【短編集】

●やきいもほくほく●

文字の大きさ
61 / 84
"全く興味がない"それだけだった

しおりを挟む

ミケーレの目が大きく見開かれる。
そこには今までのソフィーアの姿が嘘のように輝く美女が立っていた。

薔薇のように華やかであり、宝石のように艶やか。
ミケーレは驚き、そして魅入られたようにソフィーアから目が離せないでいた。


ソフィーアはクスリと笑みを浮かべた。


「あら、辛気臭い顔をしている方がいると思いきや元婚約者のミケーレ様では?」

「ぁ‥」

「ランドリゲス公爵様、ソリッド様‥お待たせして申し訳ございません。準備に手間取ってしまいましたの」

「相変わらずだな、ソフィーア」

「‥‥ソフィーア、君は本当に美しい」

「恐れ入ります」


ランドリゲス公爵とソリッドの瞳と声には明らかに熱を孕んでいる。
それは誰が見ても分かる程に。

そんな2人を見て驚いていたミケーレはハッとして、すぐさまソフィーアに問いかける。


「――何故、俺に素顔を隠していたんだッ!?」

「‥‥」

「父上も兄様も知っていたのか‥?どうして俺には黙っていたんだッ!」


ミケーレが声を上げる。
それを聞いたランドリゲス公爵が静かに口を開いた。


「‥‥それは我々がソフィーアに頼んだのだ」

「は‥?」

「お前も分かるだろう?この美貌で外に出たらどうなるか‥‥間違いなくお前の手に負えまい」

「‥そ、んな」


ランドリゲス公爵がソフィーアに執着する理由。
それはソフィーアの祖母にあった。

祖母はそれはそれは美しい女性だった。
そして、とても珍しい魔法を使った。
男性を虜にしていたソフィーアの祖母は、ランドリゲス公爵世代にとっては憧れだったのかもしれない。

一度、彼女を目にしてしまえば虜になってしまう。

『ベルタのダイアモンド』『ベルタの月の魔女』

ソフィーアの祖母はそう呼ばれ、"傾国の美女"の名を欲しいままにしていた。

他国の王族からも結婚の申し込みが来ていた。

そしてレンドルター伯爵家に嫁いだことをキッカケに、あっさりと表舞台から姿を消した。
そしてレンドルター伯爵を生涯愛し抜いたことにより更に評判は上がり『ベルタのダイアモンド』として名を残すこととなった。

そんな祖母の美貌と魔法を全て受け継いだのがソフィーアだった。
ベルタのダイアモンドの"再来"。
ソフィーアの祖母を知る何人もの貴族達がソフィーアが幼い頃から婚約を申し込みに来た。

ずっとソフィーアの祖母に憧れていたランドリゲス公爵は、ソリッドとの婚約を直様打診して見事その権利を勝ち取った。

そしてソフィーアは誰の目にも留まらぬように、公爵家によって大切に大切に隠されてきたのだった。
そしてソリッドの独占欲は常軌を逸していた。

弟であるミケーレですら、ソフィーアと会ったことはなかった。


結婚までは外に出せないと、不自由な生活を強いられていたのだ。


だからミケーレとの婚約者として話が持ち上がった際、ランドリゲス公爵家から逃れたくも逃れられないレンドルター伯爵家とソフィーアはある条件を出した。

「私を外に出してください」と。

その条件を呑む代わりに公爵から出されたのは「その美貌をできる限り隠すこと」だった。

ソフィーアは喜んでその条件を呑み込んだ。

ソフィーアには念願の自由が与えられた。
ランドリゲス公爵とソリッドの隙をついて、逃げ道を模索できるようになったのだ。
父の仕事の手伝いという名目でソフィーアは動き回り策を練り、今日を迎えることができた。


ここからはソフィーアが逃げ切るか、ランドリゲス公爵とソリッドがソフィーアを囲みきるか。


―――答えは決まっている。


ランドリゲス公爵は間違いを犯した。
ミケーレをソフィーアの婚約者にしたことで、もう勝負はついている。


(勝ちが決まった勝負程、気楽なものはないわね)
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

真実の愛に祝福を

あんど もあ
ファンタジー
王太子が公爵令嬢と婚約破棄をした。その後、真実の愛の相手の男爵令嬢とめでたく婚約できたのだが、その先は……。

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

売られたケンカは高く買いましょう《完結》

アーエル
恋愛
オーラシア・ルーブンバッハ。 それが今の私の名前です。 半年後には結婚して、オーラシア・リッツンとなる予定……はありません。 ケンカを売ってきたあなたがたには徹底的に仕返しさせていただくだけです。 他社でも公開中 結構グロいであろう内容があります。 ご注意ください。 ☆構成 本章:9話 (うん、性格と口が悪い。けど理由あり) 番外編1:4話 (まあまあ残酷。一部救いあり) 番外編2:5話 (めっちゃ残酷。めっちゃ胸くそ悪い。作者救う気一切なし)

【完結】私が愛されるのを見ていなさい

芹澤紗凪
恋愛
虐げられた少女の、最も残酷で最も華麗な復讐劇。(全6話の予定) 公爵家で、天使の仮面を被った義理の妹、ララフィーナに全てを奪われたディディアラ。 絶望の淵で、彼女は一族に伝わる「血縁者の姿と入れ替わる」という特殊能力に目覚める。 ディディアラは、憎き義妹と入れ替わることを決意。 完璧な令嬢として振る舞いながら、自分を陥れた者たちを内側から崩壊させていく。  立場と顔が入れ替わった二人の少女が織りなす、壮絶なダークファンタジー。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

許すかどうかは、あなたたちが決めることじゃない。ましてや、わざとやったことをそう簡単に許すわけがないでしょう?

珠宮さくら
恋愛
婚約者を我がものにしようとした義妹と義母の策略によって、薬品で顔の半分が酷く爛れてしまったスクレピア。 それを知って見舞いに来るどころか、婚約を白紙にして義妹と婚約をかわした元婚約者と何もしてくれなかった父親、全員に復讐しようと心に誓う。 ※全3話。

幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。

灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。 曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。 婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。 前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

処理中です...