異世界の裏口

千代子レイ子

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5 兄アルベルト

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 それから美少年お兄ちゃんと異世界ゲートを見せたり、今までの経緯やこちらの情報を提供すると、ビックリしながらも妹たちが助かった神の奇跡に祈りだして大変だった。

「……さて今度はそちらの話を聞いてもいいでしょうか?」
「はい。僕で分かることなら!!」

 さっきとはうって変わって、やる気に満ちた美少年にまずマリーたちの生い立ちをちゃんと聞いた。

 マリーやメリーはメークイン男爵と言う位で(芋と芋と思ったことは忘れよう)ご両親が馬車の事故で亡くなり、叔父夫婦がこれ幸いと乗っ取ろうとしたが、事故や他殺などでまたすぐに亡くなる。

 その後も男爵の地位を狙い乗っ取りをする者が現れるが、必ず不幸な死に方をするようになり、次第に呪われた屋敷と言われ誰も男爵位を狙う者がいなくなった。

 今は一番上の姉が相続することになって、やっと不幸の連鎖が収まったらしい。

 しかし維持するお金もなく屋敷はそのまま放置。今はお金を貯めて屋敷を修繕することを目指しているとのこと。

「ご姉弟は何人ですか?」
「長女、長男、次男、次女、三女の5人です」
「詳しく聞いても?」
「はい。長女はパトリシア。今は伯爵家に勤めてます。次に僕でアルベルト。城で騎士見習いをしています。そして双子の弟も同じ騎士見習いで、カルロスといいます。最後にマリーとメリーとなります」
「それでミム夫人とは?」
「親族です。この屋敷に幼い2人を残して行くわけにもいかないので、面倒をお願いしたんです。……ですがまさか虐待を受けていたなんて……ちゃんとお金も渡していたのに……」

 アルベルトは悔しそうに下を向いて手を握りしめていた。きっと先程の話を思い出しているんだろう。

「では、少しここを改装したのは大丈夫でした?」
「はい。問題ありません。むしろありがたいです」
「じゃ、次にこの世界の事を教えて下さい」
「はい」

 この異世界は一言で表すなら王道RPGだ。ギルドもあれば魔法もある。ただし魔法は貴族が主に使えるようで、平民は使えてもマッチ棒一本分の火力くらいしかない。

 それと魔王は存在しない。ただ『淀み』と言う魔物が定期的に湧き出る濁った泉があるらしく騎士たちはそれを主に退治し、清めるのが仕事らしい。

「えっ、そんな危険な作業するんですか?!」
「はい。その分お給料がいいので。でも僕はまだ見習いだからあまり行けないんですけどね」

 何故か恥ずかしそうに言うアルベルトに花は少し危機感をもった。

「では、行く事になったら必ず事前に教えてもらえませんか? 多少でも生存確率を上げる物を託したいので!」
「……心配してくれるのですか?」
「? 当たり前です! マリーやメリーが泣きますよ!! 貴方は絶対に生き残らなければならないんです!! しかも五体満足で!!」
「……ふふ。これは中々手厳しいですね」
「当然ですよ!!」

 アルベルトは久しぶりに自分を守ってくれる存在がいる状態にとても歯痒かった。

 両親が亡くなり兄妹だけが残る中、姉や自分たちがなんとか妹たちを食べさせるのに精一杯で、とにかく生きるのに必死な毎日だった。

 だから自分たちを優しく見守ってくれる人がいるこの環境が懐かしく、アルベルトは下を向きながらひっそりと目を潤ませていた。



「マリーやメリーに起こった事を他の姉弟たちにも知らせておきます。あぁ勿論、花令嬢の事も伝えておきますよ」
「宜しくお願いします。それと令嬢は付けなくていいですよ。庶民なので普通に花と読んで下さい」
「そうですか。では花さんと呼ばせてもらいますね」
「はい。それで構いません」

 たった数時間で真逆の対応になり、花は安心すると同時に少し可笑しくなってしまった。

「そう言えば淀みの魔物とスライムは違うのですか?」
「スライム……あぁ、ダンジョンのですね?」
「はい。トイレがダンジョンで契約してると……」
「ダンジョンは洞窟の奥深くに出来た小さい淀みです。ほぼスライムしか生息してないので害があまりありません」
「淀みなのに?」
「スライムは大人が叩いても消えるほど脆いんです。しかも洞窟から出ても消えるので脅威はありません」
「では契約トイレとは?」
「スライムは物質を溶かすことに長けてます。しかも汚物を特に好む。なので貴族は大抵ダンジョンと扉を繋げてトイレをダンジョンに作るのです」

 (要は水洗トイレならぬスライムトイレなのね。しかもダンジョン契約してトイレ増加を防ぐと言うことか)



 話も一段落したので今日の予定を聞く。

「今日はこちらに泊まりますか?」
「えっ? 寝室は無いですよね?」
「マリーたちと雑魚寝になりますけど、それでも良いならありますよ。どうしますか?」
「……雑魚寝……」

 雑魚寝と言うキーワードを発した後、貴族の子息にいう言葉じゃなかったと後悔した。つい、マリーやメリーが楽しそうに布団の上ではしゃいでいる光景を通常だと思い込んでいんでいた花の落ち度だ。

「す、すみません! つい、マリーやメリーが楽しそうに寝てたので、その感覚のまま話してしまいました」
「そういえば、先程マリーに靴を脱ぐように言われました」
「えっと、その、まだ他の部屋が埃まみれで掃除してないから2部屋しか使えないんですよ」
「? なるほど?」

 靴を脱いで部屋に入るということが、いまいち理解出来なくてアルベルトは不思議な顔をして花を見る。

「……えーと……とりあえずマリーたちの仮寝室入ってみますか?」

 百聞は一見にしかずと言うことで寝室の入りかたを説明し、マリーたちのお布団を見せると何とも言えない顔をされた。

「確かにベッドではないですけど、お布団も気持ちいいですよ?」
「あっ、はい……」

 全く納得いってない顔をしているが、その日マリーたちと一緒に雑魚寝したアルベルトは結局、昼過ぎまで1人爆睡していた。
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