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1章

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 風の精霊フーからの声が届き俺は居ても立っても居られなくなった。


 メルが怪我をしたと…しかも依頼人である人間の手によって。


 許せない。
 俺は怒りに満ちていた。
 だがそれ以上にメルが心配だった。


 俺は急いでイリスを呼びに行く。


「かーさま!
 かーさまっ!」


 大きな声で呼びながらイリスの元へ行き、そんな俺の様子にイリスが驚いたように部屋から出て来る。


「ギル?
 どうしたの?」


「せーれーたちがよんでる!」


 そう言いながらイリスを引っ張り外へ出る。


 俺はこっそり無の精霊クロムに頼み空間の歪みを探してもらう。


 多分メルは転移魔法で帰って来る。


 でも風の精霊フーが言うにはメルの様子がおかしかったらしい。
 多分敵から受けた攻撃のせいだと俺は思う。


 剣先に何か塗られていたのかもしれない。


 麻痺薬…もしくは毒薬かもしれない……


 どちらにせよ魔力コントロールが難しい転移魔法をその状態で使ったとして、目的地へまともに帰って来る確率は低い。
 座標がズレるかもしれないのだ。


 もしそうなったとして、メルが出てきたところさえすぐにわかればこちらで対処できる。


 その為の対策なのだ。




 
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