運命──捨てられて養子にした子供は俺の運命の番だった

RINFAM

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「あっ…あっ!……あ!!」
「くそ……くそっ、なんで…!!」
 どうしてこんなことになっちまったんだ。俺は、ラルカを、ラルカティアを、ただ大切に育てたいと思い願ってきただけなのに。ラルカを幸せにしたいと、それだけを考えて10年もの間、彼を育て慈しんで来たのに。

 柔かく小さな少年の肢体。抗う術を持たぬ身体を組み敷きながら、俺は、荒々しく押し寄せてくる衝動のまま、折れそうな細い首筋に噛み痕を残した。

 コレは契約。

 番とするための、消えない楔。

「あああ――っ、あっ、あっ」
「ラルカ…ラルカッ、すまねえ…すまねえ……ッ」
 こんなことしたくないのに。ラルカを苦しめたくないのに。それなのにどうしても抗えない欲求が、醜い欲望と支配欲が、俺の心と身体を狂わせる。まるでそう、理性の無い獣の様に。
 俺の手によって引き裂かれた服の下から、上気した艶めかしい白い肌が垣間見え、未成熟な身体の全身から、鼻孔をくすぐる甘い香りが匂い立つ。
 ああ、そう。これだ。この匂いだ。俺は、俺達『アルファ』は、この香りに抗う事は出来ない。オメガの…『雌』の放つ発情期を示すフェロモンに、決して逆らうことも、抗うことも出来ないのだ。
「ひうっ、あっ、あぁっ、ああ」
 初めて訪れた発情期に狂わされ、訳が分からぬまま泣きじゃくるラルカ。
 俺に犯され穢される今、この子はいったい何を思っているだろう。裏切られたと傷付いてるだろうか。苦しみと憎しみに喘いでるだろうか。それとも──


 この国では珍しい黒髪と、水晶のような青い目を持つ少年ラルカ──『ラルカティア』が初めて俺の──クルト・エル・ファリエルの屋敷へ、父母に連れられてやって来たのは、彼がまだ5歳の頃だった。

「申し訳ないですけど、しばらくの間、この子をお願いします」
「いえ。お気になさらず」
 父の知人であるシルフィード一家が、しばらく商用で国外へ出ると言うので、その間、幼い末の子を俺が預かることになったのだ。
 彼らに対して俺自身には何ら接点がなかったが、亡父と付き合いがあったことだけは知っていた。しかも生前、事故に合った父の命を救ってくれたとも聞いていたから、俺は無碍に断ることも出来ずに引き受けることになったのだ。
「ラルカティア・シルフィード…です」
「……………ッ」
 初めてラルカの姿を見た時、何となく嫌な予感はした。
 ラルカは5歳にしてはやたら身体が小さかったし、顔もひどく無表情で感情に乏しく、とても可愛がられて育てられている風には見えなかったのだ。
 しかも両親と上の子はよく似た外見と雰囲気を持つのに対し、ラルカだけは彼らと同じ遺伝子を受け継いでないようにも見えた。

 要するにまるで似てないのだ。顔付きも、雰囲気も、髪や目の色すらも。

 これは容易に引き受けたのは間違いだったか。
 子供を預かるだけのつもりが、とんだ厄介ごとを引き受けてしまったのでは。

 そんな俺の嫌な予感はすぐに的中した。
「………これは…ッ」
 当時から広い屋敷に独り暮らしをしていた俺は、自然とラルカの世話を自分ですることになった。そのため、ラルカを預かったその日の内に、彼の小さな身体が無数の折檻痕で埋め尽くされていると気付かされたのだ。
『……惨いことを…ッ』

 薄かったり、濃かったりする、新旧さまざまな、青痣だらけの白い体。

 酷い切り傷などはさすがになかったものの、ラルカの小さな体には、あちこちに殴打されたと思しき痛々しい痕跡が残っていた。そのくせ、彼は他人の俺に触れられてもビクともせず、ただ無関心に俺のすることを大きな瞳で見詰めている。
 無表情な顔からは、微かに諦めのような気配を感じた。
「お前………」
 これは俺の想像に過ぎないが、おそらく虐待が日常的に行われるうちに、彼の中で諦めと絶望が限界へ達してしまったのだろう。
 そして、どんなに叫んでも、泣いても、赦しを乞うても、無駄なのだと悟ってしまった。がために、ラルカは、自らの身を護るための抵抗さえも放棄して──否、放棄させられてしまった、のかも知れない。
「…………っっ」
 ズキリと胸が痛んだ。
 どうしようもない怒りも込み上げてきた。
 けれど俺はそれらを無理矢理抑え込んだ。

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