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第69話 勇者エルネストの憂鬱 その4
しおりを挟むエルネストの側からは衛兵達が、そしてルドガーの側からは強面のごろつき達が、徐々に走り寄ってくる。
「……だが、共闘関係を結んだところでこちらは二人だけだ。全員を相手にしていたら日が暮れるぞ」
十以上はいる敵の数を冷静に数え直し、腹立たしげにつぶやくエルネスト。
「クソ、俺に無益な戦いをさせやがって……!」
その時、ルドガーはポンと手を叩いて言った。
「――――そうだ、私はたった今妙案を思いついたよ☆」
「それは本当か!?」
「ああ、私に任せたまえ☆」
そう言ってウインクした後、深く息を吸い込むルドガー。
「衛兵さあああああん! 暴漢達に襲われてるんですうううううう! 助けてくださいいいいいいいいいいいい!」
刹那、絶叫が路地裏に響き渡った。
「おいおい、何でこんなトコに衛兵がいやがるんだ!」
「テメェ、汚ねえぞ!」
「ふざけるな……借金踏み倒してんのはテメェだろっ……!」
強面の男達は文句を言いつつも、衛兵を前にして後ずさる。
「な、なんだって!? それはいけない!」
「おい貴様ら! それ以上彼女を追いかけ回すのは止めるんだ」
「さもなくば逮捕する!」
こうして、衛兵とごろつきは、ルドガーとエルネストを挟むようにして睨み合う形となった。
「……なるほどな」
確かに、この状況を作り出してしまえば後はどさくさに紛れて逃げ出すだけで済む。エルネストはほくそ笑んだ。
「でも……あの女性は一体どうしてエルネストなんかと一緒にいるんだ……?」
しかしその時、衛兵の一人が、ぽつりとそんな疑問を口にする。
「…………言われてみれば、確かに」
疑いの目がルドガーの方へ向いた。
「えっと……それはだね……その、なんというか……成り行きで……☆」
「まさか……エルネストの仲間か……? そういえばその顔……どこかで見たことがあるような……」
日頃の行いのせいか、衛兵に疑われてしまうルドガー。
「あ、あれぇ☆?」
思った通りに事が運ばず、助けを求めるようにエルネストの方を見た。
「動くな! この女の命が惜しければなッ!」
エルネストは、咄嗟にルドガーの首に腕を回し、喉元へ剣を突きつけ人質にした。
「えええええええええええええええええええッ!? なんでなんでなんで!?」
突然のことに驚き、暴れるルドガー。
「馬鹿か貴様! 適当に話を合わせろ!」
エルネストは、彼女に対し小声でそう言い聞かせた。
「いだだだだ! ほんどにぐびじまっでる! じまっでるっで! だずげでっ!」
しかし、本人はそれどころではないようだ。顔を真っ赤にし、必死の足をばたばたさせている。
「…………人質だったのか! 卑劣な奴め……!」
「そ、その女性を解放しろっ!」
しかし、ルドガー迫真の訴えによって、結果的に衛兵を信じ込ませることに成功したようだ。
「これ、俺たちはどうすればいいんだ?」
「…………さあ?」
置いてけぼりにされ、途方に暮れるごろつき達。
「やれ貴様ら。衛兵どもを血祭りにあげろ」
エルネストは、そんな彼らに向かってそう言い放った。
「はぁ? なんで俺たちがテメェの指図なんか「――――と、いうわけだ。この女を助けたければ、まずは俺の手下を片付けることだな!」
そして今度は衛兵に向かってそう言い残し、ルドガーを人質にしたままその場から立ち去る。
「貴様ら……エルネストの仲間だったのか……!」
「ふざけんな! 誰が仲間だって!?」
どうやら、上手く厄介者同士をなすりつけ合うことが出来たようだ。
「ククク……っ!」
あまりの愉快さに、笑みが溢れるエルネスト。
「ああ、マルク……私を……迎えに来てくれたんだね……ぐふっ」
それに対し、ルドガーは窒息して死にかけていた。勝手にマルクの幻覚を見て、静かに気絶する。
ともかく、こうして二人は危機を脱することができたのだった。
*
「へっくしゅん!」
「…………どうしたのマルク?」
ライムは、少し心配そうにマルクの顔を覗き込みながら問いかけた。
「わ、わかりません。けど……なんだか寒気が……」
「それはいけません! さあ、ワタクシの膝の上でお休みください! あるいはワタクシの胸の中に……いや、この際もう一度一緒に湯船へ――「全部お断りします……」
クラリスの言葉に対し、マルクは即答した。
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