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1.出会い
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「こんにちは、オルクスさん。ゴブリンの魔石五つですね。……はい、ではこちらが報酬になります。ご確認ください」
俺は銀貨三枚を受けとると大切にしまう。
飯を食べ宿代を払えばほとんどなくなってしまう程度の金だが、俺にとっては重要な生命線だ。
俺が冒険者になって三ヶ月。
予想していた通りと言えばそれまでだが、やはり俺の冒険者としての才能はそれほど高くなさそうだった。
極端に身体が弱いだとかそういったことはないが、優れた体躯をしているわけでもない。
基本的に荒事を生業としている冒険者だ。
熊のような大男どもがゴロゴロしているのである。
平凡な俺がその中に入れば、必然的に実力は平均以下となるわけだ。
ゴブリンといえば、魔物の中でも最弱と名高い存在だ。
新人だってゴブリン五体程度なら初日に余裕で討伐するだろう。
それが俺の場合、初日はゴブリン一体相手に死闘を演じ、結局倒せず逃げて終わった。
それでもくじけずコツコツ挑み続け、三ヶ月してようやく新人のスタートラインに並ぶことができた。
正直、冒険者なんて俺には向いていないと思う。
しかし、孤児院出身の俺にまともな働き口などあるはずもなく、生きていくには冒険者になるしか道はなかったのだ。
「はあ~、飯食って寝よ」
冒険者ギルドから立ち去ろうとしたときだった。
どちらが悪いかといわれれば、どちらも悪かったのだと思う。
俺もボーッとしていたし、相手の男も仲間と話ながら余所見をしていた。
したがって、肩がぶつかってしまったのも運が悪かっただけだ。
「すみません」
俺は軽く頭を下げ距離をとる。
ここでは、俺はまだまだ新米であり、相手のことはよく知らないが、確実に先輩だろう。
どちらが悪いかとかではなく、頭を下げるのが平和に生きるための術だと孤児院で育った俺は理解していた。
しかし、その処世術も万能ではないらしい。
「ってぇな、おい!」
男がいきなり胸ぐらを掴んできた。
「人にぶつかっといてなに帰ろうとしてんだ!?」
「えっと……」
男の顔をみると随分と赤らんでいる。
それに顔にかかる息も酒臭い。
(酔っ払いかよ、めんどくせぇな……)
そうは思うが、相手は片手で俺を持ち上げるようなやつだ。
されるがままになって足をぶらぶらさせている俺が、喧嘩したところで勝てるとは思えない。
「すみません、次からは気をつけます」
どうにか下手に出てやり過ごそうと試みる。
だが、酔っ払いにそんなものは関係ないらしい。
「お前、俺のことをなめてやがんな!」
「いや、そんなことは……」
「うっせえ! 馬鹿にしたような顔をしやがって!」
断じてそんな顔はしていない。
もししているとするならば生まれつきだ。
俺は周囲に視線を向けるが、助けてくれそうな人はどこにもいなかった。
男の仲間や他の冒険者たちは面白いものが始まったとニヤニヤ見ているだけだし、受付のギルド職員はそんなの日常茶飯事とばかりに視線すら向けずに仕事に精を出している。
(明日に響くような怪我をしなきゃいいな……)
既に諦めモードの俺は、殴られる覚悟を決めていた。
拳を固めた男の腕が振り上げられる。
しかし、その拳が俺を捉えることはなかった。
「邪魔なのだけれど。どいてくれないかしら?」
一人の女の声がした。
その声のほうへと首を向けた途端、全身から冷や汗が噴き出した。
黄金の髪を伸ばし、その間から笹穂耳が覗いている。
つり目がちなエメラルドの瞳に、作り物のように整った顔。
エルフだ。
この女は絶対的強者だと、一目見ただけで理解した。
早く逃げろと本能が訴える。
そしてそう思ったのは俺だけではないらしい。
胸ぐらの手が離され、バランスを崩した俺はその場に尻餅をついた。
見ると、先程まで赤らんでいた男の顔は、いつの間にか真っ青になっていた。
あれだけ横柄だった男が、この女を前にして恐怖しているのだ。
「聞いているかしら? そこを通りたいんだけど」
俺と男はどちらともいわず後退った。
女はというと、俺達の間にできた空間を悠然と通り抜けて受付へと向かっていった。
「おい見たか? あれがリーゼだ」
「少し前に来たとかいう新人か? 初めて見たが、確かにあれはやベーな」
ひそひそと話す冒険者たちの会話に耳をすませる。
どうやら、あのエルフの女は俺と同じ新人冒険者であり、名前をリーゼというらしい。
そして同じ新人でありながら俺とは違い、一目置かれているようだ。
それはそうだろう。
こんな化け物みたいな存在感を放っている奴、無視しろと言われたって無理だ。
ふと視線を感じた。
