運命──捨てられて養子にした子供は俺の運命の番だった

RINFAM

文字の大きさ
5 / 21

「ラルカ、学校遅れるぞ」
「うん。クルト」
 それからしばらくして、俺とラルカとの生活が始まった。
 俺は6歳になったラルカを学校へ通わせ始め、なるべく普通の子供と同じように暮らせるよう心掛けた。俺が仕事で遅くなることも考えて、ラルカの食事の用意や世話をする通いのメイドも雇った。
 ラルカを1人きりにする時間を減らすため仕事を持ち帰り、休日にはラルカと2人で過ごしたり、2人であちこち出掛けることもあった。我ながら過保護かも知れねえとは思ったが、とにかく俺は、ラルカと一緒に居る時間を大切にしたかったのだ。
「そうだ、いつも言ってるが、身体に何か変調があったら、俺にすぐ言うんだぞ?」
「ん。わかった」
 車でラルカを学校へ送り届ける時、その細い首筋に付けられたバーコードを見た俺は、それが変化していないことを確めつつラルカにも注意を促す。
 見た目黒い刺青みたいなこれは、本来、性未分化の幼児に刻印されるマークで、幼児が成長し体質に変化が起こると、色が変わって個体の性別を表す。その後、性が確定し安定するとマークは自然に消えるのだが、ラルカの白い首筋のそれは変化を見せてはいなかった。

 あの後、病院で検査してもらったがラルカの性別は不明で、虐待生活による成長不順が原因だろうと診断された。俺は風呂に入れるなどした時に見て既に知っていたが、確かにラルカの身体はやせ細っていて小さく、ろくに食事を与えられていないことは明らかだった。
 通常、5歳児ともなればとっくに性分化しているものだが、まあ、原因が原因なのだから仕方がないし、未分化だからと言って焦る必要もないだろう。いずれ成長すればラルカも3つの性のいずれかに分化し、その性に見合った生き方をしていくだけだからだ。

 ただ、出来ることならオメガであって欲しくはなかった。

 何故なら3つの性の中でオメガは最も地位が低く、そして、その特殊な性質ゆえに他性から蔑まれ、見下されつつも、良いように利用される運命だったからだ。

 オメガ性に生まれた個体は成長すると、年に数度、1週間に渡る発情期に心身を支配される。その間、無節操に放たれるオメガのフェロモンに、他性の人間は男女の別なく狂わされ、込み上げる欲望と本能を抑制できなくなるのだ。
 この個を犯し、孕ませ、血を残せという、種としての本能に人は誰も抗えない。
 オメガ性を持つ男女は、己が意志とは無関係に、その身の内に『雄』を誘うのだ。
 しかも発情期の間、オメガは尽きることない欲情に身を焼き続け、一切、自分で自分を抑制できなくなる。最悪、フェロモンに引き寄せられて来る者を拒むことも出来ず、自身の意志など無関係に雄の欲望を受け入れ続けることになるのだ。
 抑制剤もあるにはあるが、高価で簡単に手に入る物ではない。しかも例え抑制剤があっても、それは多少抑えが効く程度の効果に過ぎず、根本的な解決がなされる訳ではないのだ。結果、オメガは発情期が近付くと、意志に関係なく他性を引き寄せ凌辱されてしまう。

 そんなオメガが救われる手段は、唯一無二の『番』を得ること。

 アルファと交わる最中に、首筋に噛み痕を残されると、オメガはそれ以後、自分を噛んだ相手にしか欲情しなくなるし、他の個体を受け付けなくなる。もちろん発情期のフェロモンも、番の相手にしか効かなくなるから、かなり負担が軽減されることになるのだ。
 しかし、オメガにその様な幸福が許されない、社会の裏事情がひとつだけ存在する。

 それはオメガにだけ備わる、他性の人間に勝る唯一の『優位性』だ。
感想 0

あなたにおすすめの小説

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

元カレに追い出された専門学生がネカフェでP活相手のパパちんぽに理解らせられてトロトロのメロメロになっちゃう話

ルシーアンナ
BL
既婚子持ちバイ×専門学生 Pixiv https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=27436158 ムーンライトノベルズ https://novel18.syosetu.com/n1512ls/ fujossy https://fujossy.jp/books/31185

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

番ではないと言われた王妃の行く末

にのまえ
恋愛
 獣人の国エスラエルの王妃スノーは、人間でありながら“番”として選ばれ、オオカミ族の王ローレンスと結婚した。しかし三年間、彼に番と認められることも愛されることもなく、白い結婚のまま冷遇され続ける。  それでも王妃として国に尽くしてきたスノーだったが、ある日、ローレンスが別の令嬢レイアーを懐妊させ、側妃として迎えると知る。ついに心が折れたスノーは離縁を決意し、国を去ろうとする。  しかしその道中、レイアー嬢の実家の襲撃に遭い、スノーは命を落とす寸前、自身の命と引き換えに広域回復魔法で多くの命を救う。  これでスノーの、人生は終わりのはずだった。  だが次に目を覚ますと、スノーは三年前の結婚式当日に戻っていた。何度死んでも、何度拒絶しても、結婚式の誓いの瞬間へと戻される。  番から逃れようと、スノーは何度も死を選ぶが――。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました

由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。 ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。 遠い存在になったはずの彼。 けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。 冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。