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5章
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しおりを挟むこの先は地下へと続く階段のみ。
人影も敵影もない。
とりあえず地下の様子を探ろうとするがここだけ何重にも頑丈に結界や探知防御の魔法がかけてあり読み取りにくい。
今の制御された俺では時間がかかるだろう。
これでは慎重に進んだ方が早そうだ。
「この先は何があるかわからない。
慎重に進もう。」
「わかった。」
「さっきみたいに勝手に突っ込むなよ?」
「わかってるって、しつこいな。」
何度もククスに釘を刺したあと地下へと続く階段を下っていく。
階段を下りきる前にそっとフロアの様子を覗くとそこは鉄格子が嵌められ区切られた空間で牢屋のようだ。
目を凝らすと怯えた様子で子供たちが固まっている。
俺はこの空間に違和感を覚えつつも罠がないことを確かめたあとフロアに足を踏み入れる。
子供たちは新しい大人の登場にさらに怯え鉄格子から遠ざかる。
そんな様子を見たククスが声を潜め肩を揺らして笑っているのが目の端に映るが気にしている場合じゃない。
「助けに来た。
出たい奴は出ろ。
お前たちは自由だ。」
「うわっ冷た!
そこは助けに来たぞ!早く逃げよう!
でいいのに。」
「うるさい。」
俺は言いながら子供たちが近くにいないことを確認したあと鉄格子を魔法で切る。
鉄格子は音を立てて倒れ大きく道を開ける。
「ぁ、ありがとうございます…」
「え?
ぁ、えっと…委員長さん!」
「あれ?
君、ギルフォードくんの…」
「そうそう、ギルの友達!
ぁ、ほら、みんな今がチャンスだから早く逃げよ!」
最初に遠慮がちに声をかけてきたのはそう、紛れもない、実技の授業で一緒だった中等部の委員長さんだ。
他の子供たちもククスを見て顔を見合わせ警戒していながらもククスの後に続きこの地下室を出る。
地下室に残っている人がいないのを確認し、開けた場所に出たあと人数確認する。
この場所に居なくても他の場所に囚われているかもしれないからな。
「いやー、まさか委員長さんがこんなところにいるなんて」
「あはは、俺もこんなところで君に会うなんてビックリだよ。」
ちょっと待て、ククス。
おかしいことに気付け。
無防備に近付こうとするククスを手でこれ以上行くなと制止し俺はククスの一歩前へ出る。
俺は今、子供たち全員を背にして庇いながら委員長と対峙している状態だ。
「委員長とやら、何でお前がここにいる?」
「え?
何でって…今日の放課後、家の用事で外出中に捕まってしまって…」
「そんな情報入ってきてないぞ。」
「えっと…情報漏れ、ですかね?」
「そんなわけねぇだろ。」
「ちょっフォード、何なのさ?
委員長を疑ってるわけ?」
まっさかーと警戒心なくケラケラ笑うククスをしばきたくなるのを我慢し、真顔でククスを見る。
「ぇ?
ま、まさか…だよ、ね?」
俺の真剣さが伝わったのか信じられないといった表情で俺を見たあと縋るように委員長を見る。
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