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四章 最強の皇帝
⑤①
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メイジーはこの国にも道のことを話すと言っていたことを思い出す。
『だから……道を繋ぐと言っているだろう?』
それがどういう意味なのか、メイジーにはよくわかっていなかった。
「見ていただいた方が早いかもしれませんね。では、行きましょうか」
「は、はい!」
メイジーはベルーガに促されるまま部屋の外に向かう。
真っ白な壁は角度によっては銀色に見える。
青い絨毯はガブリエーレの瞳の色を思い出す。
ベルーガはメイジーの前に。マオとイディネスはメイジーの後ろにいる。
護衛なのだろうが、彼らに挟まれて移動するのは何だか目立つ。
周囲の視線がグサグサとメイジーの背に刺さる。
(どこに移動するのかしら……)
メイジーが歩いていると、前から大勢の人たちを引き連れて歩く人物が見えた。
ベルーガたちは足を止めて頭を下げる。
ブルーのマントと白銀の生地の礼服。胸には豪華な刺繍、肩章のフリンジ。
細身の白いパンツに同色のブーツは彼の神々しい魅力を更に高貴に見えた。
そして首に広がる紋章はミステリアスだ。
こちらを見る宝石のような瞳と長いまつ毛。
彼に見つめられたら女性は彼に惚れてしまうのではないだろうか。
(黙っていれば本当に神様のようね……)
布一枚を巻いているだけで神と勘違いされる容姿なのだ。
服が変われば、こんなにも違って見えるとは驚きである。
ガブリエーレはメイジーを視界に入れた瞬間、先ほどの不機嫌そうな表情が嘘のように唇を歪めた。
いつも通りのガブリエーレを見て、ベルーガたちは顎が外れてしまいそうなほどに驚いているではないか。
『こう見ると王女に見えなくもないな』
メイジーは何故かサイズがぴったりなドレスを着ている。
元々、天使のように可愛らしいメイジー。
侍女に磨かれてその美貌は増していた。
薄紫のドレスは何枚も透け感がある生地が重なっている。
上にいくにつれて青みが増してグラデーションになっていた。
デコルテと肩が出ており二の腕あたりで生地が止まっている。
胸元にはキラキラと光りを帯びていて、まるで人魚姫のようだ。
メイジーの魅力を引き立てて儚い印象を与える。
「わたしは王女だって言っているでしょう? 元ですけど……」
『ははっ』
メイジーがそう言うとガブリエーレは機嫌よく笑っている。
後ろから複数の引き攣った声が聞こえたが、気にすることなくメイジーが不満げに頬を膨らませた。
ガブリエーレは何を思ったのか、後ろに連なっている中にいる一人に声をかける。
『メイジーに似合うドレスを二十着ほど仕立てろ』
「は…………?」
メイジーはガブリエーレが何を考えているのかわからずに、顔を歪めながら彼を見ていた。
彼がこんなことを言うなんて何か裏があるに違いない。
こんなふうに手のひらを変えたことが不思議で仕方ないのだ。
一カ月近く一緒に過ごした濃密な時間はメイジーに警鐘を鳴らす。
こちらに腕を伸ばして髪を撫でたガブリエーレを見て心臓がドクンと音を立てた。
『惚れたか?』
「……惚れないです」
『ドレスは嫌いか?』
「嫌いでも好きでもないですけど……一体、何を考えているのですか?」
メイジーの頬に触れたガブリエーレは先ほどとは違って、真剣な表情に見えた。
グッと顔を近づけてきたガブリエーレに驚いてメイジーは身を引いた。
「な、なに……!?」
『この肌が白かったら、もっとドレスが映えただろうな』
「……なっ」
メイジーは言葉が出ずに口ごもっていると、ガブリエーレは胸元に手を当てる。
チリッとした痛みと共にメイジーは体を引いて、反射的に腕を振り上げた。
