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28 ミー君辺境へ帰る
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王弟妃の体調が戻り、ミー君と王弟夫婦が辺境に帰る日になった。
「今日まで本当にありがとう。ミシェルの為に色々工夫もしてくれて、貴女には感謝しかないわ」
花はミー君の為にベビーチェアーや食器。乳母車など日本のかなり良くて便利な物を取り寄せたので、辺境でもそれを使って欲しいと王弟妃に贈呈した。
王弟妃は贈呈された品があまりに出来がよく感動し、結局ミー君関連は全て辺境に持っていくことになる。
そして花は贈呈品の1つにどうしても渡したい物があり、失礼を承知で王弟妃にお声をかけた。
「あの、もし宜しければミシェル様とご一緒に着てください」
「? 何かしら?」
「辺境はこれから寒くなると聞きました。お揃いの夜着なんですがとても暖かいので宜しければお使い下さい」
「見てもいいかしら?」
「是非」
王弟妃が包み紙を丁寧に取り外すと、そこには可愛らしい熊のぬいぐるみのような寝巻きと、モコモコで見るからに柔らかそうな大きな2つの寝巻きがあった。
「まぁ! なんて可愛らしいの! 花冷嬢は本当に可愛い物を見つけるのがお上手なのね。ミシェルの食器1つを取っても気配りと可愛さがあって、城のメイドたちも羨ましがっていたわ」
「お気に召されたようで光栄にございます」
そう、花は知っていた。王弟妃がミー君の可愛い洋服を見て目を輝かせながら悶えていたことを。だから可愛いに定評のある日本の暖かくて可愛いパジャマをプレゼントしたのだ。
(……まぁ、王弟閣下も可愛いらしいパジャマになってしまったんだけどね……)
「ふふ。ねぇ、花嬢。私からもお願いしたいことがあるの」
「何でしょうか?」
「ミシェルにね、大変だとは思うけど手紙を沢山送ってもらえないかしら?」
「手紙ですか?」
「えぇ。辺境では同じくらいの子供がいないの。今まで楽しく暮らしてきたミシェルはきっと寂しい想いをするわ。だからマリー嬢やメリー嬢の事を書いて欲しいの」
王弟妃で貴族のトップに近い高貴な女性だけど、そのお願いは息子を想う普通の優しい母親の姿だった。
「はい! いっぱい送らせてもらいます!」
こうしてミー君は両親と共に辺境へと帰っていった。
それから花はミー君宛に手紙を送る事が日課となった。ルーベンスやオリバーに手伝ってもらい、四苦八苦しながらの手紙だったが、マリーやメリーの日常を中心とした話と共にプリントした写真を数枚必ず同封して、ミー君が見ても喜ぶような手紙を工夫して毎回送る。
「花様、今回は此方も同封してもらえますか?」
「? これは?」
「マリー嬢とメリー嬢の手紙です。文字を書く練習にミシェル様に宛てて言葉を綴るよう課題を出しました」
「なるほど。いいですね。本人もやる気が出るし練習にもなる……あの、ルーベンスさん、この課題またお願いしてもいいですか?」
「勿論。こちらとしても良い勉強になるので助かります」
こうしてミー君への手紙はマリーとメリーの分も追加された。まだ幼いミー君は読めないだろうがきっと大きくなった時、思い出として心の支えになればいい。
そうして穏やかな日常に戻った頃、花宛に1通の手紙が届いた。辺境からの手紙はまだ先なので少し怪しい。
花はこの手紙をルーベンスと共に検証することにした。元々此方の文字を読めない花。マリーたちよりかは随分読み書きが出来るようになったとはいえ、ルーベンスが居ないと今だ不安が残る。
「この紋章は皇太子妃? 花様は妃殿下と面識があるのですか?」
「まさか! ありません」
「おかしいですね。面識もない相手を茶会に招待するなど……。とりあえず相手側に確認してみましょう」
「そうですね」
しかし確認を取っても間違いではないと言われ、花は困ってしまった。するとルーベンスがいつの間にか王弟に連絡を入れてくれたらしく、妃殿下と実家のノーザンルビー公爵家についての詳細なデータが届けられていた。
「どうやらミシェル殿下に会いに行った最初の登城で着ていたドレス(着物)の噂を聞き、興味をもったようです」
「それで茶会に?」
「花様は此方の貴族との接点もありませんし、少々無理やりですが皇太子妃と言う権力を使って呼び出しのでしょう」
「でも困りました。こちらの作法など全然知りませんから、高貴な女性との茶会など出来ません」
「では、その旨を伝えましょう」
だが相手は諦めなかった。余程着物に興味があるのだろう。大きな茶会ではないから気軽に来て欲しいと伝えて来る始末。
「ルーベンスさん、ど、どうしよう」
「分かりました。カメリアを侍女として連れて行って下さい。貴族のマナーと言っても茶会程度でしたら問題なく出来ますから」
「なるほど! そうですね、私も心強いです! ありがとうございます。ルーベンスさん!」
感動してお礼を言うとにこやかに微笑み返してくれた。その姿はまるで名画の微笑みのようで推しに金を落とさないといけない女子の気持ちが分かったような気がする。
「さすがルーベンスさんです。本当に頼りになりますし、感謝しかありません!」
「あ、ありがとうございます……」
「はぁ。ルーベンスさんがいてくれて本当に良かった。このお礼は必ず!」
「いえ、もう貰っていますから」
「?」
そう言って私にマウスパッドをそっと見せる。
