無能はいらないとSランクパーティを追放された魔術師の少年、聖女、魔族、獣人のお姉さんたちにつきまとわれる

おさない

文字の大きさ
77 / 103

第75話 魔王現る

しおりを挟む

「待ちなさい! この魔力は……一体……?」
「とても禍々しい魔力を感じます!」

 エルネストを追いかけて、真っ先に外へ出てきたカーミラとクラリスは、その魔力にたじろぐ。

 明らかに、先程までとは様子が違っていた。

「――これは良い。以前の老いた体より、遥かに力に満ち溢れている」

 エルネストの身体を乗っ取り、不敵に笑う魔王。

「オマエ……エルネストじゃないな……!」

 遅れて出てきたリタが、そう言いながら魔王を威嚇する。

「これはこれはお嬢さん方。お初にお目にかかる。……私は魔王、以後お見知りおきを」

 新たな力を手にした魔王に、以前の老人の面影はない。

「私の半身――あなた方がライムと呼ぶスライムの少女を差し出しさえすれば、危害を加えるつもりはないが……どうするかね?」
「そんなこと、神に誓ってできるはずがないでしょう! 恥を知りなさい!」

 クラリスは、魔王を睨みつけながら叫んだ。

「大人しくワタクシに浄化されなさいっ!」
「……それは残念だ」

 魔王はやれやれといった風に肩をすくめる。

「――では、死んでいただこう」

 その目が怪しく光ると同時に、魔王の身体から莫大な魔力があふれ出す。

「……一つ、良いことを教えてあげよう。かつての勇者ですら、背後から不意を打たなければこの私に勝つことは無かった。正面切って戦いを挑んだ時点で、キミたちの敗北は決まっていたのだよ」

 あまりの魔力に、カーミラ達はたまらず後ずさった。

「こ、これは……流石にまずいわね……」

 ――その時。

星降る指先シュテルネンリヒトナーゲル!」

 魔王の背中に、ルドガーの放った魔法が直撃する。

「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああっ!」

 ルドガーの攻撃を無防備なままくらい、背中を抑えてうずくまる魔王。

「い、今だっ!」

 その隙をついて、リタが魔王に飛び掛かかり攻撃を始めた。
 
「ちょっと、まっ、ごふっぅ!」

 カーミラとクラリスもその後に続き、魔王へ殴る蹴るの暴行を加える。

「このからだっ! 思ったより弱いっ! はじめからっぼっこぼこだったっ!」

 うずくまって痛みに耐えながら、後悔の念を口にする魔王。

「なにこれ。もしかして私……攻撃する方間違えた……☆?」

 その様子を遠巻きに眺めていたルドガーは、思わずそう呟いた。

「ぐあああああああああああああああああああああ!」

 その時、クラリスがあらかじめエルネストの体にかけておいた聖なる魔法が発動し、魔王をさらに苦しめる。

「ぐふっ……!」

 かくして、魔王は縛り上げられて地面に転がされたのだった。

「……誰かと思えばルドガーじゃない。ちょうど良いタイミングだったわ」
「おやおや? どうしてこんなところに我が旧友のカーミラが☆?」

 言いながら、ルドガーはカーミラの元へ駆け寄っていく。

「わ、わけあってマルクちゃんと一緒に行動してるのよ」
「君がマルクと!?…………ま、まさかとは思うが、私の大切な弟子に手を出すようなことはしていないだろうね?」

 目を光らせながら問いかけるルドガー。

 カーミラは何も言わずに顔をそむけた。

「え…………冗談はやめてくれたまえよ☆」
「べべべべ、別に、あなたが思うようなことはしていないわ」
「…………ほーん?」

 ルドガーは、訝し気にカーミラのことを見つめる。

「あれ、ルドガー。借金は返せたの?」
「……リタ、君までいたのか。……まったく、マルクは修羅場だね☆」
「うん? どういう意味?」
「何でもない。こっちの話だよ☆」

 マルクの周囲に、自分に匹敵するヤバさの人材が集まっていることを知ったルドガーは、心の中で彼に同情した。

「みなさん……カサンドラさんは怯えてるし、外からは大きな音がしましたけど……一体何があったんですか……?」
「ライムちゃんも……記憶がとんでる……」
 
 その時、意識を取り戻したマルクが、ライムと一緒に外へ出てくる。

「今だっ! その体をよこすのだ我が半身よッ!」

 刹那、地面に縛られて転がされていた魔王がそのまま起き上がり、ライムへ向かって怪しげな魔法を放つのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。

夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。 もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。 純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく! 最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!

追放された荷物持ち、【分解】と【再構築】で万物創造師になる~今更戻ってこいと言われてももう遅い~

黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティーから「足手まとい」と捨てられた荷物持ちのベルク。しかし、彼が持つ外れスキル【分解】と【再構築】は、万物を意のままに創り変える「神の御業」だった! 覚醒した彼は、虐げられていた聖女ルナを救い、辺境で悠々自適なスローライフを開始する。壊れた伝説の剣を直し、ゴミから最強装備を量産し、やがて彼は世界を救う英雄へ。 一方、彼を捨てた勇者たちは没落の一途を辿り……。 最強の職人が送る、痛快な大逆転&ざまぁファンタジー!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...