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二章 値踏みされる悪女
①⑨ ヴィクトールside3
『魔法を使えないことに対して偏見があるのはたしかです。恐らく生活すらままならない。彼女は病弱なのでしょう?』
『魔法が使えなければ生活すらままならない。彼女は病弱と聞いたことがありますが……』
『病弱というか……まぁ、そういうことにしておこう』
含みのある言葉をこれ以上、追求することはなかった。
『あなたは魔法に対して偏見があるのではないのですか?』
『ああ、魔法は大っ嫌いだ。だが、もうワシの手には負えないと判断した。アイツは化け物だからな』
『…………』
噛み合っているようで噛み合っていない会話。
これ以上深く聞いても無意味なのかもしれない。
『もちろんシャルレーヌを守ってほしいなどと微塵も思っていない。生きるのが難しければ難しいほどいい。でないとワシが殺される。もう三度目はないと脅すだろうからな』
『……ですが』
『魔法がなくても自分の食うものくらい自分で用意するだろう』
それは文化の違いなのだろうか。
王族であれ弱肉強食だというのは変わらないらしい。
(だが魔法を使えなければ何もできない。それをわかったうえで言っているのどろうか)
実際、サンドラクト国王に闇魔法を見せて効果を説明してみるが、彼はじっと魔法を見つめた後にある言葉を呟く。
『ほう……凄まじいものだな。これはもしやがあるかもしれんな』
そして楽しそうに笑い出したではないか。
『彼女が正妃になることはありえません』
『そんなものに興味はないだろう。ワシもどうでもいい』
豪快に笑うサンドラクト国王が結局、何を伝えようとしているのかまったくわからない。
魔法がなければ暮らせない国に送り込んで彼女に何ができるのだろう。
(ただ飢えて死んでいくのを見ていろと?)
ヴィクトールのわずかな表情の動きで言いたいことを察したのだろう。
『逆に魔法を使えないからと油断していると、アイツに食われるぞ?』
『はっ……ありえませんよ』
彼はニヤリと唇を歪めた。
それが本心かハッタリかを見極めるのは難しい。
『仮に第二王女を娶り、こちらに何のメリットはあるのですか?』
彼が〝化け物〟と呼ぶ病弱な王女と結婚したことで何の得があるのか、まったく理解できない。
『同盟を結べば素晴らしい実績となるだろう? どの皇帝も成し得なかったことだ』
『…………』
『シャルレーヌが帝国にいる間はこれ以上領土を広げないと約束しよう。それはお前がシャルレーヌを引き止められたらの話だがな。すれば皇帝に反対していた者たちを安易に黙らせることもできるだろう?』
つまり皇帝になったばかりのヴィクトールのために実績をとのことなのだろう。
長年に渡り誰も成し遂げられなかったサンドラクト王国との和解。
もし罠などでなければ間違いなく求心力は高まるはずだ。
『何故、俺を選んだのですか?』
その言葉にサンドラクト国王は目を見開く。
『なんとなくに決まっている。ワシの勘だ!』
『はぁ……』
『ガハハッ、結構当たるんだぞ』
聞いた自分が馬鹿だったと思えるほど豪快な笑いだった。
しかし皇帝としてサンドラクト王国との同盟はおいしい話だ。
余計な争いも避けられる。面倒なことにはならないだろう。
『もし彼女が死んでも責任は取りませんよ』
『ハハッ、シャルレーヌは殺しても死なんよ。それよりもお前の周りでは大きな変化が起こる。翻弄されるかうまく使うかはお前次第だ』
『…………』
『ワシは一切責任はとらん!』
腕を組んでそう言いきったサンドラクト国王が嘘をついているとは思えなかった。
シャルレーヌを随分と過大評価しているように見えた。
『あとは好きにしていい。使えないと思ったら切り捨てろ』
『…………は?』
『あわよくば殺してほしい。殺せるならばな……』
彼のふざけた雰囲気が一気に真面目なものになる。
鋭い視線は恐ろしく、ヴィクトールを射抜いていた。
しかし自分の娘を殺せとはどういうことなのだろうか。
『……なぜ』
『それが彼女の望みでもあるからだ』
サンドラクト国王が何を言っているのかヴィクトールには理解できなかった。
彼女とはシャルレーヌのことではなさそうだ。
『我々にもそれは不可能だった。もしシャルレーヌがお前に心を開くようなことがあれば……』
彼は悲しげに見えた。
『まぁ、とにかくシャルレーヌを頼む! 見目もよいし、茶目っ気もある。ただ少し……その、変わっているだけで……少しな……』
次第に言葉に詰まって汗ばんでいくサンドラクト国王を横目に、ヴィクトールは考えを巡らせていた。
その後もヴィクトールが微妙な表情をしていると、次第に国王は必死になっていく。
『お願い! ほんとお願いっ、一生のお願いだから!』
『…………』
『お願いだから娶ってぇ……』
サンドラクト国王の弱々しい声が聞こえた。
それにヴィクトールは気がつかないふりをするしかなかった。
その他にもサンドラクト国王といろいろと話をすることができた。
彼も歳のせいで落ち着いてきたと言って皮肉を込めて笑っていた。
というよりもヴィクトールの魔法を知ったのに対等に接してくれたことが嬉しかったのかもしれない。
