吸血姫は王子様の血が欲しい

皐月もも

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前編

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 カーヤ・シュナイダーは吸血鬼一族の娘である。もっと言えば、吸血鬼の中でも最弱と言われる蚊族の姫だ。
 彼女の住むヴァンリッヒ王国は、広大な海に浮かぶとある島に存在する。
 人間たちが文明を築く大陸から離れた島は、常に濃い霧に覆われて不気味だ。その島を開拓しようと探索へ赴いた者が帰ってきたことは一度もない。
 そのうち呪われた島として噂が広まり、人間たちは近づかなくなった。
 彼らは知らないが、島には魔女や人狼、そして吸血鬼といった人ならざる者が住んでいる。そんなヴァンリッヒ王国を治めるのが吸血鬼の中でも完全なヒト型へ進化したヒト族であり、現在の第一王子イザーク・キューネルトが最強と謳われていた。
 蚊族は自分たちの生命維持研究のため、彼の血を欲していた。そのため、蚊族の長であり研究所の主任でもあるカーヤの父は、娘に彼の血を持ち帰るように言い含めたのだが……

「こんなに震えて……よくここまで来たな」
「……っ」

 王子に見つかってしまった時点で、カーヤの任務は失敗である。彼の血を持ち帰るどころか、自身の命さえ危うい。
 震えの止まらないカーヤの身体はイザークに組み敷かれ、身動きが取れない。
 恐怖に慄く彼女を満足げに眺める王子の灰色の瞳には、妖しい光が見え隠れしているように思えた。
 怒気や殺気とは違うその視線に、カーヤはごくりと唾を飲み込んだ。
 男性らしい鍛え上げられた身体の影にすっぽりと覆われて、まさに蚊のように握り潰されてもおかしくない。遠くから見ていても怜悧な表情と王族の威厳に畏れを抱くほどだったのに、こんな近い距離で対峙することになるとは……

「どうした? 大胆にも俺の部屋に直接乗り込んできた割には、威勢がないな。俺を殺そうと襲ってくる奴らはもっと抵抗するぞ?」
「こ、殺すなんて……!」

 滅相もない。
 カーヤが慌てて首を横に振ると、イザークはくつくつと笑った。

「そうだろうな。俺の血が欲しかったのだろう? カーヤ」
「わ、私の名前……」

 王子が蚊族の娘の名を知っていることに驚き、カーヤは目を見開く。
 すると、イザークは目を細めて彼女の頬に大きな手を添えた。親指の先がカーヤの目元をそっとなぞる。

「城に招かれるたびに俺に熱い視線を送っている娘がいてな……」

 そう言われて、ビクッと肩が跳ねてしまう。
 ヴァンリッヒ王国で開かれるパーティに、カーヤは何度か来たことがある。いつもイザークの血を持ち帰るように言われていたが、実行できずにいたのだ。
 吸血鬼最強の王子に、自分のような吸血鬼最弱の小娘が太刀打ちできるはずがない。

「毎回、誰よりも際どいドレスを着ているくせに、壁の花に徹している蚊族の娘だ。カーヤ・シュナイダー」

 父は女の武器を使うのが有効だと考えていたらしく、パーティに参加する際には必ず露出度の高いドレスを着せられた。しかし、恋愛経験に乏しいカーヤに色仕掛けなどできるはずがない。
 そもそも彼の周りにはいつだって妖艶な女性たちが集まっていて、カーヤが近づく隙なんてなかった。
 当然のことながら力では到底敵わないし、唯一彼女でも王子に近づくことのできる方法が、蚊の姿でこっそり吸血するくらいだったのだ。
 それすらも失敗に終わってしまったわけだが……

「立場上狙われることは多いが、一向に襲われないので気になって調べさせてもらった。待ちくたびれて、今夜は部屋の扉も窓もすべて開け、無防備に寝ていたわけだ。おかげでようやくお前を捕まえられた」
「……!」

 イザークの手のひらで踊らされていたことにようやく気付き、カーヤは絶句する。

「ところが、ついに接触してきたと思ったら、こんなに怯えている。……まぁ、こういうのも悪くないな。煽られる」

 フッと笑ったイザークの表情は色っぽく、カーヤの背にぞくりと痺れのような感覚が走った。

「カーヤ……俺の部屋までやってきたその勇気を買って、褒美をやろう」
「え――ッ!? やっ、な、何を、あっ!」

 ふわりと首筋に触れたのは、見た目よりも柔らかな銀色の髪とぬるりと湿った何か。
 れろっと鎖骨から耳元までを舐められて、ようやくそれが彼の舌だと理解する。

「や……やめて、くださ……んっ」

 フッと耳に直接吐息を吹き込まれ、カーヤは首を竦めた。

「俺の血が欲しいのだろう? ならば――」
「きゃっ」

 グイっと胸元の布を引き下ろされ、まろびでた膨らみに大きな手が触れる。

「このいやらしい身体に、俺の子種を注いでやる」
「あ、や……ン、んんっ」

 抵抗しようとした手は簡単に払いのけられ、唇を塞がれて言葉も呑み込まれてしまった。
 乳房をゆったりと揉みながら、イザークはカーヤの口内を味わう。口腔を我が物顔で蹂躙する舌から逃れようと顔を背けたいのに、彼の手が後頭部に回ってそれを許してくれない。
 両手で胸板を押し返そうとしても大きな身体はビクともせず、それどころかイザークは身体を両足の間にねじ込んで、カーヤの膝を大きく開いた。
 足の付け根に押し付けられる熱量は、布越しでもしっかりと感じられる。
 経験がなくとも、それが何なのかくらいはわかった。

