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7章
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しおりを挟むメルもイリスもその様子を見て苦笑いを浮かべている。
メルとイリスはだいたいの内容を理解しているだろうし、後々何らかの呼び出しがあるんだろうな…
つつがなく食事が終わり、リドが俺の武勇伝の語りに満足し満腹になったからか、船を漕ぎ始めたところで一度解散となり、アリサはイリスたちの部屋に併設されている小さめの浴室にイリスに案内され、俺たちは奥にある大浴場にリドに引っ張られて移動する。
もちろん大浴場には俺特製露天風呂が併設されている。
いや、日本人たるもの露天風呂は必須でしょう!
ここは強く拳を握って宣言できる。
メルもイリスもリドもこの露天風呂には大喜びだった。
アリサにも入ってもらいたかったが、今日はいろいろと準備不足のため諦めてもらった。
リドも残念がっていたがしかたない。
だが他は準備万端だ。
俺が夏休みに友人を連れて帰ると言ったあの日から着々と準備が始まっていたらしい。
人に頼んでこっそりと映像石で盗撮し…といっても俺は撮られていたことには気付いていた。
だが殺意も敵意もなかったため放置したのだ。
それはいい。
それはいいが、それよりも驚くことが1つ。
撮った全ての写真を見せてもらったが、ククスが全てカメラ目線なのだ。
最初は疑り深い訝しんだ顔でこちらを見ていたが、最後の方になると笑顔を向けていたり、ピースしていたり、もの凄くドアップだったり…
いったいククスは何をやっているんだ…
盗撮を放置した俺も俺だが、ククスほどサービス精神旺盛でもないし、ましては盗撮犯だ。
捕まえる気がないのなら不用意に近付くべきではないはずだ。
それなのに隣に座ってのんきにお茶など…ハッそういうことか!
ククスめ…お茶菓子に釣られたな…ったく、情けない…
まぁいい。
俺が言いたいのはそこじゃない。
そうやって得た情報を基に、全員分の服や寝間着をイリスが縫い上げ夏休み中、服が被ることなく着回せるよう準備されていた。
いや、むしろ少し多いくらいだ。
特にアリサの服に力を入れているようで…逆にアリサが困っていた。
1日に2着、いや、3着は着替えられそうだ。
イリス曰く女の子は何着も持っていたって困らないわ、それにこれじゃあ足りないくらいよ。だそうだ…
困ったような目で見つめられたが、アリサには悪いがこればっかりは俺にもどうすることもできない。
アリサに諦めてもらう他ない。
大浴場で大はしゃぎし、露天風呂でも大はしゃぎしたククスは俺とライルにリドの教育に悪いと叱られた後、大人しく湯船に浸かり、のぼせる寸前にライルに引き上げられる。
普段のライルならもっと早くに気付いていただろう。
だがライルもまた物珍しい露天風呂にテンションが上がっていたようだ。
俺は言うまでもない。
リドの事で頭がいっぱいだった。
身体を洗ってやるついでに傷が残っていないか細かくチェックしたり髪も砂利が残らないよう丁寧に洗ったりと忙しかったのだ。
リドが湯船に浸かっている間に手早く自分を洗い、リドがのぼせる前にお風呂から出る。
リドの身体を拭き髪を乾かしているとククスが水分補給をしながら面白いものを見るような目でこちらを見ている。
何だか少し不快だ。
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