「今やこれがないと生きていけません」
満面の笑みで花もクラクラしそうな破壊力だが言っていることは現代廃人とそう変わらないことに少し苦笑いするしかない。
「今日まで本当にありがとう。ミシェルの為に色々工夫もしてくれて、貴女には感謝しかないわ」
花はミー君の為にベビーチェアーや食器。乳母車など日本のかなり良くて便利な物を取り寄せたので、辺境でもそれを使って欲しいと王弟妃に贈呈した。
王弟妃は贈呈された品があまりに出来がよく感動し、結局ミー君関連は全て辺境に持っていくことになる。
そして花は贈呈品の1つにどうしても渡したい物があり、失礼を承知で王弟妃にお声をかけた。
「あの、もし宜しければミシェル様とご一緒に着てください」
「? 何かしら?」
「辺境はこれから寒くなると聞きました。お揃いの夜着なんですがとても暖かいので宜しければお使い下さい」
「見てもいいかしら?」
「是非」
王弟妃が包み紙を丁寧に取り外すと、そこには可愛らしい熊のぬいぐるみのような寝巻きと、モコモコで見るからに柔らかそうな大きな2つの寝巻きがあった。
「まぁ! なんて可愛らしいの! 花冷嬢は本当に可愛い物を見つけるのがお上手なのね。ミシェルの食器1つを取っても気配りと可愛さがあって、城のメイドたちも羨ましがっていたわ」
「お気に召されたようで光栄にございます」
そう、花は知っていた。王弟妃がミー君の可愛い洋服を見て目を輝かせながら悶えていたことを。だから可愛いに定評のある日本の暖かくて可愛いパジャマをプレゼントしたのだ。
(……まぁ、王弟閣下も可愛いらしいパジャマになってしまったんだけどね……)
「ふふ。ねぇ、花嬢。私からもお願いしたいことがあるの」
「何でしょうか?」
「ミシェルにね、大変だとは思うけど手紙を沢山送ってもらえないかしら?」
「手紙ですか?」
「えぇ。辺境では同じくらいの子供がいないの。今まで楽しく暮らしてきたミシェルはきっと寂しい想いをするわ。だからマリー嬢やメリー嬢の事を書いて欲しいの」
王弟妃で貴族のトップに近い高貴な女性だけど、そのお願いは息子を想う普通の優しい母親の姿だった。
「はい! いっぱい送らせてもらいます!」
こうしてミー君は両親と共に辺境へと帰っていった。
それから花はミー君宛に手紙を送る事が日課となった。ルーベンスやオリバーに手伝ってもらい、四苦八苦しながらの手紙だったが、マリーやメリーの日常を中心とした話と共にプリントした写真を数枚必ず同封して、ミー君が見ても喜ぶような手紙を工夫して毎回送る。
「花様、今回は此方も同封してもらえますか?」
「? これは?」
「マリー嬢とメリー嬢の手紙です。文字を書く練習にミシェル様に宛てて言葉を綴るよう課題を出しました」
「なるほど。いいですね。本人もやる気が出るし練習にもなる……あの、ルーベンスさん、この課題またお願いしてもいいですか?」
「勿論。こちらとしても良い勉強になるので助かります」
こうしてミー君への手紙はマリーとメリーの分も追加された。まだ幼いミー君は読めないだろうがきっと大きくなった時、思い出として心の支えになればいい。
そうして穏やかな日常に戻った頃、花宛に1通の手紙が届いた。辺境からの手紙はまだ先なので少し怪しい。
花はこの手紙をルーベンスと共に検証することにした。元々此方の文字を読めない花。マリーたちよりかは随分読み書きが出来るようになったとはいえ、ルーベンスが居ないと今だ不安が残る。
「この紋章は皇太子妃? 花様は妃殿下と面識があるのですか?」
「まさか! ありません」
「おかしいですね。面識もない相手を茶会に招待するなど……。とりあえず相手側に確認してみましょう」
「そうですね」
しかし確認を取っても間違いではないと言われ、花は困ってしまった。するとルーベンスがいつの間にか王弟に連絡を入れてくれたらしく、妃殿下と実家のノーザンルビー公爵家についての詳細なデータが届けられていた。
「どうやらミシェル殿下に会いに行った最初の登城で着ていたドレス(着物)の噂を聞き、興味をもったようです」
「それで茶会に?」
「花様は此方の貴族との接点もありませんし、少々無理やりですが皇太子妃と言う権力を使って呼び出しのでしょう」
「でも困りました。こちらの作法など全然知りませんから、高貴な女性との茶会など出来ません」
「では、その旨を伝えましょう」
だが相手は諦めなかった。余程着物に興味があるのだろう。大きな茶会ではないから気軽に来て欲しいと伝えて来る始末。
「ルーベンスさん、ど、どうしよう」
「分かりました。カメリアを侍女として連れて行って下さい。貴族のマナーと言っても茶会程度でしたら問題なく出来ますから」
「なるほど! そうですね、私も心強いです! ありがとうございます。ルーベンスさん!」
感動してお礼を言うとにこやかに微笑み返してくれた。その姿はまるで名画の微笑みのようで推しに金を落とさないといけない女子の気持ちが分かったような気がする。
「さすがルーベンスさんです。本当に頼りになりますし、感謝しかありません!」
「あ、ありがとうございます……」
「はぁ。ルーベンスさんがいてくれて本当に良かった。このお礼は必ず!」
「いえ、もう貰っていますから」
「?」
そう言って私にマウスパッドをそっと見せる。
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