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閑話 悪役令嬢の独話3
しおりを挟む私のファーストキスは結婚式だった。皇太子と偽りの誓いを神に告げる。滑稽だ。いや、この場合罰当たりだろう。
「綺麗だよ」
「……ありがとうございます……」
あの廊下の出会いの次に交わした言葉。本音か建前か知らないが、指にはめられた誓いの指輪が見えない鎖のようで何だか重く感じた。
初夜の夫婦部屋にお祝いの手紙が沢山届いていた。その中に祖母のものを見つけて気付けば涙がこぼれて落ちていた。あの日やっぱり王都なんかに行くんじゃなかった。
泣きながら手紙を読むと私を労う言葉と元末姫だった自分だからこそ城での注意喚起を教える事が出来ると事細かに書かれていた。ん? 末姫?
祖母の名前をよく見るとそこには隣国で政略結婚していたはずの姫の名前があった。
「えっ? お婆様ってあの末姫? じゃ亡くなったお爺様ってもしかして騎士のあの人?!!」
私は部屋で皇太子を待たずにガウンを着て、護衛の言葉も無視し書庫に駆け込んだ。
「どういうこと?」
そこで見たノーザンルビー公爵家の名前はやはり末姫と騎士だった。では隣国の王子はどうなっているかと調べれば1度もこちらには来ていない。しかも一目惚れする舞踏会の頃には既に嫁がいて、外交での仕事を側近に押し付けると言う暴挙もやっていた。
「……えっと、妃の名前は……ナデシコ。撫子?! 日本人? いや、でもギリギリ違うかもしれないし……聖女? 余計に訳が分からない……」
それから1人で調べ続けていたら、かなり私の知っている本編とかけ離れていた。
まず最初の事件となる舞踏会で隣国の王子は既に嫁を貰い溺愛状態のため外交を側近に任せて来なかった。なので必然的に末姫と護衛騎士は結ばれ臣籍降格してノーザンルビー公爵を賜る。
私の父親(宰相)は特に問題なく愛情たっぷりに育つので王家を憎むことはない。だから王弟も父には狙われるようなこともないので今のところ平和だ。
そして第2王子の婚約者は何故か数年前に盗賊に襲われて行方不明になっていた。だから今は婚約者はいない。
「? あれ? じゃあ何で私の結婚がこんなに早く行われたのかしら? そもそも私じゃなくてもいいわよね?」
「そんなことはないよ」
「?!!」
ビックリして振り返るとそこには皇太子がいた。あれ?何でここにいるの? まさか迎えに来たの? 何で?
「驚かせてしまったね。でも部屋に花嫁がいないから探してしまったよ」
「……申し訳ございません」
「ふふ。見つかったからいいよ。それよりこんな夜中に調べもの?」
「すみません。どうしても祖母と祖父の名前が知りたくて」
「? でもここには隣国の資料と……マンチニール公爵家?」
まずい。何とか誤魔化さないと……。
「はい。その調べていくうちにマンチニール令嬢が行方不明になった件に隣国の盗賊が絡んでるような気がして……まだ憶測ですが……」
「……さすが私の妃だな。そこまでこの短時間で突き止めるとは……」
えっ? これは適当に言っただけなのに……嘘でしょ?!
だがここは合わせるしかない。
「では、やはり……」
「あぁ、令嬢は既に隣国で奴隷にされていたよ。余程ひどい目にあったんだろう。あの我の強い傲慢な令嬢が自我を失って廃人と成り果てていた」
「えっ? マンチニール令嬢が?」
「信じられないのも分かる。彼女のような狡猾な悪女がまさか盗賊に捕まって廃人になっているなんてな。でも事実だ。どんなに狡知に長けても所詮力のない貴族女性ということだ」
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「さぁ、ここは冷える部屋に戻ろう」
「……はい」
皇太子に連れられ部屋に戻るといきなり抱きつかれた。
「えっ? あの……」
「はぁ。やっと手に入れられた」
一体どういうこと? 皇太子に会ったのはたった2回のはず。何で長年の夢みたいなこと言っているんだろう。
その日初夜はただ抱きしめられるだけに終わった。諦めの気持ちで望んでいただけに少しホッとした。まぁ、まだ15だし、形だけでも大丈夫なのかな?
「お前が皇太子妃なんて認めないからな! アバズレが!」
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「それでは国王陛下にその旨を王子からお伝え下さい」
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「構いません。そうなれば私は貴族位を返上して領地で大人しく平民として暮らすか修道院に入りますから」
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……なので私はまだ皇太子妃のままでいる。
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