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6章
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しおりを挟む俺がギリギリ隠れられそうなくらいの太さの杭を小脇に抱え、何事もなかったかのように瓦礫を跨いで俺の方へ歩いてくる先生。
よくもそんな重そうな物を抱えて平然と歩いてられるな。
そんな俺の視線に気付いたのか先生の視線も杭へと移る。
「これか?
時間がなかったからちょっと拝借してきた。」
クイックイッと学園の方を親指で指して言う先生に俺は遠視で指された方角を見る。
確かに等間隔に並んでいるはずの棒が1箇所ポッカリと空いている。
だがそれよりも注目すべきはその杭が刺さっているであろう場所が霞んで見えることだ。
そこに精霊たちが集まってきている。
「先生、それってもしかして…」
「ぁあ、結界柱だな。」
「なんてことしてるんですか⁉︎
今学園の方は大変なことになってますよ!」
結界柱が抜けたことにより結界のバランスがおかしくなり、その穴を埋めるために精霊たちは大忙しだ。
パタパタと飛び回りバランスを調整したり結界を崩さないようにするので精一杯のようだ。
「おう。
だから校長にバレる前にさっさと片付けて元に戻さなきゃなんねーんだ。
ってことだからお前も手伝えよ。
変な奴は俺が殺ってやる。
あのボーッとした奴はお前が殺れ。」
「…わかりました。」
おう。じゃねぇよ…
教師にあるまじき行為なんじゃないか?
いや、でも先生が亜種を倒してくれるって言ってるんだ。
そこは教師らしいっちゃ教師らしい。
巻き込んだ?のは俺だし、いや、でもこれ俺は悪くない気がするが…
だがここは俺も男だ。
グダグダ言ってないでやってやろうじゃないの。
俺の相手は飛んでいる蝶をずっと追いかけているどこか抜けてそうなオーガ。
そう、あいつは仲間が戦っていた時も仲間が殺られた時もずっと蝶を追いかけていた。
途中亜種のオーガに邪魔されていたが一切気にした様子もなくまだ追い続けていた。
さて、どうしたものか…と考えていると追われていた蝶が土の塀を越え森へと帰って行った。
オーガもそれを追いかけて行こうとするが土の塀がそれを阻む。
オーガは思いっきり土の塀に体当たりするが土の塀はビクともしない。
…オーガが思いっきり体当たりしても崩れない土の塀を素手で壊す先生って…
いや、考えない、考えないことにしよう!
このまま土の塀を崩してオーガを森に帰すことも一瞬考えたが、このオーガが人に危害を加えないとも限らない。
ならばここで一思いに殺るべきなんだろう。
「それよりお前、入試の時魔法使えないとか言ってたんじゃなかったっけ?」
「言ってませんよ、そんなこと。
使えない、ではなく使わない、です。」
そこは間違ってもらっては困る。
そして学園内では俺はほぼ魔法を使っていない。
精霊や魔具で補っているのだ。
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