【完結】島流しされた役立たず王女ですがサバイバルしている間に最強皇帝に溺愛されてました!

●やきいもほくほく●

文字の大きさ
74 / 78
五章 復讐の結末は

⑦④

しおりを挟む

(この国にこんな予算はないはずだけど……)

内情を知っているからこそ、この景色に違和感を覚えた。

主役のジャシンスと王配のディディエの凄まじい装飾品の数に度肝を抜かれる。
真っ白なウェディングドレスなど霞んでしまいそうだ。
体全体を覆う宝石の数々は豪華を通り過ぎて下品に見える。

ディディエは恥ずかしさに耐えているのか顔を赤くしているが、ジャシンスは自慢げな表情だ。
招待客たちからも戸惑いの声が漏れている。

お祝いの挨拶をとジャシンスの前へと進んでいく招待客たち。
しかし主役を差し置いて注目を奪っている場所がある。
それがガブリエーレとメイジーだった。

二人の周りにはありえないほどの人だかりができていた。
メイジーは幼い頃に少ししかパーティーに出たことがないため緊張していた。

(こんなに目立って大丈夫なのかしら……)

メイジーは何を問われても笑顔を張り付けたまま何も答えない。
何故なら会場に入る前、ガブリエーレに何も言うなと言われていたからだ。
彼も一切、口を開かないままだ。

(ガブリエーレのことだから何か考えがあるんでしょうね)

いつも声を発していないのだが、ガブリエーレは何もしていなければ彫刻のようだ。
周囲からの質問責めは続いているが、彼はじっと何かのタイミングを待っているようだ。
会場の注目はすべてこちらにあった。

すると遠くから怒りを孕んだ声が聞こえてくる。


「ちょっと主役はこのわたくしなのよ……!」

「待てっ、ジャシンスッ」

「どうしてわたくしの元に挨拶に来ないのよ。おかしいでしょう!?」

「おい! ジャシンス、いい加減にしろよっ」


ディディエと言い争う声はこちらにまで筒抜けだ。
シールカイズ王国の人たちは諦めた様子で顔を背けてしまっている。
メイジーはこの状態を見ただけで、この国が今どんな状況なのかわかるような気がした。

(こんな短期間でここまで崩れるなんて……もうめちゃくちゃじゃない)

ジャシンスとディディエの後ろには、男性を引き連れている元王妃の姿もある。
雰囲気は随分と妖艶になり、娼婦のように様変わりしていた。
露出度の高いドレスと宝石。ジャシンスと二人合わせると欲の化身に思えた。

メイジーはこんな二人の姿を久しぶりに見て思うことがあった。

(わたし、こんな奴らをずっと恐れて隠れていたの?)

こうして改めて対峙すると、なんだか馬鹿馬鹿しいとすら思えてくる。
島で暮らして、帝国の暮らしを経験。
更に前世の記憶を取り戻したことにより価値観が大きく変わったのかもしれない。

メイジーは大きなため息を吐き出した。
そして彼女たちをじっと見つめる。

まずメイジーに気がついたのは元王妃だった。
なんで、と声は出ていないが唇が開く。
島流しにしたはずのメイジーがここにいるのが不思議で仕方ないのだろう。
それにこんなに美しいドレスを着て、謎のパートナーと共にいたとなれば気になるに違いない。

メイジーは勝ち誇ったようにフッと口角を上げる。
すると元王妃は目を見開いた後に顔を真っ赤にしていた。
メイジーは彼女たちに興味がないと言いたげに視線を逸らす。

すると、彼女はジャシンスにメイジーのことを耳打ちする。
ジャシンスもメイジーに気がついたのだろう。


「あら……よく見たら我が国の大罪人じゃない! わたくしの国に何の用かしら」

「…………」


メイジーはジャシンスの言葉を無視していた。
それだけで彼女は簡単に激昂した。


「随分とお高くとまっているじゃない……! 今すぐにわたくしの国から出ていきなさいよ」


ジャシンスがメイジーに手を伸ばした瞬間だった。
バキッと重たい音と共に彼女の爪が折れてしまう。
メイジーとジャシンスの間にある見えない壁に阻まれたらしい。


「キャアアアッ、わたくしの爪がぁ……!」


ジャシンスはフラリと後ろによろめいてしまった。
ディディエがなんとか彼女を支えた。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

