無双将軍の参謀をやりながら異世界ローマも作ってます

うみ

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39.どこかで聞いた名前

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 村長との会話しながら昼ご飯を食べ終わり、アスファルトの現場を見学しに行こうと思った最中、ローマを訪ねてダークエルフがやって来たと俺に言付があった。
 意外に早く来てくれたなと思い、俺はダークエルフに会うために井戸の傍のベンチで待つことにする。現時点で話合いをするのはこの井戸と丸太の腰かけくらいしかないんだ。

 やって来たダークエルフは二人でどちらも二十台前半くらいに見える女だった......できればいらぬいざこざが起こらないように、男にして欲しかった。エリスがまた騒いだら面倒だなあ。
 二人は同じような恰好をしている。革の肩当に綿らしき赤マント。白の貫頭衣に革紐を腰に巻き付けている。背恰好も似ており、エリスと似たようなプロポーションをしている。

 俺から見て右の娘は長い緑の髪で、左右に赤い色の髪留めをさしていて、頭には白い鉢巻をしめている。もう一人は肩くらいまでの青い髪に同じように白い鉢巻をしめていた。
 顔はエルフらしく繊細で整っている美女だけど、俺は元気いっぱいな雰囲気のティンのほうが好みだなあ。いや、俺の好みなんてどうでもいいけど。

「はじめてお目にかかる、私はパオラという。よろしくお願いする」

 緑の髪の娘の名前はパオラ。どこか優雅な仕草で俺に礼をする。

「はじめまして! あたしはカチュア。よろしくね」

 麗しい見た目とは裏腹にカチュアの話し方は下町風? だった。俺にはこっちのほうが望ましいな。
 彼女はパオラの真似をして慣れない仕草で礼を行ったが、どこか失敗している。まあ、礼儀とか俺は気にしないから問題ないぜ。

 しかし......この名前と髪色......どこかで聞いたことがある。何だったかなあ。

「はじめまして。俺はプロコピウス。ピウスとでも呼んでくれ」

「了解した。ピウス殿」「はあい。ピウスさん」

 二人の特徴が出てよいな。分かりやすい。

「まだ少し仕事を残しているんだ。悪いんだけど、簡易住宅かローマを散策でもして待っていてくれないか?」

「了解」「はあい」

 待ってもらうのは悪いが、アスファルトとモルタルの確認はしておかないといけない。ついて来てもらってもよかったんだけど、ダークエルフは排他的な種族と聞く。
 別の意味でマッスルブやライチらと彼女達に説明をするのが、今は煩わしいんだよね。すぐにでもお互い紹介すべきだけど、何をやってもらうかを決めてからでもいいだろう。
 ティモタも放置してるから、彼にも悪いことをしているなあ。
 同時作業をすると俺が対応できなくなりそうだから、今しばらく彼らには我慢してもらうか......


◇◇◇◇◇


 マッスルブと犬耳族はもう砂利を埋めてアスファルトを流し込むところまで作業が進んでいた。相変わらずものすごいスピードで驚かされる。
 ライチはアスファルトと砂を混ぜた容器をかき混ぜながら、次々に彼らに容器を渡していく。

「ライチさん、順調かな?」

「はい。ピウスさんと試したのと同じ要領でアスファルトと砂をかき混ぜてます。今日中には作業が終わりそうなので、明日が楽しみですね」

「スピードがはやくて驚いてばかりだよ。彼らの作業は本当にはやいな」

「そうですね。小鬼ではこうはいきません! 最初は正直見くびっていましたが、一緒に仕事をして考えが変わりましたよ!」

「彼らはとても働き者で、オークは力が強いし、犬耳族はスタミナが豊富だから、彼らに向いた仕事を任せればものすごい成果があがりましたね」

 今まで少し下に見られていたオークと犬耳族への他種族の認識も変わってきているようで何よりだ。俺は大きな声でマッスルブと犬耳族に声をかける。

「マッスルブ、犬耳族のみんな。ありがとう! 俺は君たちのスピードに感動しているよ!」

「またまた、ピウスさんはすぐ褒めるブー!」

 マッスルブはまんざらでもない顔で俺に応じた。犬耳族とライチもマッスルブの様子を微笑ましそうにみている。
 うん、とてもいい雰囲気で仕事が出来ているようで、このチームはこれからもいい仕事をしそうだ。舗装工事は先が長いからなあ。このままの雰囲気を保ちたい。
 とても偉そうなことを考えていたけど、素直に俺は彼らを尊敬しているんだ。その気持ちは確かだよ。俺にはここまでの仕事はこなせないから。
 俺は俺で出来ることを頑張るから、みんなも頼むぜ。

「ライチさん、モルタルがどうなってるか見に行こう」

「分かりました。楽しみですね」

 俺はマッスルブ達に一声かけて、この場を後にした。


 朝モルタルを塗りたくった木片に触れてみると、粘土をいれたほうは既に完全に固まっているようで、粘土無しのほうはもう少し時間がかかりそうだ。
 粘土入りのほうを手や金づちで叩いてみたが、問題なさそうだ。

「固まってますね。粘土入りのほうが硬化がはやいようです」

 ライチはモルタルで固まった木片を手に取り、様子を確かめながら俺にそう告げる。

「みたいだな。粘土入りで作ってみようか」

「あ、待ってください。まだ試さないといけないことがあります。アスファルトでも試したんですよ」

 見るとライチは手に持ったモルタル入り木片を地面に置き、コップから水をかけている。
 ああ、俺はすっかり忘れていたよ! 水をかけて大丈夫かみないと意味ないよな。

「なるほど。問題無いかじっくり見てみてくれ。問題なさそうなら村長に報告して欲しい」

「分かりました。見たところ問題無さそうですよ! いよいよ家が建築できますね!」

 満面の笑顔でライチは俺に自らの見解を語ってくれた。

「素晴らしい! やっと建築が進むな。レンガもリザードマン達の協力で続々と作られているようだよ」

「そうですね。まずは村長とベリサリウスさん、そしてピウスさんの家を建てましょう」

「お、俺は後ででいいよ」

「いやいや、ピウスさんあってこそですよ!」

 ライチの中で俺の評価は高いらしい......モルタルとアスファルトを一緒に試した仲だ。よく思われてるなら嬉しいけどやっぱ照れるよな。日本人と違って彼らはストレートに自分の思いを告げて来るから、元日本人の俺には慣れないんだよなあ。

「おや、ピウスさん。あの方はピウスさんのお客さんでは?」

 ライチが指を指す方向を見ると、エルフのティモタが遠巻きに俺達の様子を伺っている。モルタルに興味が出たのか?

「ティモター!」

 俺はティモタに手を振り、彼を呼びかけるとすぐに彼はこちらにやって来た。

「ピウスさん、家のお話はもういいんですか?」

「ああ。ライチさんのお陰で実験が非常にスムーズに進んだんだ」

「いやいや。何を言ってるんですか。ピウスさん」

 ライチは口を挟んで来るが、まんざらでもない様子だ。

「私は人間の家には詳しくありませんが、石や木を使った家が多かった印象です」

「ローマではレンガの家になる予定だよ」

「それはどんな家になるか楽しみですね」

「少し座って話をしようか。ティモタ。ちょうど今日の仕事は終わったところだ」

「分かりました」

 俺はライチに手を振って別れると、井戸の傍にある丸太までティモタと一緒に移動する。
 ティモタは俺が太陽と月の加護を持っているから、ローマに来たいと言ってくれたがどんな思いがあったんだろう。せっかく二人きりで話す機会が出来たから聞いてみようと思う。
 ついでにティモタに何をやってもらうかも決めたいな。
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