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第86話 赤ちゃんのつくりかた
しおりを挟む「ら、ライムさん!?一体誰からその話を……ハッ!」
「濡れ衣よ」
クラリスに睨みつけられたカーミラは、済ました顔で言い放つ。
「まったく、みんな慌てすぎなのよ。普通に話せばいいじゃない。……いいかしらマルクちゃん。赤ちゃんはね、おちん――」
「聖なる雨」
「ちんんんんんんんんんんンンッ!」
聖なる魔法を受け、卑猥な叫び声を上げてのたうちまわるカーミラ。
「――まったく、油断も隙もない!」
「い、いきなり魔法を使わないでちょうだいよ」
「教育上よろしくないことをマルクさんに吹き込もうとしないでください!」
「……はぁ。というわけだからマルクちゃん、アタシの口から話すことはできないわ」
きつく叱られたカーミラは、くたびれた様子で言った。
「……………?」
一部始終を見ていたマルクは、思わず首をかしげる。なぜ教えてくれないのか、よく分からなかった。
「えっと――ライムはどうやって赤ちゃんをつくるか知ってるんですよね?」
「うん。生まれた時から知ってる!」
「それはすごいですね! よかったら、ぼくに赤ちゃんがどうやってできるのか教えてくれませんか?」
「いいよ」
「本当ですか? ありがとうございます!」
笑顔でお礼をするマルク。
「あわわ……ら、ライムさん……その、どうか健全な表現を……!」
さすがのクラリスも、ライムに手出しをすることはできない。皆が固唾を飲んで見守る中、ライムは続けた。
「――あのね、たくさん食べて、大きくなって、魔法でぶんれつするの!」
「なるほど。じゃあぼくも、大きくなったら赤ちゃんをつくるために魔法で分裂するんですか……?」
「そうだよ。で、ぶんれつしたマルクとぶんれつしたライムちゃんを混ぜ合わせれば、赤ちゃんの完成!」
「混ぜ合わせる……………………」
マルクは恐ろしい想像をして、絶句した。
「ら、ライムさん。たぶんそういう増え方をするのはスライムだけだと思いますよ……?」
「――――言われてみればそうかも!」
しびれを切らしたクラリスに指摘され、はっとした様子で呟くライム。
「じゃあ、さっきの鳥さんとか、人間は違うの?」
「ええ、まあ……」
「じゃあどうやってつくるの?」
「そ、それは…………そのですね……」
ライムに詰め寄られたクラリスは、恥ずかしさのあまり俯いてもじもじする。
「交尾だよ☆」
その時、いつの間にか復活していたルドガーが言った。
「こうび? それって何ですか師匠」
「交尾っていうのはだね、おちん――」
刹那、リタの拳から放たれた一撃が、ルドガーの体に直撃する。
「ごほぉっ!?」
「こ、この変態っ! ボクのマルクになんてこと吹き込もうとしてるのッ!?」
「その反応……どうやら君は知っているようだね……リタ……。まあ、その歳なら普通か……」
「う、うるさいっ!」
「ぐふっ!」
リタは赤面しながら、ルドガーにとどめをさした。
「み、みんなどうしちゃったんですか? 今日はなんだかすごく乱暴的です……!」
カーミラのみならず、ルドガーまでもが沈められる様を見たマルクは、おろおろしながら問いかける。
「み、皆様、今日は朝が早かったのでお疲れなのでしょう。さあ、マルク様も一度お部屋へお戻りくださいまし!わたくしが案内して差し上げますわ!」
「……?でも、まだ赤ちゃんのつくりかた――「お忘れなさい。マルク様が知るには早すぎますわ!」
「わ、わかりました……」
すごい剣幕でデネボラに言われたマルクは、渋々引き下がるのだった。
かくして、マルクはデネボラに背中を押されて、半ば強引に寝泊まりする客室まで退避させられたのである。
✳︎
部屋へ引き下がったマルクは、荷物の整理を済ませ、魔導書を読みふけっていた。
「ほらほら、捕まえてごらーん!」
「リタ、早すぎ……ライムちゃん、本気だす!」
扉の向こう側の廊下では、リタが退屈を持て余したライムの相手をして遊んでいるらしく、少し騒がしい。
それからしばらくして、外の廊下もすっかり静かになった時、突然誰かがマルクの部屋の戸を叩いた。
「はーい」
マルクは返事をして扉を開ける。
「あなたは……」
「さっきぶりね」
そこに立っていたのは、フェナだった。
「邪魔するわよ」
フェナはそう言って、ずかずかと部屋の中に入り込んでくる。
そして、ベッドに腰かけて言った。
「話があるの。あんたもここに座りなさい」
言いながら、自分の隣をぽんぽんと叩くフェナ。
「は、はい……」
逆らったらどうなるかわからなかったので、マルクは仕方なくそれに従うのだった。
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