アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ

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35.調査依頼

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「おめでとう、ヨシタツ。お前さんは今からAランクになる」

 ギルドマスターはにかあと白い歯を見せて、パチパチと手を叩く。
 丸太のような腕と刀傷のある顔で笑顔だと、すごまれているようにも見えた。
 日本にいた頃ならともかく、今となっては彼の雰囲気から威圧するようなものが一切ないと分かる。

「討伐依頼をこなしたからですか?」
「おう。そうだぜ。パーティランクもAにアップだ。ベルヴァもAからSランクへ上がる」
「おお。ベルヴァさんも!」
「ギルドカードを見てみろ。もう変わってるはずだぜ」

 ほうほう。
 ではさっそく。ごそごそとポケットからギルドカードを出してみる。

《冒険者ランク:A
 レベル:9
 名前:叶良辰
 職業:無職》
 
 確かにランクがAになっているぞ。レベルはもちろん変化なし。これ以上レベルアップしないからな。
 無職から他の職に就くことってできるのだろうか……。レベルはともかく、無職って表示はなんかこう、座りが悪い。

「ヨシタツ様。私も確かに変わっております」

 ベルヴァが俺に見えるようにカードを寄せて来る。
 
《冒険者ランク:S
 レベル:43
 名前:ベルヴァ・ランドルフィン
 職業:竜の巫女》 
 
「おお。レベルも結構上がってるんじゃないか?」
「はい。私は横で見ていただけなんですが……」
「一緒に冒険したんだから、上がって当然だって」
「ヨシタツ様はそのままです」
「それは……」

 ギルドマスターを横目でチラリと見やり、口をつぐむ。
 この調子だとベルヴァもそのうち自分で気が付くと思う。ギルドカードの限界値に。
 一方でギルドマスターはくすりと笑い、両腕を組む。似合わな過ぎてこっちが笑いそうになったよ。
 
「あと、査定だがざっと見積もったところ40万ゴルダくらいだな」
「え!」
「少なすぎるってか?」
「いや、逆だ……あ」
「ほんと、お前さんは冒険者のことを知らないんだな。あと、お前さん、行商人には向いてねえんじゃねえか」
「いいんだ……俺は俺なりに細々と行商をしていくんだ……」
「そう落ち込むなって! 今、金を準備している」

 このおっさんに駆け引きをするのは止めておこう。勝てる気がしない。
 慎重さは時間かけ石橋を叩き、それでも叩く、それでも安心しない入念さ。
 レベルカンストは物理的な強さ。
 一瞬の切れ味が必要な駆け引きだと百戦錬磨のギルドマスターの前ではどちらも役に立たない。
 こればっかりは生まれながらの資質か経験を積むのどちらかが必要だ。どちらも持っていない俺ではなあ……。
 
 ん。今日は何だか人が多いような気がする。
 いかにもな雰囲気を持った冒険者たちがこちらに注目しているのは気のせいではなさそうだ。
 俺が注目を浴びることはないとして、ベルヴァでもなさそう。
 となると、ギルドマスターか?

「時間をかけすぎちまったか」

 出し抜けに彼はそんなことをのたまう。
 何かの集会でもあるのだろうか? 
 この中の誰もがアリアドネや駄竜どころか、ヴィラレントにも及ばない。
 ヴィラレントは強者の雰囲気って奴を持っていたけど、ここにいる人たちは装備などから一流の冒険者に見えるけどそれだけだった。
 なので、「いかにも」と表現したのだ。
 
 といっても俺は駄竜とは違う。奴は俺の足もとで寝そべり、くああと欠伸までしている。
 緊張感が無さ過ぎだろと思うけど、ここには彼の求める獲物がいないから仕方ない。この辺、動物的なんだよな、こいつ。
 紳士的な俺を少しは見習って欲しい。
 
「まあ、そんなわけで、もう少しだけ待ってくれ。お前さんらにも聞いて欲しい話がある。そのままここに座っててくれよな」
「分かった」

 「じゃあな」と目配せした彼はスタスタとギルドの中央辺りまで歩き、そこでパンパンと手を叩く。
 注目ーってやつかな?
 彼の合図に喋り声がピタッと止み、冒険者たちの視線が彼に集まる。
 
「集まってもらって悪いな。今回集まってもらったのはAランク以上のパーティだ」

 そこで言葉を切った彼はゆっくりと周囲を見渡す。
 演説にも慣れているらしく貫禄があるね。この人。
 
「今回は王国からの直接依頼だ。ドロテアに王国から直接依頼とは珍しい。伯爵からじゃあないんだぜ。伯爵も連名だがね」

 んー。権力者からの依頼か。余り関わりたくないなあ。
 話からさっするにドロテアの街は伯爵の治める領土で、王国の一部ってとこか。

「俺もちぃと釈然としねえんだが、明確な討伐対象が明らかになっているわけじゃない。だが、ドロテアも他人事じゃなくなるかもしれんから集まってもらった」

 前置きが長い。ギルドマスターは何が言いたいのだろう。
 気の短そうな女戦士は机をトントンと叩き始めている。
 
「まあ、焦るな。調査依頼だ。謎の病が流行っているんだってよ。原因はモンスターじゃないかと王国が特定している。だけど、どんなモンスターなのかまだ当たりがついてねえんだってよ。王都とバリアスの街で被害が深刻なのだそうだ。病に犯されたものは三日三晩の間、生死の境を彷徨い、生きて戻れる者は3割にもみたねえらしい」

 どよめきが起こる。
 王都とバリアスがドロテアからどれほどの距離にあるか分からないけど、ドロテアにもその病とやらがやってこないとは言い切れないな。
 むしろ、やって来る可能性の方が高い。
 
「報酬は原因を特定するだけで入る。原因を特定しかつ討伐したら秘宝も与えると大盤振る舞いだ。受注するにはランクA以上のパーティとする。受けたい奴は受けるといい。俺としては病なんて気が気じゃねえから、出来る限り多くのパーティに受けてもらいたいがね」

 はあとため息を吐き、ギルドマスターが大袈裟に肩を竦める。
 受けたい奴とか言うけど、ここに集まったパーティはたったの4組。俺たちを入れても5組だ。

「受けよう」

 白銀の鎧を纏った金髪の青年が真っ先に手を上げる。
 続いて、この前俺たちに絡んできた女戦士も受注するようだな。
 俺たちはどうするか……。
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