【完結】魔力0の訳あり王女、最狂につき取り扱い注意

●やきいもほくほく●

文字の大きさ
19 / 50
二章 値踏みされる悪女

①⑨ ヴィクトールside3

『魔法を使えないことに対して偏見があるのはたしかです。恐らく生活すらままならない。彼女は病弱なのでしょう?』

『魔法が使えなければ生活すらままならない。彼女は病弱と聞いたことがありますが……』

『病弱というか……まぁ、そういうことにしておこう』


含みのある言葉をこれ以上、追求することはなかった。


『あなたは魔法に対して偏見があるのではないのですか?』

『ああ、魔法は大っ嫌いだ。だが、もうワシの手には負えないと判断した。アイツは化け物だからな』

『…………』


噛み合っているようで噛み合っていない会話。
これ以上深く聞いても無意味なのかもしれない。


『もちろんシャルレーヌを守ってほしいなどと微塵も思っていない。生きるのが難しければ難しいほどいい。でないとワシが殺される。もう三度目はないと脅すだろうからな』

『……ですが』

『魔法がなくても自分の食うものくらい自分で用意するだろう』


それは文化の違いなのだろうか。
王族であれ弱肉強食だというのは変わらないらしい。

(だが魔法を使えなければ何もできない。それをわかったうえで言っているのどろうか)

実際、サンドラクト国王に闇魔法を見せて効果を説明してみるが、彼はじっと魔法を見つめた後にある言葉を呟く。


『ほう……凄まじいものだな。これはもしやがあるかもしれんな』


そして楽しそうに笑い出したではないか。


『彼女が正妃になることはありえません』

『そんなものに興味はないだろう。ワシもどうでもいい』


豪快に笑うサンドラクト国王が結局、何を伝えようとしているのかまったくわからない。
魔法がなければ暮らせない国に送り込んで彼女に何ができるのだろう。

(ただ飢えて死んでいくのを見ていろと?)

ヴィクトールのわずかな表情の動きで言いたいことを察したのだろう。


『逆に魔法を使えないからと油断していると、アイツに食われるぞ?』

『はっ……ありえませんよ』


彼はニヤリと唇を歪めた。
それが本心かハッタリかを見極めるのは難しい。


『仮に第二王女を娶り、こちらに何のメリットはあるのですか?』


彼が〝化け物〟と呼ぶ病弱な王女と結婚したことで何の得があるのか、まったく理解できない。


『同盟を結べば素晴らしい実績となるだろう? どの皇帝も成し得なかったことだ』

『…………』

『シャルレーヌが帝国にいる間はこれ以上領土を広げないと約束しよう。それはお前がシャルレーヌを引き止められたらの話だがな。すれば皇帝に反対していた者たちを安易に黙らせることもできるだろう?』


つまり皇帝になったばかりのヴィクトールのために実績をとのことなのだろう。
長年に渡り誰も成し遂げられなかったサンドラクト王国との和解。
もし罠などでなければ間違いなく求心力は高まるはずだ。


『何故、俺を選んだのですか?』


その言葉にサンドラクト国王は目を見開く。


『なんとなくに決まっている。ワシの勘だ!』

『はぁ……』

『ガハハッ、結構当たるんだぞ』


聞いた自分が馬鹿だったと思えるほど豪快な笑いだった。
しかし皇帝としてサンドラクト王国との同盟はおいしい話だ。
余計な争いも避けられる。面倒なことにはならないだろう。


『もし彼女が死んでも責任は取りませんよ』

『ハハッ、シャルレーヌは殺しても死なんよ。それよりもお前の周りでは大きな変化が起こる。翻弄されるかうまく使うかはお前次第だ』

『…………』

『ワシは一切責任はとらん!』


腕を組んでそう言いきったサンドラクト国王が嘘をついているとは思えなかった。
シャルレーヌを随分と過大評価しているように見えた。


『あとは好きにしていい。使えないと思ったら切り捨てろ』

『…………は?』

『あわよくば殺してほしい。殺せるならばな……』


彼のふざけた雰囲気が一気に真面目なものになる。
鋭い視線は恐ろしく、ヴィクトールを射抜いていた。
しかし自分の娘を殺せとはどういうことなのだろうか。


『……なぜ』 

『それが彼女の望みでもあるからだ』


サンドラクト国王が何を言っているのかヴィクトールには理解できなかった。
彼女とはシャルレーヌのことではなさそうだ。


『我々にもそれは不可能だった。もしシャルレーヌがお前に心を開くようなことがあれば……』


彼は悲しげに見えた。


『まぁ、とにかくシャルレーヌを頼む! 見目もよいし、茶目っ気もある。ただ少し……その、変わっているだけで……少しな……』


次第に言葉に詰まって汗ばんでいくサンドラクト国王を横目に、ヴィクトールは考えを巡らせていた。
その後もヴィクトールが微妙な表情をしていると、次第に国王は必死になっていく。


『お願い! ほんとお願いっ、一生のお願いだから!』

『…………』

『お願いだから娶ってぇ……』


サンドラクト国王の弱々しい声が聞こえた。
それにヴィクトールは気がつかないふりをするしかなかった。

その他にもサンドラクト国王といろいろと話をすることができた。
彼も歳のせいで落ち着いてきたと言って皮肉を込めて笑っていた。
というよりもヴィクトールの魔法を知ったのに対等に接してくれたことが嬉しかったのかもしれない。

最終的に承諾したのは案外、サンドラクト国王が人間らしく好ましく思ってしまったからだ。

感想 35

あなたにおすすめの小説

契約結婚なら「愛さない」なんて条件は曖昧すぎると思うの

七辻ゆゆ
ファンタジー
だからきちんと、お互い納得する契約をしました。完全別居、3年後に離縁、お金がもらえるのをとても楽しみにしていたのですが、愛人さんがやってきましたよ?

〈完結〉前世と今世、合わせて2度目の白い結婚ですもの。場馴れしておりますわ。

ごろごろみかん。
ファンタジー
「これは白い結婚だ」 夫となったばかりの彼がそう言った瞬間、私は前世の記憶を取り戻した──。 元華族の令嬢、高階花恋は前世で白い結婚を言い渡され、失意のうちに死んでしまった。それを、思い出したのだ。前世の記憶を持つ今のカレンは、強かだ。 "カーター家の出戻り娘カレンは、貴族でありながら離婚歴がある。よっぽど性格に難がある、厄介な女に違いない" 「……なーんて言われているのは知っているけど、もういいわ!だって、私のこれからの人生には関係ないもの」 白魔術師カレンとして、お仕事頑張って、愛猫とハッピーライフを楽しみます! ☆恋愛→ファンタジーに変更しました

「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった

歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。 だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」 追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。 一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。 誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。 「その言葉は、もう翻訳できません」

王太子妃に興味はないのに

ファンタジー
眉目秀麗で芸術的才能もある第一王子に比べ、内気で冴えない第二王子に嫁いだアイリス。周囲にはその立場を憐れまれ、第一王子妃には冷たく当たられる。しかし誰に何と言われようとも、アイリスには関係ない。アイリスのすべきことはただ一つ、第二王子を支えることだけ。 その結果誰もが羨む王太子妃という立場になろうとも、彼女は何も変わらない。王太子妃に興味はないのだ。アイリスが興味があるものは、ただ一つだけ。

どうぞお好きに

音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。 王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。

冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます

里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。 だが実は、誰にも言えない理由があり…。 ※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。 全28話で完結。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。

八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。 パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。 攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。 ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。 一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。 これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。 ※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。 ※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。 ※表紙はAIイラストを使用。