「んっ、ふ……んう、ン、んん!」

 イザークは片手で器用に彼女のドレスを脱がせていく。
 元々肩がざっくり開いたデザインだ。簡単にずり下がって腹に巻き付くだけの布となってしまう。シースルーのスカートも捲り上げられ、足も露わになった。
 重なる唇は熱く、くちゅくちゅと唾液の混ざり合う音がいやらしく響く。
 呼吸もままならないほど濃厚な口付けに、カーヤの頭は次第にぼんやりとしていった。そうして彼女の抵抗が弱まったのを見計らって、イザークは唇を離す。

「真っ白な肌だな……」
「あ――」

 イザークが唾液に塗れた唇をぺろりと舐めつつ、両手でカーヤの乳房に触れる。鎖骨や肩を一撫でし、膨らみを救い上げるように揉んだ後、くびれをなぞって下腹部でぴたりと止まった。
 そこでくしゃくしゃになっているドレスを下着とともに足から引き抜くと、自身の衣服も脱ぎ捨てて生まれたままの姿になる。

「や、ま、待って……」
「その願いは聞けないな。最初に襲ってきたのはお前のほうだ。観念しろ。望み通り、俺の血が手に入るぞ」
「そ、そういうことでは――あぁっ」

 膨らみの先端に吸い付かれ、カーヤは背を仰け反らせた。
 イザークの口内で硬くなっていく蕾を、彼は舌で突いて攻め立てる。

「あっ、ん、ああ……」

 舌の表と裏を巧みに使って舐めまわされ、さらに甘く歯を立てられるとぞくぞくとした快感が全身に駆け巡った。
 一体何がどうなってしまったのか。
 確かにカーヤはイザークの血が欲しかった。それが、どうして彼に襲われる事態に……

「はぁ、あぁん、あっ、あ……」

 片方の膨らみを揉みしだきつつ、もう片方を口で愛撫され、カーヤは初めての刺激に喘いだ。触れられているのは胸だけなのに、下腹部が疼いて仕方ない。
 足を擦り合わせようとしても、イザークの身体が間に入り込んでいて叶わない。しかし、カーヤの膝に挟まれている王子には、彼女の欲しているものが理解できたようだった。
 イザークがカーヤの膝を押し開く。

「腰を揺らして……そんなに俺が欲しいか?」
「ち、違――ひゃ、んあぁ、やぁ……っ!」

 そのまま秘所に顔を埋められ、カーヤは悲鳴にも似た声をあげた。
 自分でも見たことのない場所に、王子が口をつけている。さらに躊躇なく舐めるものだから、羞恥で身体が一気に熱くなった。

「あっ、あ、ダメ! そんなところ、ひゃう、舐め……ッ、んあっ」

 足をバタつかせるのも構わず、イザークは割れ目に沿って舌を上下させる。

「ここはダメだと言っていないぞ? ヒクついて……蜜を垂らしている」

 舌全体を使って秘所をなぞり、ちゅっと音を立てながら花びらの周りの柔肌を啄まれる。
 さらに舌先でちろちろと割れ目をなぞられ、膨らんだ秘芽を突かれた。

「あぁん、あ、はぅ、ああ――」

 真っ赤に腫れた秘芽を舐められて腰を浮かせたカーヤの反応に、イザークがフッと笑ったのがわかる。彼の吐息が秘所にかかったからだ。

「ここが気持ちいいだろう?」
「あっ、ダメ、そこっ、あぁ、あ――」

 愛液と唾液で滑りの良くなったそこを、イザークが指先で突く。ぬるぬると擦られ、カーヤは身を捩って悶えた。
 目の前でチカチカと火花が散って、何か得体の知れないものがせり上がってくる。

「や、いやっ、あっ、こ、怖いのっ、やめて、や……」

 経験したことのない感覚に恐怖を覚え、カーヤは涙を流して懇願するが、イザークは愛撫をやめようとはしない。
 それどころか、指先の動きが速くなって、一層カーヤを攻め立てた。

「大丈夫だ……一度イっておけ。そのまま、快感に身体を委ねろ」

 激しく秘所を弄る指先とは対照的に、イザークの声色は優しい。
 カーヤが潤んだ視界になんとか彼を映すと、イザークは穏やかな表情で彼女をじっと見つめていた。
 いつも遠くから眺めていた彼は無表情でいることが多く、怜悧な印象だったのに……その慈しみさえ感じられる笑みに、カーヤの胸が高鳴る。

「はっ、ぁ、あああ――ッ!」

 それとほぼ同時に、カーヤは押し寄せてきた高波にさらわれた。
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