無能はいらないとSランクパーティを追放された魔術師の少年、聖女、魔族、獣人のお姉さんたちにつきまとわれる

おさない

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第76話 魔王復活?

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「いやああああぁぁぁっ!」

 魔王が放った魔法を受け、苦しみだすライム。頭を抱えたまま、その場にうずくまってしまった。

「だ、大丈夫ですか!?」
「だめ……! ライムちゃんから……はなれてっ……!」
「でも…………!」

 そう言われて、マルクは戸惑う。

「ちょっと! 今何したの!?」

 リタはエルネストの頭を鷲掴みにしながらそう問いかけた。

 しかし、返事は返ってこない。エルネストはすでに抜け殻となっていたのだ。

「クックックッ……………!」

 刹那、先程まで苦しんでいたライムが不敵に笑い始める。

「ライムがそんな笑い方をするなんて……! 一体どうしちゃったんですか? ま、まさか、道端に落ちてる物とか拾い食いしてませんよね!?」
「そんなことしない。ライムちゃんをバカにしないで! …………くそッ、貴様は出て来るなッ!」

 一瞬出かけたライムの自我を、魔王は必死に抑え込む。かなり余裕がなさそうだ。

「フハハハハ……! ここに……私は復活した!」
「――離れてマルクちゃん! そいつはライムじゃないわ! 魔王が乗り移って体を操っているの!」

 カーミラは、叫んでマルクにそう知らせる。

「そ、そんな……ライムが……!?」
「乗り移る? 人聞きが悪い。これはもともと私の体だ。……まさか、少女の姿になっているとは思わなかったがな」

 言いながら、ゆっくりとマルクへ近づいてくる魔王。

「どうだ? 手を出せまい? この少女はキミの大切な……」
「マナドレインッ!」
「ぎゃああああああああああああああああ!?」

 しかしマルクは、ライムのお腹に手を当てて容赦なく魔法を発動した。

「き、貴様、何をする……!」
「ライムの体から……入り込んだ魔力だけを吸い出しますっ!」
「や、やめろ! そんなことをすれば……どうなるか分かっているのかッ!」
「知りません! くらえええええええぇぇっ!」
「ぐわああああああああああああッ!」

 マルクが全力で放ったマナドレインを喰らい続けた魔王は、やがて沈黙する。

 こうして、マルクとライムはお互いに向かい合ったまま動かなくなった。

「い、一体……どうなったの……? マルクちゃんは無事かしら……?」
「おーい!大丈夫かいマルク☆ 愛しの師匠が来たよ☆」
「マルクさん、お体の方に問題はありませんか!? ライムさんはどうなったのですか!?」

 カーミラ達はマルクの側に駆け寄り、一斉に問いかける。

「クックックッ……………!」
「マルクさん……? ま、まさか…………!」
「フハハハハ……! 自分が乗っ取られるとは愚かな奴よ」

 しかし、返事をしたのはマルクではなく魔王だった。今度はマルクが体を乗っ取られてしまったのだ。

「そ、そんな……ライムちゃんのために……!」
「安心しろ。この者達を血祭りにあげた後に、再び貴様の体へと戻ってやる」

 魔王は不気味に笑いながらそう宣言した後、皆に向かって言い放つ。

「どうだ? 貴様らに何の罪もない少年を攻撃することができるか? ……不可能だろうな。ハーッハッハッ!」
「ま、マナドレインっ!」

 その時、ライムがマルクの体にまとわりついて叫んだ。

「ぐわああああああああああああああっ!? な、なぜだぁッ!?」
「ライムちゃん、二回もマルクに吸われちゃったから覚えたの……! あいのけっしょうっ!」
「ふ、ふざけたことをぬかすなああああああああああッ!」

 どうやら、魔王が元々有していた類い稀なる魔法学習能力が裏目に出たらしい。

 かくして魔王は再び、マナドレインを習得したライムの体へと戻っていくのだった。

 しかし、意識を取り戻したマルクは、当然それを良しとしない。

「……だ、だめですよライム! マナドレインッ!」
「ライムちゃんごと倒してくれればいいもん! マナドレインっ!」
「そんなことできません! マナドレインッ!」
「マルクのわからずやっ! マナドレインっ!」

「魔王で遊ぶなああああああああああああああああッ!」

 魔法のかけ合いになり、二人の体の間を何往復もさせられる魔王。戦いは泥沼化しつつあった。

「なんか……きもちよくなってきたかもぉ……まな……どれいんっ!」
「へんなこと……言わないでください……マナドレイン……あっ!」
「それいじょう……(魔力を)吸っちゃだめぇ……あんっ!」
「ライムの方こそ……(魔力を)吸わないでっ……んんっ!」

 次第に、魔法のかけ合いをしている二人の様子が危なくなってくる。少女とメイド服姿の少年が、嬌声を発しながら抱きしめ合っているという絵面もかなり危ない。

「まずいね……急な魔力の出し入れが継続的に行われると、魔力酔い状態になるんだ☆ あのままだと、マルクもあの子も魔力中毒になっちゃうかも☆」
「そうなると……どうなるの?」

 首を傾げるリタ。

「二人とも魔法がキマりすぎて天国に逝っちゃう☆」
「めちゃくちゃまずいじゃんっ!」
「だからそう言っているだろう☆」

 どうやら、あまり時間は残されていないようだ。

「そ、それじゃあ……ど、どうしたら良いのかしら……?」
「ワタクシが魔王を浄化する儀式の準備をいたします! 皆様はワタクシにご協力を! 申し訳ありませんが、マルクさんとライムさんはもう少しだけ持ちこたえてくださいっ! もうちょっとだけ……ハァハァ……ぐへへ……!」
「もちろん協力するけれど……あなた、あれ見て興奮してない……?」

 カーミラは、引き気味に呟くのだった。
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