「何すんのよっ!」
「おい……ここは帝国だぞ?」
「ぐっ……!」
『だから……道を繋ぐと言っているだろう?』
それがどういう意味なのか、メイジーにはよくわかっていなかった。
「見ていただいた方が早いかもしれませんね。では、行きましょうか」
「は、はい!」
メイジーはベルーガに促されるまま部屋の外に向かう。
真っ白な壁は角度によっては銀色に見える。
青い絨毯はガブリエーレの瞳の色を思い出す。
ベルーガはメイジーの前に。マオとイディネスはメイジーの後ろにいる。
護衛なのだろうが、彼らに挟まれて移動するのは何だか目立つ。
周囲の視線がグサグサとメイジーの背に刺さる。
(どこに移動するのかしら……)
メイジーが歩いていると、前から大勢の人たちを引き連れて歩く人物が見えた。
ベルーガたちは足を止めて頭を下げる。
ブルーのマントと白銀の生地の礼服。胸には豪華な刺繍、肩章のフリンジ。
細身の白いパンツに同色のブーツは彼の神々しい魅力を更に高貴に見えた。
そして首に広がる紋章はミステリアスだ。
こちらを見る宝石のような瞳と長いまつ毛。
彼に見つめられたら女性は彼に惚れてしまうのではないだろうか。
(黙っていれば本当に神様のようね……)
布一枚を巻いているだけで神と勘違いされる容姿なのだ。
服が変われば、こんなにも違って見えるとは驚きである。
ガブリエーレはメイジーを視界に入れた瞬間、先ほどの不機嫌そうな表情が嘘のように唇を歪めた。
いつも通りのガブリエーレを見て、ベルーガたちは顎が外れてしまいそうなほどに驚いているではないか。
『こう見ると王女に見えなくもないな』
メイジーは何故かサイズがぴったりなドレスを着ている。
元々、天使のように可愛らしいメイジー。
侍女に磨かれてその美貌は増していた。
薄紫のドレスは何枚も透け感がある生地が重なっている。
上にいくにつれて青みが増してグラデーションになっていた。
デコルテと肩が出ており二の腕あたりで生地が止まっている。
胸元にはキラキラと光りを帯びていて、まるで人魚姫のようだ。
メイジーの魅力を引き立てて儚い印象を与える。
「わたしは王女だって言っているでしょう? 元ですけど……」
『ははっ』
メイジーがそう言うとガブリエーレは機嫌よく笑っている。
後ろから複数の引き攣った声が聞こえたが、気にすることなくメイジーが不満げに頬を膨らませた。
ガブリエーレは何を思ったのか、後ろに連なっている中にいる一人に声をかける。
『メイジーに似合うドレスを二十着ほど仕立てろ』
「は…………?」
メイジーはガブリエーレが何を考えているのかわからずに、顔を歪めながら彼を見ていた。
彼がこんなことを言うなんて何か裏があるに違いない。
こんなふうに手のひらを変えたことが不思議で仕方ないのだ。
一カ月近く一緒に過ごした濃密な時間はメイジーに警鐘を鳴らす。
こちらに腕を伸ばして髪を撫でたガブリエーレを見て心臓がドクンと音を立てた。
『惚れたか?』
「……惚れないです」
『ドレスは嫌いか?』
「嫌いでも好きでもないですけど……一体、何を考えているのですか?」
メイジーの頬に触れたガブリエーレは先ほどとは違って、真剣な表情に見えた。
グッと顔を近づけてきたガブリエーレに驚いてメイジーは身を引いた。
「な、なに……!?」
『この肌が白かったら、もっとドレスが映えただろうな』
「……なっ」
メイジーは言葉が出ずに口ごもっていると、ガブリエーレは胸元に手を当てる。
チリッとした痛みと共にメイジーは体を引いて、反射的に腕を振り上げた。
「何すんのよっ!」
「おい……ここは帝国だぞ?」
「ぐっ……!」
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