夢でも良いから理想の王子様に会いたかったんです

さこの
恋愛
あれ?ここは? な、なんだか見覚えのある場所なんだけど…… でもどうして? これってよくある?転生ってやつ?? いや夢か??そもそも転生ってよくあることなの? あ~ハイハイ転生ね。ってだったらラッキーかも? だってここは!ここは!! 何処???? 私死んじゃったの?  前世ではこのかた某アイドルグループの推しのことを王子様なんて呼んでいた リアル王子様いるなら、まじ会いたい。ご尊顔遠くからでも構わないので一度いいから見てみたい! ーーーーーーーーーーーーーーーー 前世の王子様?とリアル王子様に憧れる中身はアラサーの愛され令嬢のお話です。 中身アラサーの脳内独り言が多くなります

婚約を破棄され辺境に追いやられたけれど、思っていたより快適です!

さこの
恋愛
 婚約者の第五王子フランツ殿下には好きな令嬢が出来たみたい。その令嬢とは男爵家の養女で親戚筋にあたり現在私のうちに住んでいる。  婚約者の私が邪魔になり、身分剥奪そして追放される事になる。陛下や両親が留守の間に王都から追放され、辺境の町へと行く事になった。  100キロ以内近寄るな。100キロといえばクレマン? そこに第三王子フェリクス殿下が来て“グレマン”へ行くようにと言う。クレマンと“グレマン”だと方向は真逆です。  追放と言われましたので、屋敷に帰り準備をします。フランツ殿下が王族として下した命令は自分勝手なものですから、陛下達が帰って来たらどうなるでしょう?

ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。 ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。 ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。 竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。 *魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。 *お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。 *本編は完結しています。  番外編は不定期になります。  次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。

『追放令嬢は薬草(ハーブ)に夢中 ~前世の知識でポーションを作っていたら、聖女様より崇められ、私を捨てた王太子が泣きついてきました~』

とびぃ
ファンタジー
追放悪役令嬢の薬学スローライフ ~断罪されたら、そこは未知の薬草宝庫(ランクS)でした。知識チートでポーション作ってたら、王都のパンデミックを救う羽目に~ -第二部(11章~20章)追加しました- 【あらすじ】 「貴様を追放する! 魔物の巣窟『霧深き森』で、朽ち果てるがいい!」 王太子の婚約者ソフィアは、卒業パーティーで断罪された。 しかし、その顔に絶望はなかった。なぜなら、その「断罪劇」こそが、彼女の完璧な計画だったからだ。 彼女の魂は、前世で薬学研究に没頭し過労死した、日本の研究者。 王妃の座も権力闘争も、彼女には退屈な枷でしかない。 彼女が求めたのはただ一つ——誰にも邪魔されず、未知の植物を研究できる「アトリエ」だった。 追放先『霧深き森』は「死の土地」。 だが、チート能力【植物図鑑インターフェイス】を持つソフィアにとって、そこは未知の薬草が群生する、最高の「研究フィールド(ランクS)」だった! 石造りの廃屋を「アトリエ」に改造し、ガラクタから蒸留器を自作。村人を救い、薬師様と慕われ、理想のスローライフ(研究生活)が始まる。 だが、その平穏は長く続かない。 王都では、王宮薬師長の陰謀により、聖女の奇跡すら効かないパンデミック『紫死病』が発生していた。 ソフィアが開発した『特製回復ポーション』の噂が王都に届くとき、彼女の「研究成果」を巡る、新たな戦いが幕を開ける——。 【主な登場人物】 ソフィア・フォン・クライネルト 本作の主人公。元・侯爵令嬢。魂は日本の薬学研究者。 合理的かつ冷徹な思考で、スローライフ(研究)を妨げる障害を「薬学」で排除する。未知の薬草の解析が至上の喜び。 ギルバート・ヴァイス 王宮魔術師団・研究室所属の魔術師。 ソフィアの「科学(薬学)」に魅了され、助手(兼・共同研究者)としてアトリエに入り浸る知的な理解者。 アルベルト王太子 ソフィアの元婚約者。愚かな「正義」でソフィアを追放した張本人。王都の危機に際し、薬を強奪しに来るが……。 リリア 無力な「聖女」。アルベルトに庇護されるが、本物の災厄の前では無力な「駒」。 ロイド・バルトロメウス 『天秤と剣(スケイル&ソード)商会』の会頭。ソフィアに命を救われ、彼女の「薬学」の価値を見抜くビジネスパートナー。 【読みどころ】 「悪役令嬢追放」から始まる、痛快な「ざまぁ」展開! そして、知識チートを駆使した本格的な「薬学(ものづくり)」と、理想の「アトリエ」開拓。 科学と魔法が融合し、パンデミックというシリアスな災厄に立ち向かう、読み応え抜群の薬学ファンタジーをお楽しみください。

