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5章
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しおりを挟む警戒区域に立ち入って俺はすぐに探知魔法を発動し、仲間や敵の位置や数、行動を探る。
敵はまだ俺たちの存在に気付いていないようだ。
1番遠回りしてしてきた俺たちは2番目につき、最後の1組を待つ。
何か問題でも起きたのだろうか?
「お疲れ様です。
中に変わった様子はありません。
それより副団長…彼は…?」
「ぁあ、彼は今回の協力者、フォード君だ。」
「どうも。
っ⁉︎
おい、何でここに子供がいるんだ?」
軽く会釈し、顔を上げるとここに居るはずのない人物を目にして驚き、副団長の服の裾を引っ張り、極力声量を抑え声を荒げないように心がけながら副団長を睨み言う。
「ふふ、君にはまだ言ってなかったね。
この子は私の息子でね、ちょっと特別な力を持っているからたまに私たちの仕事に参加してもらってるんだ。」
そんな俺の様子に動じる様子もなく淡々と説明する副団長さん。
さすが普段ツヴァイと仕事しているだけあってそんな些細なことでは動じないか。
「子供の来る場所じゃないだろ。」
「君が言うのかい?」
俺の言葉に副団長の目の奥がキラリと光る。
ぁ、この人俺の正体知ってるんだ。
そうか、だからあの態度か。
「ふん、俺は一応大人、だからな。
それに危険だとわかっててなぜ初等部の息子を同行させる?
だから距離を置かれるんじゃないのか?」
「言うね…
確かに危険だ。
だがククスは特殊な力を持ってると言ったでしょう?
ククスは人より生命力や回復能力が高くてね。
死ぬような怪我を負っても数時間後には回復している。
これほどの適任者はいないでしょう。
それにうちの息子の誰よりも初等部の成績は優れている。
まぁ実技のみ、だけどね。」
「ふざけるなよ」
副団長の言葉に沸々と湧いてくる怒りを表に出さないように必死で抑えつつも自分の声かと疑いたくなるような低い声で言葉を絞り出す。
「ふざけてませんよ。
本音を言えば私だって息子を危険に晒したくなんかありません。
でも使えるものは使わなければならない。
私はそういう立場なんです。」
「だから何だ?
立場を守って息子を殺すつもりか?」
「ククスはそう簡単に死にませんよ。」
「なぜ言い切れる?
世の中に絶対なんかないんだよ。」
そう、俺が死んだように。
例え生命力が強かったり回復能力が高くとも死ぬ時は死ぬ。
絶対なんてないんだ。
「それに身体は回復したとしても心は?
死ぬような傷を負えば心にも傷が付く。
目には見えないがそれは深く、深く心を抉る。
子供にそんなこと耐えられるのか?」
俺の言葉を黙って聞く副団長。
副団長も何か思うことがあるのだろう。
「出すぎたことを言ってるのはわかってる。
でも息子が大事なら無茶な使い方をするな。
そして今すぐこの作戦から外せ。」
「君の意見にも一理ある。
今後の件は考えるよ。
でも今回の作戦からは外せない。」
「何でだよ⁉︎」
「攫われた子供を誘導するのに大人では警戒されるだけでしょう?
ここはククスが適任なんです。」
「…じゃあククスとは俺が組む。」
「…わかりました。」
ククスを作戦から外せないと言うなら俺がククスの側にいて守る。
それしかない。
それ以上譲歩するつもりはない。
俺の決意が硬いのを読み取ったのか副団長が俺の意見を認め額に手を当て天を仰ぐ。
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