異世界の裏口

千代子レイ子

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16 へルマンと美少女

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 不良へルマンとの複写がやっと終わり男爵へ贈呈すると大変喜ばれた。

「これからはこの本を参考にしながら悪魔の種を改良出来る!! ありがとう!!」
「喜んでもらえて光栄です。では、さつまいもやじゃが芋を使った料理を販売していきますね」
「?!! 何?! 料理だと?!!」
「えっ、はい。元々はそのつもりで来たのですけれど……」

 (いやいや、本書いて終わりなはずないでしょ!!)

「場所は決まっているのかね?」
「? いえ、これから探す予定ですが?」
「なら、領地うちの市場でやりなさい!」
「へっ?」
「試作はここで作ればいい! 材料は好きなだけ使って良い!! だから出来たものをわしにも食べさせてくれ!」
「芋料理や菓子のレシピを盗まれるのはちょっと……」
「なら、契約を結ぼうではないか!!」

 (採取される未来しか見えないんですけど?)

「はぁ。とりあえずそこら辺の話は後日にします」
「良い返答をまっているからな!」

 こうして商店の話は保留となり、いつの間にかへルマンが花の専属護衛とされ、徐々に男爵から外堀を埋められているようで恐い。

「もうさ、男爵の専属芋専門家になればいいじゃねぇか! あの人はコンジャックとこと違ってちゃんと評価してくれるぞ!」
「コンジャック?」
「裏では有名な悪徳商会さ! あの人の良さそうな顔と話術に結構騙されてるやつが多いんだよ」
「? 何で? 合わなければ脱退すればいいじゃない」
「契約を書かされるのさ! それも結構酷い内容を巧く隠して書いてあるらしい」
「なるほど。有名詐欺師ほど頭が良いってことね」

 そんな話をしていると裏路地から怒鳴り声が聞こえ、女性の悲鳴が後から響いた。

「……くだ……い! せめて……だ……返して……」
「うるせぇ!! 端金だが玄関を汚した代金だ!!」

 傲慢な男が美少女を足蹴に金を巻き上げていた。この異世界はやはり治安が悪い。どうしようか考えていると隣にいたはずの護衛へルマンが消えている。

「うらぁ!! このヤブ医者がぁー!! 治療しねぇで金巻き上げるなら俺に殴られても文句いえねぇよなぁ!!」

 それはあっという間の出来事だった。美少女を足蹴にしていた男はへルマンに殴られて即、気絶してしまった。まるで火事と喧嘩は江戸の華とでも言うように此処では日常茶飯事過ぎて笑えない。

「カメリア!! 大丈夫か!!」
「あっ、ヘルマン様……」
「なんでこんなヤブ医者のとこにいるんだ!」
「……兄が高熱で……全然下がらなくて……」
「そんなに酷いのか?」
「……はい」

 どうやら知り合いのようだ。ここは治安が悪いので場所を移動してから話を聞く。するとどうやらお兄さんが高熱で意識朦朧と危なくなり、お金を持って医者を訪ねたら理不尽にお金を巻き上げられたそうだ。

 いや、それもう医者じゃなくてただの破落戸。

「……あの、医者じゃないですけど、もしかしたら助かる薬があるかもしれません。ただ、絶対ではないですけど……」
「……………………」
「? あの、どうしますか?」

 呆ける美少女に不思議がっていると花の視線に気付いたのか慌てて話に戻った。

「あっ、いえ、その助かるんですか?!」
「分かりません。私は医者じゃないので……。でも解熱剤はあります。とても強い薬なんです」
「構いません!! 助かる可能性があるなら!」

 花は頷くと屋敷に急いだ。マリーの時と同じように風邪セットと解熱剤を準備して男爵から借りた鳥車でカメリアさん家に向かう。

「でもビックリした。へルマンの知り合いにこんな美少女がいるなんて!」
「? あぁ、まぁ、美人かな? 俺、嫁さんしか興味ねぇからなぁ……よくわかんねぇわ!!」

 (相変わらず凄いな……嫁を溺愛してるのは幼稚園児でも理解出来る態度だが、他は美醜を含まず人柄だけで判断しているなんてある意味公平な人なのかな……)

「それは知ってるよ。だからちょっと驚いた」
「はは! 俺は基本子供には優しいからな! それとカメリアは家の近所に住んでるんだ。よく嫁さんと楽しそうに料理してるからもう半分親戚みたいなもんだな!」
「はい。リナ様はとても優しくて素敵な方ですから、へルマン様が溺愛するのも分かります」
「だよなー! リナは世界一可愛いくて優しい嫁さんだからな!! カメリアはよく分かってる!!」

 それから車内は嫁自慢を永遠とするへルマンの独壇場となり、聞かされている花は当分甘いものは要らない気分になっていた。

 そうして着いたその屋敷の外観を見て花は驚く。

「……既視感が凄い……」
「カメリアは一様男爵令嬢だからな!」
「ほぼ家名だけの貧乏人ですよ。このように屋敷はボロボロですからね。では兄の部屋へ案内します」

 この前までのメークイン男爵家を彷彿とさせるボロ屋敷具合だ。この美少女もかなり苦労しているのが見てとれる。

 そしてカメリアに連れられ、一室に通されるとそこには海外スターさえも裸足で逃げ出すほどの超絶イケメンがベッドの上で苦しんでいた。

 えっ? 人間?! 嘘! 天使でしょ?!!
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