私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした

さこの
恋愛
 幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。  誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。  数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。  お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。  片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。  お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……  っと言った感じのストーリーです。

侯爵令嬢リリアンは(自称)悪役令嬢である事に気付いていないw

さこの
恋愛
「喜べリリアン! 第一王子の婚約者候補におまえが挙がったぞ!」  ある日お兄様とサロンでお茶をしていたらお父様が突撃して来た。 「良かったな! お前はフレデリック殿下のことを慕っていただろう?」  いえ! 慕っていません!  このままでは父親と意見の相違があるまま婚約者にされてしまう。  どうしようと考えて出した答えが【悪役令嬢に私はなる!】だった。  しかしリリアンは【悪役令嬢】と言う存在の解釈の仕方が……  *設定は緩いです  

罰として醜い辺境伯との婚約を命じられましたが、むしろ望むところです! ~私が聖女と同じ力があるからと復縁を迫っても、もう遅い~

上下左右
恋愛
「貴様のような疫病神との婚約は破棄させてもらう!」  触れた魔道具を壊す体質のせいで、三度の婚約破棄を経験した公爵令嬢エリス。家族からも見限られ、罰として鬼将軍クラウス辺境伯への嫁入りを命じられてしまう。  しかしエリスは周囲の評価など意にも介さない。 「顔なんて目と鼻と口がついていれば十分」だと縁談を受け入れる。  だが実際に嫁いでみると、鬼将軍の顔は認識阻害の魔術によって醜くなっていただけで、魔術無力化の特性を持つエリスは、彼が本当は美しい青年だと見抜いていた。  一方、エリスの特異な体質に、元婚約者の伯爵が気づく。それは伝説の聖女と同じ力で、領地の繁栄を約束するものだった。  伯爵は自分から婚約を破棄したにも関わらず、その決定を覆すために復縁するための画策を始めるのだが・・・後悔してももう遅いと、ざまぁな展開に発展していくのだった  本作は不遇だった令嬢が、最恐将軍に溺愛されて、幸せになるまでのハッピーエンドの物語である ※※小説家になろうでも連載中※※

【完結】公爵家のメイドたる者、炊事、洗濯、剣に魔法に結界術も完璧でなくてどうします?〜聖女様、あなたに追放されたおかげで私は幸せになれました

冬月光輝
恋愛
ボルメルン王国の聖女、クラリス・マーティラスは王家の血を引く大貴族の令嬢であり、才能と美貌を兼ね備えた完璧な聖女だと国民から絶大な支持を受けていた。 代々聖女の家系であるマーティラス家に仕えているネルシュタイン家に生まれたエミリアは、大聖女お付きのメイドに相応しい人間になるために英才教育を施されており、クラリスの側近になる。 クラリスは能力はあるが、傍若無人の上にサボり癖のあり、すぐに癇癪を起こす手の付けられない性格だった。 それでも、エミリアは家を守るために懸命に彼女に尽くし努力する。クラリスがサボった時のフォローとして聖女しか使えないはずの結界術を独学でマスターするほどに。 そんな扱いを受けていたエミリアは偶然、落馬して大怪我を負っていたこの国の第四王子であるニックを助けたことがきっかけで、彼と婚約することとなる。 幸せを掴んだ彼女だが、理不尽の化身であるクラリスは身勝手な理由でエミリアをクビにした。 さらに彼女はクラリスによって第四王子を助けたのは自作自演だとあらぬ罪をでっち上げられ、家を潰されるかそれを飲み込むかの二択を迫られ、冤罪を被り国家追放に処される。 絶望して隣国に流れた彼女はまだ気付いていなかった、いつの間にかクラリスを遥かに超えるほどハイスペックになっていた自分に。 そして、彼女こそ国を守る要になっていたことに……。 エミリアが隣国で力を認められ巫女になった頃、ボルメルン王国はわがまま放題しているクラリスに反発する動きが見られるようになっていた――。

処理中です...