から離れろおおおおお! この俺を誰だと思っているッ!」

 エルネストは喚きながら両腕を振り回すが、基本的にスライムに言葉は通じない。

「水を綺麗にすることしか能のない下等生物風情が調子に乗りやがってえええええええええええッ!」

 叫ぶエルネスト。

 馬鹿にしていることだけスライムに伝わったのか、攻撃はより一層激しくなる。

「ごおッ! がはッ! ぐふっ! おぼぼぼぼぉッ!」

 エルネストの全身に激痛が走り、限界を迎え気絶しそうになったその時。

「……そこまで」

 しわがれた声が聞こえてきて、スライムは攻撃を止める。

「――まさか、こんな場所へ客人が訪れるとはのう。ふぉっふぉっふぉ」

 そうしてエルネストの前に姿を現したのは、黒い杖をついた不気味な老人だった。

「貴様は……誰だ……! ……さっきからじいさんばかり現れやがって……!」

 エルネストは、老人を睨みつける。

「誰かと言われれば……そうじゃな……今はただの名もなき老いぼれじゃが…………かつては――――」

 老人は、ゆっくりと、思い出すように続けた。

「――――魔王と、そう呼ばれておった」
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