無能はいらないとSランクパーティを追放された魔術師の少年、聖女、魔族、獣人のお姉さんたちにつきまとわれる

おさない

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第68話 勇者エルネストの憂鬱 その3

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「とうッ!」
「ふんッ!」

 シリルとエルネストは路地裏で剣と槍を交え、激しい戦いを繰り広げる。

「くっ……なかなかやるじゃねぇか……」
「俺が誰だか忘れたか? ≪ウルトラスーパーデラックスインフルエンサー≫勇者エルネストだぞ?」
「変な肩書を追加するな!」

 シリルは、持っている槍を強く握りしめた。

「――まだやるつもりなら、そろそろ本気を出させてもらおう」

 エルネストがそう告げた瞬間、周囲の魔力が渦巻き始める。

「……へっ、望むところだぜ。俺もそろそろ思ってたとこだ」
「面白い。――かかって来い」

 エルネストの魔力と、シリルの気迫によって、周囲の空気が限界まで張り詰めていく。

 元Sランク冒険者同士の、意地と矜持をかけた戦いがそこにはあった。

――先に動いたのは、シリルだ。

「すみませんでしたもう生意気なこといいません!!!!!」

 エルネストに対して、シリルの高速詠唱が炸裂する。

「なんだと――ッ!」

 しかし、シリルの行動はそれだけでは終わらなかった。

 そのまま槍を投げ出して膝を折り、額を地面につけて全力の達人スキル≪土下座≫を発動する。

「どうか命だけはお助けをッ!」
「……皮肉なものだ。かつて俺が教えた『技』で決着がつくとはな」

 そう言いながら、剣を納めるエルネスト。

「おかーさん、あれなにしてるの?」
「だめッ! 見るんじゃありませんッ!」

 たまたま通りかかりその様子を目撃してしまった子供の目を、母親が塞いだ。

 並みの人間であれば、まず間違いなく彼らに近寄ることを躊躇するだろう。

 ――ともかく、こうして勝負はついたのだった。

「……ふん、もういい。俺の強さがわかったのならばさっさと失せろ。――――また犬のエサになりたくなければなッ!」
「すみませんでしたーっ!」

 シリルは涙目になりながら、一目散にその場から逃げ出した。

「30点……といったところだな。俺ならもっと綺麗にやる」

 シリル渾身の土下座に対し、は非情な評価を下すエルネスト。

「――さてと……こんな町からはさっさとおさらばしよう」

 しかし、当然そう簡単にはいかない。

「見つけたぞ! 勇者エルネストだ!」

 エルネストは、戦いの音を聞きつけてやって来た衛兵たちに再び見つかってしまったのである。

「クソッ! しつこい奴らだ!」

 眉間にしわを寄せながら、全速力で逃げ出すエルネスト。

「いい加減逃げるな! 罪が重くなるだけだぞ!」
「黙れッ!」

 しかし、角を曲がろうとしたその時、今度は何かと激突してしまった。

 エルネストとそれは、勢いよくしりもちをつく。

「ぐえっ!」
「次から次へと……! 今日は厄日か!? おい貴様! 何を考えている! ちゃんと前を見て歩け!」

 そこに居たのは、バニーガールの格好をした女だった。

「い、いてて……って、えええええ!?」

 女はエルネストの顔を一瞥するなり、大慌てでそっぽを向く。

「貴様は…………!」
「ひ、人違いじゃないかな☆」
「ルドガー…………!」
「めっちゃばれてるじゃん☆ 誤魔化して損した」

 よく見ると、その女はルドガーだった。

「テメェ! 逃げるんじゃねぇ!」
「借金返済は終わってねぇぞ!」
「死ぬまでカジノで働けェッ!」
「ド貧乳!」

 その背後からは、強面の男たちが追いかけてきている。

「貧乳は関係ないだろ! ――と、とにかく今はそれどころじゃないんだ勇者くん! ここは一時共闘といこうじゃないか!」

 どうやら、ルドガーも何者かに追われているらしい。

 エルネストは、その無様な姿をあざ笑いたくなったが、さすがにそんな場合ではないことを理解していた。

「――そうだな。俺も、今は貴様の力を借りたほうがベネフィット利益が最大化されると思っていたところだ」
「そう来なくっちゃ☆ ひゅーひゅー! さすが、腐っても勇者なだけあるね☆」
「口を慎めローコストバニーガール」
「ローコストって……一体どういう意味で言っているんだい?」
「貴様の貧相なサマをそのまま言い表しただけだが?」
「お前はいずれ●す☆」

 こうして、エルネストとルドガーの間に謎の共闘関係が結ばれたのだった。
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