最終的に承諾したのは案外、サンドラクト国王が人間らしく好ましく思ってしまったからだ。
『魔法が使えなければ生活すらままならない。彼女は病弱と聞いたことがありますが……』
『病弱というか……まぁ、そういうことにしておこう』
含みのある言葉をこれ以上、追求することはなかった。
『あなたは魔法に対して偏見があるのではないのですか?』
『ああ、魔法は大っ嫌いだ。だが、もうワシの手には負えないと判断した。アイツは化け物だからな』
『…………』
噛み合っているようで噛み合っていない会話。
これ以上深く聞いても無意味なのかもしれない。
『もちろんシャルレーヌを守ってほしいなどと微塵も思っていない。生きるのが難しければ難しいほどいい。でないとワシが殺される。もう三度目はないと脅すだろうからな』
『……ですが』
『魔法がなくても自分の食うものくらい自分で用意するだろう』
それは文化の違いなのだろうか。
王族であれ弱肉強食だというのは変わらないらしい。
(だが魔法を使えなければ何もできない。それをわかったうえで言っているのどろうか)
実際、サンドラクト国王に闇魔法を見せて効果を説明してみるが、彼はじっと魔法を見つめた後にある言葉を呟く。
『ほう……凄まじいものだな。これはもしやがあるかもしれんな』
そして楽しそうに笑い出したではないか。
『彼女が正妃になることはありえません』
『そんなものに興味はないだろう。ワシもどうでもいい』
豪快に笑うサンドラクト国王が結局、何を伝えようとしているのかまったくわからない。
魔法がなければ暮らせない国に送り込んで彼女に何ができるのだろう。
(ただ飢えて死んでいくのを見ていろと?)
ヴィクトールのわずかな表情の動きで言いたいことを察したのだろう。
『逆に魔法を使えないからと油断していると、アイツに食われるぞ?』
『はっ……ありえませんよ』
彼はニヤリと唇を歪めた。
それが本心かハッタリかを見極めるのは難しい。
『仮に第二王女を娶り、こちらに何のメリットはあるのですか?』
彼が〝化け物〟と呼ぶ病弱な王女と結婚したことで何の得があるのか、まったく理解できない。
『同盟を結べば素晴らしい実績となるだろう? どの皇帝も成し得なかったことだ』
『…………』
『シャルレーヌが帝国にいる間はこれ以上領土を広げないと約束しよう。それはお前がシャルレーヌを引き止められたらの話だがな。すれば皇帝に反対していた者たちを安易に黙らせることもできるだろう?』
つまり皇帝になったばかりのヴィクトールのために実績をとのことなのだろう。
長年に渡り誰も成し遂げられなかったサンドラクト王国との和解。
もし罠などでなければ間違いなく求心力は高まるはずだ。
『何故、俺を選んだのですか?』
その言葉にサンドラクト国王は目を見開く。
『なんとなくに決まっている。ワシの勘だ!』
『はぁ……』
『ガハハッ、結構当たるんだぞ』
聞いた自分が馬鹿だったと思えるほど豪快な笑いだった。
しかし皇帝としてサンドラクト王国との同盟はおいしい話だ。
余計な争いも避けられる。面倒なことにはならないだろう。
『もし彼女が死んでも責任は取りませんよ』
『ハハッ、シャルレーヌは殺しても死なんよ。それよりもお前の周りでは大きな変化が起こる。翻弄されるかうまく使うかはお前次第だ』
『…………』
『ワシは一切責任はとらん!』
腕を組んでそう言いきったサンドラクト国王が嘘をついているとは思えなかった。
シャルレーヌを随分と過大評価しているように見えた。
『あとは好きにしていい。使えないと思ったら切り捨てろ』
『…………は?』
『あわよくば殺してほしい。殺せるならばな……』
彼のふざけた雰囲気が一気に真面目なものになる。
鋭い視線は恐ろしく、ヴィクトールを射抜いていた。
しかし自分の娘を殺せとはどういうことなのだろうか。
『……なぜ』
『それが彼女の望みでもあるからだ』
サンドラクト国王が何を言っているのかヴィクトールには理解できなかった。
彼女とはシャルレーヌのことではなさそうだ。
『我々にもそれは不可能だった。もしシャルレーヌがお前に心を開くようなことがあれば……』
彼は悲しげに見えた。
『まぁ、とにかくシャルレーヌを頼む! 見目もよいし、茶目っ気もある。ただ少し……その、変わっているだけで……少しな……』
次第に言葉に詰まって汗ばんでいくサンドラクト国王を横目に、ヴィクトールは考えを巡らせていた。
その後もヴィクトールが微妙な表情をしていると、次第に国王は必死になっていく。
『お願い! ほんとお願いっ、一生のお願いだから!』
『…………』
『お願いだから娶ってぇ……』
サンドラクト国王の弱々しい声が聞こえた。
それにヴィクトールは気がつかないふりをするしかなかった。
その他にもサンドラクト国王といろいろと話をすることができた。
彼も歳のせいで落ち着いてきたと言って皮肉を込めて笑っていた。
というよりもヴィクトールの魔法を知ったのに対等に接してくれたことが嬉しかったのかもしれない。
最終的に承諾したのは案外、サンドラクト国王が人間らしく好ましく思ってしまったからだ。
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