無能はいらないとSランクパーティを追放された魔術師の少年、聖女、魔族、獣人のお姉さんたちにつきまとわれる

おさない

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第85話 出航

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 マルクとライムは、船に乗り込んで早々に、甲板から身を乗り出して海を眺めていた。

「ほー…………!」
「すごく広くて綺麗ですね!」
「うん……!」
「ぼく、感動しました!」
「これがうみ……青くてきれい。ライムちゃん、マルクと一緒に見れて嬉しい……!」

 ライムは顔を赤らめながら、小さな声で呟く。マルクと気持ちを共有できたことが、何より嬉しかったのだ。

「でもこんなに広いと、この人数じゃ少し寂しいかもしれませんね。隠れんぼとかしたら楽しそうですけど……」
「うん?」

 微妙に話が噛み合っていないことに気付き、首を傾げるライム。

「あれ、どうかしたんですか? そんな顔して」
「マルク、なんの話してたの……?」
「何って……この船が広くて綺麗ですねって話をライムとしてたんじゃ……?」
「で、でも感動したって…………」
「はい、こんなに大きくてかっこいい船に乗れて、すごく感動しました!」
「そんな……!」

 全て勘違いであったことを悟ったライムは、膝から崩れ落ちた。

「――それと、海もすごく綺麗ですね。こうしてライムとただぼーっと海を眺めてると、嫌なことも忘れてなんだか幸せな気持ちになります!」
「ほ、ほんとに……?」
「はい!ライムっぽく言うなら、溶けちゃいそうって感じです!」
「まるく……!」

 多少のすれ違いはあったものの、どうやら気持ちは同じだったらしい。

「うぅ……うえええええんっ!」
「どうしてそこで泣くんですか!?」
「マルクぅっ!」
「わぁっ!?」

 こうして、マルクはわけも分からないまま、泣きじゃくるライムに飛びつかれて押し倒されたのだった。

「――とても、微笑ましいですわ……」
「おや、あなたもそう思いますか? ワタクシも同じことを考えていたところです。ぐへへ……!」
「あらあら、貴女とは気が合いそうですわね。おほほ……!」

 クラリスとデネボラはそんなマルク達のことを見て意気投合し、不気味に笑い合う。

「デネボラお嬢様、準備が整いました」

 その時、アンドレアがデネボラに耳打ちした。

「ご苦労。これから長旅になりますわ。フェナと一緒に、お部屋で休んでいなさい」
「はい、ありがとうございます」
「――それでは、出発ですわ!」

 かくして、船はゆっくりと動き始め、町の港を発ったのだった。



「すごい……誰も操縦してないのに、本当に動いてます!」

 船が出発してすぐに操舵室を確認したマルクは、目を輝かせながら言う。

「気に入ってくださったようで何よりですわ。――海を越えた向こうの港に着くまでには、だいたい二週間ほどかかかりますの。それまで、存分に航海をお楽しみ下さいまし」
「はい! こんな素敵な船に乗せてくれて、本当にありがとうございます!」
「おほほ…………!」

 マルクに感謝されたデネボラは、機嫌が良さそうに笑いながら続けた。

「この船には全員分の客室がございますのよ。皆様もどうぞごゆっくり、お寛ぎくださいまし」
「一人だけ、それどころじゃなさそうなのがいるけどね……」
「オロロロロロロロッ」

 リタは、船酔いして海に色々とぶちまけているルドガーに冷ややかな視線を送る。

「まじ無理……死ぬ……」
「ちょっと、マルクちゃんの前なのよ? 師匠としての威厳はどうしたの? しっかりしなさいよ!」
「後は頼んだよ……カーミラ……おえぇっ」
「全部出してから喋りなさい」

 カーミラは、汚いものを触るような手つきで、ルドガーの背中をさすった。

「師匠…………」
「あ、見てくださいマルクさん、ライムさん!海鳥がつがいで飛んでいます!」

 ルドガーの醜態をこれ以上見せないようにする為に、そう言ってマルク達の意識をそらすクラリス。

「本当だ……! 可愛いです!」
「おそらく、人のいない島で安全に赤ちゃんを作るために海を渡っているのでしょう。とても微笑ましいですわね」
「なるほど…………」

 マルクは、感心した様子で呟いてから続けた。

「――――そういえば、赤ちゃんってどうやってできるんですか?」
「ぶーーッ!?あ、赤ちゃんですか!?」

 勢いよく吹き出すクラリス。

 それは少年の口から発された、純粋かつ素朴な疑問。

 しかし、その一言によって周囲の空気が一変する。

「ライムちゃん知ってるよ!」

 そんな張り詰めた空気の中、ライムから更なる爆弾発言が飛び出すのだった。

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