【短編集】

●やきいもほくほく●

文字の大きさ
60 / 84
"全く興味がない"それだけだった

しおりを挟む


「レンドルター伯爵、連絡もなしに申し訳ない」

「‥‥‥ようこそお越し下さいました。ランドリゲス公爵様、ソリッド様、ミケーレ様」


レンドルター伯爵と夫人は急いでおもてなしの準備をするように指示を出す。
とはいってもランドリゲス公爵が近々来る事が分かっていた為、大きな混乱はない。

ソフィーアの指示通りにサロンへと向かった。

慣れた様子でランドリゲス公爵がソファーに腰を掛ける。
ソリッドは心なしか申し訳なさそうにしている
そして問題のミケーレは不機嫌そうである。


「この度は愚息がソフィーアに大変な失礼をしたと伺って急いで謝罪に来たのだ」

「ああ‥あの件ですか」

「ソフィーアから詳しく伺っておりますわ」


レンドルター夫人がチラリとミケーレを見る。
笑顔を浮かべているものの、その目には怒りが滲む。
ミケーレは流石にまずいと思ったのか、サッと視線を逸らした。

ランドリゲス公爵の前に紅茶が置かれた。
部屋に響くのはカチャカチャと僅かに食器が擦れる音だけだ。

口元に手を置いたレンドルター伯爵は柔かに、けれど訴えかけるように言った。


「ですが‥‥その件は決着がついたのでは?」


勿論、納得していないからこそランドリゲス公爵がここに居る事など伯爵には分かっている。
チクリと失礼のない程度に攻撃をしなければ気が済まない。

ランドリゲス公爵は思わぬ反撃に目を細めながらも喉を鳴らす。


「ははっ‥まさか」

「‥‥」

「婚約者同士の"喧嘩"に親が口を出すべきか迷ったが、些かうちのミケーレがソフィーアを傷つけ過ぎたと聞いてね」

「婚約者同士の喧嘩ですか‥‥いい機会だから言わせていただきますが、うちの娘は随分とミケーレ様に苦しめられてきたようでして」

「‥‥なんだと!?俺は別にっ」

「ミケーレッ!!」

「っ」


反論しようとしたミケーレにすかさずソリッドが押さえる。


「今回の件では愛想がつきました。娘が不憫でなりませんわ」

「まぁまぁ、そう言わずに‥‥私とソリッドの顔に免じて許して頂けませんか?」


ランドリゲス公爵の圧力の掛かった言葉に、レンドルター伯爵と夫人の頬がピクリと動く。


「ランドリゲス公爵がそう仰ったとしても、ミケーレ様、御本人からのサインはもう頂いていますから」


そして早々に切り札ともいえる書類を出す。
ソフィーアがミケーレにサインさせたものだ。


「なに‥?見せてくれ」


ソリッドとランドリゲス公爵は書類を見て、目を見開いた。
ミケーレは書類の事などすっかり忘れていたのだろう。

「げっ‥」と言葉を漏らす。

そこにはミケーレの意思で婚約破棄をすると書き込まれている。


「しかしこれは正式な手続きではないだろう‥?」

「手続きではありませんが、ミケーレ様の意思が書かれた誓約書‥‥あとは我々がサインすれば済む話です」

「けれど些か強引ではありませんか?婚約は家同士の繋がりでもあるのですからなんの相談もなしに」

「こんなものは無効だろう?我々はサインする気はない。誓約書の破棄を要求しよう」

「「‥‥」」


すかさずソリッドとランドリゲス公爵からのフォローが入る。
"家同士"そう言われてしまえば、伯爵家としては何も言えなくなってしまう。

それこそ決定的な事がなければ‥。

しかしミケーレ本人の同意は得ている。
それによく読みもせずに決めつけるのは早計だ。
レンドルター伯爵は負けじと「紙をよく読んでください」そう言おうとした時だった。




「‥‥あまり、父や母を虐めないで下さいませ」

「「「!!」」」




サロンへの階段を降りてくるソフィーアは、固くまとめられていたミントグリーンの髪は緩く結われており、眼鏡を外されたソフィーアの金色の瞳が月のように細められる。


「ソ、フィーア‥?」


しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

真実の愛に祝福を

あんど もあ
ファンタジー
王太子が公爵令嬢と婚約破棄をした。その後、真実の愛の相手の男爵令嬢とめでたく婚約できたのだが、その先は……。

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

売られたケンカは高く買いましょう《完結》

アーエル
恋愛
オーラシア・ルーブンバッハ。 それが今の私の名前です。 半年後には結婚して、オーラシア・リッツンとなる予定……はありません。 ケンカを売ってきたあなたがたには徹底的に仕返しさせていただくだけです。 他社でも公開中 結構グロいであろう内容があります。 ご注意ください。 ☆構成 本章:9話 (うん、性格と口が悪い。けど理由あり) 番外編1:4話 (まあまあ残酷。一部救いあり) 番外編2:5話 (めっちゃ残酷。めっちゃ胸くそ悪い。作者救う気一切なし)

【完結】私が愛されるのを見ていなさい

芹澤紗凪
恋愛
虐げられた少女の、最も残酷で最も華麗な復讐劇。(全6話の予定) 公爵家で、天使の仮面を被った義理の妹、ララフィーナに全てを奪われたディディアラ。 絶望の淵で、彼女は一族に伝わる「血縁者の姿と入れ替わる」という特殊能力に目覚める。 ディディアラは、憎き義妹と入れ替わることを決意。 完璧な令嬢として振る舞いながら、自分を陥れた者たちを内側から崩壊させていく。  立場と顔が入れ替わった二人の少女が織りなす、壮絶なダークファンタジー。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

許すかどうかは、あなたたちが決めることじゃない。ましてや、わざとやったことをそう簡単に許すわけがないでしょう?

珠宮さくら
恋愛
婚約者を我がものにしようとした義妹と義母の策略によって、薬品で顔の半分が酷く爛れてしまったスクレピア。 それを知って見舞いに来るどころか、婚約を白紙にして義妹と婚約をかわした元婚約者と何もしてくれなかった父親、全員に復讐しようと心に誓う。 ※全3話。

幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。

灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。 曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。 婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。 前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

処理中です...