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6章
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しおりを挟む和やかなムードで森の中腹まで来た頃ドーンと大きな音が木々を震わせる。
「先輩!」
高等部の先輩が警戒態勢をとり音をする方を睨みつける。
「斥候に出ます。
ククスたちのこと、お願いします。」
「わかった…気を付けてね。」
「はい。」
このまま状況もわからず撤退する選択肢もあったが俺の頭に真っ先に思い浮かんだのはあの聖獣のことだった。
脚力強化の魔法を重ねがけし、空気抵抗を軽くする魔法も念のためにかけて音のした方へ飛び出す。
「は、はぇー…」
「もう見えなくなりましたね…」
「よくもまぁこんな森の中であんなにスイスイと…」
「さすがギル…カッコイイ…」
「「「え?」」」
変なやり取りがされていることも知らず音のした方へ向かっていると50㎝ほどの地面を抉ぐった跡が。
これが先ほどの音の原因だろう。
逸る気持ちを押さえ込み気配がする方へ急ぐ。
木の影を抜けた瞬間あの聖獣と人影が目に入る。
ん?
これ、最近も見た光景な気が…
聖獣に向かって攻撃をしかけようとする人影の足許に光の精霊に作ってもらった20㎝ほどの短剣を数本投げて地面に突き刺す。
いきなり飛んで来て地面に突き刺さった短剣に後ろに飛び退く人影。
あいつ…
「おじさん、何やってるんですか?」
「チッ…ガキは黙ってろ」
昨日見たあいつだ。
聖獣に敵意を向けて何だか怪しいやつだとは思っていたが連日襲撃してくるとは…
そして黙ってろと言われて黙っているほど俺は物分かりがよくない。
「そうですか…答える気はありませんか。
なら僕もこのまま引くわけにはいきませんね。」
「は?
ガキが大人に勝てるとでも思ってんのかよ?」
「ふっ…やってみますか?」
俺は鼻で笑い挑発するように相手を見やる。
俺の態度に相手は警戒しているようだ。
「けっどうせハッタリだろ。」
「さぁ?
どうでしょう?」
光の精霊特製の光の短剣を扇子のように広げ顔の前にもっていく俺におじさんの顔が引き攣る。
顔に出やすいやつだな。
「おじさん、実力差がわからないほど雑魚ではないですよね?」
「ふっはははは。
口の減らねぇガキだ。」
俺の顔からスッと表情が消えたのを見て剣を構えるおじさん。
おじさんも俺同様、短剣を使うようだ。
しかも2本。
そこまで一緒とはね。
経験や実力がモノを言うな…
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