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6章
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しおりを挟むその日は疲れているだろうからと早めに解散した。
翌朝…俺は自分の考えが甘かったことを思い知らされる。
俺が通る道、通る道、モーゼの海割りのように人混みが割れていく。
なんなんだ、いったい?
俺は危険物扱いですか?
俺が1人愕然としていると珍しく早いククスがそっと俺の肩に腕を回す。
「大変だな、ギル。」
「人ごとのように言わないでください…」
「だって人ごとだしー?」
「…いつかそう言ってられなくなりますよ。」
「?」
哀れんだ目で俺を見るククスに深い、ふかーいため息が溢れそうになるのをグッと堪え右手で顔を覆う。
素知らぬ顔をして俺を席に誘導するククスにボソッと呟くと不思議そうな顔で俺を見る。
俺と一緒にいるなら暫くはこの状態が続くだろう。
人の視線に晒されることに慣れていても四六時中見られているのは心地の良いものではない。
いつか爆発するだろう。
まぁククスよりライルやアリサの方が心配だけど、な。
「おはよ…よく寝れた?」
「おはようございます。
はい、あのあとぐっすり。」
「よっぽど疲れていたんですね…」
「ははは…」
「おーい、早くライルも手伝えよー」
「はいはい。」
乾いた笑いしか出てこないよ。
ククスはいそいそと食事の準備をしている。
俺も手伝おうと動くが、俺が動くだけで周りがざわつくのでククスに止められてしまった。
本当、俺が何したって言うんだ…
だが今日も至れり尽くせりだ。
こうやって気を使って手を貸してくれる友人がいて良かったとしみじみ思う。
朝食を済ませ学校に行ってもモーゼの海割り状態…
俺と目が合った教師はなぜか苦笑いするか顔を引攣らせるかのどっちかだった。
これじゃまともに学園生活すらやっていけない…
俺も聖獣のように森で暮らしたくなってくるよな…
でもせめてもの救いは変わらずに接してくれる友人がいる。
それとクラスメイトもお昼を過ぎる頃には普通に戻ってくれていたこと、かな。
時間が全てを解決してくれる。
……してくれればいいな。
今日も無事?1日を終え帰ろうとした時、普段は一切すれ違うことのないあの不良教師と珍しくすれ違う。
今日の俺の1日を知っているのだろう。
顔がニヤけている。
くそぅ、これもこいつの計算の内か…
パッと振り返って見るが不良教師は資料室から出てきた生徒と談笑している。
俺のこんな態度もあいつには手に取るようにバレていそうだな…
帰ろう…
学校にいるより寮の部屋にいる方が1人で落ち着ける。
それに聖獣を鍛えるために森にも行かなきゃいけないしな。
よし、そうと決まればさっさと帰ろう。
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