そこでようやく自分が床に尻餅をついたままだったことを思い出す。
恥ずかしくなった俺は急いでギルドを飛び出した。
俺は銀貨三枚を受けとると大切にしまう。
飯を食べ宿代を払えばほとんどなくなってしまう程度の金だが、俺にとっては重要な生命線だ。
俺が冒険者になって三ヶ月。
予想していた通りと言えばそれまでだが、やはり俺の冒険者としての才能はそれほど高くなさそうだった。
極端に身体が弱いだとかそういったことはないが、優れた体躯をしているわけでもない。
基本的に荒事を生業としている冒険者だ。
熊のような大男どもがゴロゴロしているのである。
平凡な俺がその中に入れば、必然的に実力は平均以下となるわけだ。
ゴブリンといえば、魔物の中でも最弱と名高い存在だ。
新人だってゴブリン五体程度なら初日に余裕で討伐するだろう。
それが俺の場合、初日はゴブリン一体相手に死闘を演じ、結局倒せず逃げて終わった。
それでもくじけずコツコツ挑み続け、三ヶ月してようやく新人のスタートラインに並ぶことができた。
正直、冒険者なんて俺には向いていないと思う。
しかし、孤児院出身の俺にまともな働き口などあるはずもなく、生きていくには冒険者になるしか道はなかったのだ。
「はあ~、飯食って寝よ」
冒険者ギルドから立ち去ろうとしたときだった。
どちらが悪いかといわれれば、どちらも悪かったのだと思う。
俺もボーッとしていたし、相手の男も仲間と話ながら余所見をしていた。
したがって、肩がぶつかってしまったのも運が悪かっただけだ。
「すみません」
俺は軽く頭を下げ距離をとる。
ここでは、俺はまだまだ新米であり、相手のことはよく知らないが、確実に先輩だろう。
どちらが悪いかとかではなく、頭を下げるのが平和に生きるための術だと孤児院で育った俺は理解していた。
しかし、その処世術も万能ではないらしい。
「ってぇな、おい!」
男がいきなり胸ぐらを掴んできた。
「人にぶつかっといてなに帰ろうとしてんだ!?」
「えっと……」
男の顔をみると随分と赤らんでいる。
それに顔にかかる息も酒臭い。
(酔っ払いかよ、めんどくせぇな……)
そうは思うが、相手は片手で俺を持ち上げるようなやつだ。
されるがままになって足をぶらぶらさせている俺が、喧嘩したところで勝てるとは思えない。
「すみません、次からは気をつけます」
どうにか下手に出てやり過ごそうと試みる。
だが、酔っ払いにそんなものは関係ないらしい。
「お前、俺のことをなめてやがんな!」
「いや、そんなことは……」
「うっせえ! 馬鹿にしたような顔をしやがって!」
断じてそんな顔はしていない。
もししているとするならば生まれつきだ。
俺は周囲に視線を向けるが、助けてくれそうな人はどこにもいなかった。
男の仲間や他の冒険者たちは面白いものが始まったとニヤニヤ見ているだけだし、受付のギルド職員はそんなの日常茶飯事とばかりに視線すら向けずに仕事に精を出している。
(明日に響くような怪我をしなきゃいいな……)
既に諦めモードの俺は、殴られる覚悟を決めていた。
拳を固めた男の腕が振り上げられる。
しかし、その拳が俺を捉えることはなかった。
「邪魔なのだけれど。どいてくれないかしら?」
一人の女の声がした。
その声のほうへと首を向けた途端、全身から冷や汗が噴き出した。
黄金の髪を伸ばし、その間から笹穂耳が覗いている。
つり目がちなエメラルドの瞳に、作り物のように整った顔。
エルフだ。
この女は絶対的強者だと、一目見ただけで理解した。
早く逃げろと本能が訴える。
そしてそう思ったのは俺だけではないらしい。
胸ぐらの手が離され、バランスを崩した俺はその場に尻餅をついた。
見ると、先程まで赤らんでいた男の顔は、いつの間にか真っ青になっていた。
あれだけ横柄だった男が、この女を前にして恐怖しているのだ。
「聞いているかしら? そこを通りたいんだけど」
俺と男はどちらともいわず後退った。
女はというと、俺達の間にできた空間を悠然と通り抜けて受付へと向かっていった。
「おい見たか? あれがリーゼだ」
「少し前に来たとかいう新人か? 初めて見たが、確かにあれはやベーな」
ひそひそと話す冒険者たちの会話に耳をすませる。
どうやら、あのエルフの女は俺と同じ新人冒険者であり、名前をリーゼというらしい。
そして同じ新人でありながら俺とは違い、一目置かれているようだ。
それはそうだろう。
こんな化け物みたいな存在感を放っている奴、無視しろと言われたって無理だ。
ふと視線を感じた。
そこでようやく自分が床に尻餅をついたままだったことを思い出す。
恥ずかしくなった俺は急いでギルドを飛び出した。
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