異世界の裏口

千代子レイ子

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27 お泊まり会

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 ラブラブな王弟夫婦を微笑ましく見守っていると何やら扉の向こうが騒がしい。

「あの、ミシェル様がはにゃ・・・様? をお探しのようで、此方にお通ししてもいいでしょうか?」
「あぁ。構わない」
「はにゃ様とは?」
「ふふ。花令嬢のことだよ」
「まぁ。ミシェルったら本当に好きなのね」

 侍女に連れられたミー君と双子が手を繋ぎながら王弟夫婦の前に現れた。

「あっ、はにゃ! ミー君おやちゅちゃべる!」
「あら? お菓子は出されなかったのかしら?」
「クッキーとケーキあったけど、あんまり美味しくなかったよ」
「えっ?」
「まじゅ!」
「……クッキー甘過ぎて気持ち悪い」

 城のパティシエが作ったお菓子を不味いと評するキッズたち。

「ねぇ、花の作ったお菓子食べたい! マリーは宝石ケーキでもいいよ!」
「ミー君はね、あいちゅとおいも!」
「……アイス……うん。いいね。メリーもアイスがいいな」

 いきなり無理難題を突きつけてくる。ここはメークイン男爵家じゃないから買えないので、マリーのケーキも然ることながらアイスもサツマイモもない。

「ここはお屋敷じゃないから無理だよ。マリーも分かってて言ってるんでしょ!」
「えへへ。でも見た目がいいケーキも味はいまいちだったよ? お城のお姫様は美味しいものを食べてていいなぁって思ったけど、そんなことないんだね。可哀想……」
「……うん。屋敷うちの方が美味しい」
「ミー君、バニア! ばにゃにゃでもいいよ?」

 (王家の人がいる前で可哀想は止めてマリー。メリーもちゃっかり屋敷の方がいいとか言わないで! そしてミー君この異世界に多分バナナ無いの)

「そういえば、メークインの屋敷で出された料理は確かに美味だったな」
「あら、あなた召し上がってきたの?」
「あぁ。ミシェルがお腹が空いたと泣き出してな。可愛らしい晩餐だった」
「まぁ、羨ましいわ」
「なら、早く元気になっておくれ。そしてミシェルと3人でまたお礼がてらメークインの屋敷に伺おう」

 お菓子の話から屋敷うちに来ることが決定事項となり、アルベルトに心の中で謝った。



 さすがに王家の台所を借りるわけには、いかないのでミー君たちには食べたいお菓子の絵を描いてもらうことにした。

「宝石ケーキでしょ、白プリンでしょ、タルトタタン!」
「……パンケーキ、クレープ、杏仁豆腐」
「あいちゅ、おいもちゃん、ボーロ!!」

 子供たちは王弟妃に絵を描きながら可愛らしく説明する。

 (でもマリーさん、何故杏仁豆腐の名前は覚えられないのにタルトタタンだけは言えるの? 謎だ)

 王弟妃は子供たちが一生懸命描いたり説明する姿が微笑ましいのか終始笑顔だった。そしてその横でまた感動しているのか王弟は目を潤ませては花にお礼を言っている。

「では、ミシェル様も落ち着いたようですし、私たちはこれで失礼させてもらいます」
「えー、もう帰るの?」
「…………」
「ミー君、もっとあしょぶ!! かえんない!」

 3人ともまだまだ遊び足りないようでだだをこねている。しかしいつまでも城にいるわけにもいかない。マリーとメリーを説得していると、ミー君が不思議そうな顔をしていた。

「またミシェル様と会えるようにマリーもメリーもいっぱい勉強しないとね」
「ミー君王子様だもんね……」
「……寂しいな」
「では、御前を失礼します」

 花が挨拶をして帰ろうと扉に向かうがマリーとメリーに続いてミー君までも帰ろうとしていた。

「ミ、ミシェル様。あなたのお家はここですよ。もう帰らなくていいんですよ?」
「? もうお泊まりないよ?」
「お泊まり?!」
「? はにゃ、かえろ!」

 どうやらミー君はお城をお泊まりに来ただけだと思い込んでおり、マリーたちと帰るつもりのようだ。花は困って王弟夫婦に助けを求めて見つめると2人とも考え込んでしまった。

「あの……」
「そうね。寂しいけどそれがいいかもしれないわね」
「?」
「そのうち辺境に戻ることになるけど、今は城とメークイン男爵家で交互にお泊まりをして慣れるのがいいかもしれないわ」
「そうだね。君の体調が万全になるまでは、むしろこの城よりメークイン男爵家の方がいいかもしれない」

 王弟の発言でミー君に毒を盛った犯人がいることを思い出した。そう考えると確かに安全かもしれないが、警備を考えると不安は残る。

 不安顔を察したのか王弟はそんな花の悩みも簡単にぶっ飛ばしてくれた。

「勿論ミシェルが男爵家に行くときは私の護衛たちを付けるから安心していい」
「あ、ありがとうございます」

 こうしてミー君は1週間に1回城へマリーたちとお泊まりをして、徐々に城への回数を増やしていった。王弟はいきなりミー君だけを城に行かせたのがよくなかったと反省し、マリーたち双子をミー君と一緒にすることで慣れさせることに成功したのだ。

 ただー……

「ただいまー!!」
「……ただいま」
「ちゃちゃぃまー!!」

 今だにミー君がここを実家として認識しているようで、辺境に帰るまで何とかなるのかまだ心配している。

「はにゃ! はにゃ! きょ、ぴじゃ? ばんべきゅ?」

 そして多い護衛の弊害か、花は王弟から支給された食材でこの多人数の食事を賄うのため、BBQやピザなど鉄板で大量生産出来る料理を庭で振る舞った。

 そのため必然的に子供たちも庭に行くようになり、料理を豪快に作る過程や屋台のような雰囲気にミー君は大興奮して食事はもう騎士と一緒にしないとただをこねるようになってしまい、余計城へお泊まりして慣れる計画が遠ざかってしまっている。

「はぁ。やっぱりミー君はお城に慣れないのかな……」
「お城は無理だよ」
「えっ? 何で?」
「だってあそこ性格悪い大人ばっかりだもん」
「そうなの?」
「はぁ。花には悪いけどお城はね、綺麗で素敵な場所じゃないんだよ。夢はみない方がいいって!」

 花はマリーに何故か夢見る少女認定され、哀れみの目を向けられた。……解せぬ。



 それでも王弟夫婦の努力か次第にミー君は花たちと別れても泣かなくなった。

「もうそろそろ辺境に行っても大丈夫そうだな」
「はい。最近はこちらでもお妃様を恋しがってますよ」
「そうか!」

 王弟はその報告に相好を崩した。本当に家族を愛しているのだろう。だからこそ、怪しい王家からの城を離れて安全な辺境で幸せになって欲しい。
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