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第78話 パーティ解散の危機
しおりを挟む「だ、大丈夫ですかマルクさん、ライムさん!」
魔王を地獄へと導いたクラリスは、大急ぎで二人の元へ駆け寄る。
「ライムちゃんは大丈夫。マルクは……ライムちゃんがほとんど魔力吸っちゃったからしばらく動けないかも」
「吸われちゃいました…………」
目をぐるぐると回しながら、そう答えるマルク。
「動けるようになるまで、ライムちゃんが抱きしめてあげるから安心してね」
「そんなことしなくても大丈夫です……」
「……小さくなったマルク……かわいい」
「僕が小さくなったんじゃなくて、ライムが大きくなったんです……っ!」
「丸呑みにしたい……」
「怖いこと言わないでくださいっ!」
マルクはライムから逃れようと胸の中で弱々しく暴れたが、全て押さえ込まれた。
「……それにしても、ライムさんはずっとこのままなのでしょうか……?」
どこか名残惜しそうな様子で、そんなことを口にするクラリス。
「おそらく、我が弟子の膨大な魔力を吸い上げたことによる、一時的な成長だろう。……そのうち元に戻ると思うよ☆」
「な、なるほど。可愛らしいライムさんに戻ってくれるのですね! それを聞いて安心しました!」
「君……聖女のくせにいい趣味してるね…………☆」
「お褒めに預かり光栄です!」
「どうしようもない変態だって言ってるんだよ」
ルドガーは、微妙にクラリスから距離をとりながら言った。
「あなたもそう思うでしょう? まったく、クラリスときたら……」
「君もだよ。反省しなさい☆」
「……………………ああそうだ、エルネストがもう二度と悪さ出来ないように、もっと厳重に縛っておかないといけないわね。それじゃあ、アタシはこれで」
「こら、逃げるんじゃない☆」
そそくさとルドガーの近くから離れていくカーミラ。それからすぐ、エルネストの断末魔が響いた。
「うぅ……もう大丈夫なのぉ……?」
その時、家の中から様子を伺っていたカサンドラが、恐る恐る顔を覗かせた。
「うん! 魔王はボク達がやっつけたよ!」とリタが答える。
かくして、脅威は去ったのだった。
*
カーミラとルドガーは、エルネストを衛兵に突き出すために先に山を降りたので、残りの皆がカサンドラの家に再び集まっている。
「はいこれ、女神の秘薬ね」
「ありがとうございます……!」
カサンドラから、ついに御目当ての薬を受け取ったマルクは、感動で目を潤ませた。
「代金は、ワタクシが隣の部屋に出しておきました!」
「私、この薬の相場とかよくわからないから、助かるよぉ……!」
とカサンドラ。この後、隣の部屋を確認した瞬間、溢れ出した金貨に埋もれることになるのだが、それはまた別のお話。
「もしかしてマルク、そこまで無理してお金稼ぐことなかったんじゃないかな……? この人相手ならいくらでも騙せそうだし」
「マルクさんは清らかな心の持ち主です。きっと、そんなことは出来てもしなかったでしょう」
「…………ま、それもそうだね!」
リタは納得したように言った。
「後はお姉ちゃんにこの薬を飲んでもらうだけです!」
薬を大事そうに懐へしまい、大喜びするマルク。
「ライムちゃん……元に戻っちゃった……」
それに対して、ライムはなくなってしまった自分の胸のあたりをぺたぺた触り、肩を落とす。
「まあまあ、そのうちあれくらい成長できるって!」
リタは、ライムの頭をぽんぽんしながら、どこか勝ち誇った様子で言った。
「…………むぅ!」
「きゃあっ!?」
怒ったライムは、リタの胸を鷲掴みにする。
「それ、ライムちゃんにちょうだい」
「む、無理だって! ちょっと、くすぐったいっ、あっ!」
それからしばらくの間、リタはライムが満足するまで弄ばれていた。
「それじゃあ、ぼくは自分の国へ帰ります。クラリスさんや……リタお姉ちゃんとはお別れですね。元々、僕に付いてくる理由なんてありませんし」
「へっ!?」
「えっ!?」
間の抜けた声を発するクラリスとリタ。
「それなのに……わざわざこんな場所まで来てくれて、本当にありがとうございました! クラリスさんが持っている金貨は、カーミラさんと三人で分けてください。ぼくからの気持ちです」
「ライムちゃんも、それがいいと思う」
「「ええええええええええええええええええええええええええっ!?」
これ以上、マルクに同行する理由がなくなってしまったクラリスとリタ。はたしてどうする。
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