異世界の裏口

千代子レイ子

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閑話 悪役令嬢の独話2

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 本来はこのまま領地に直行する予定だった。しかし母親の悪阻が酷く、また私が領地に帰ることで長年母親として一切接することが出来なかったトラウマから鬱になりかけていた。

 誤解が少し解けたこともあり、生まれるまでは側にいて少しでもストレスを溜めないように私は努めることにし、それまでは領地に帰ることを遅らることにする。

 そうして月日はたち先に王弟妃の子供が生まれた。

「オリヴィア。王弟閣下からお呼びがかかったわよ?」
「えっ? 何故?」
「よく分からないのだけど、貴女をとても絶賛してたわ」
「?」
「とても光栄なことよ。お祝いの品を持って行きなさい」
「でもお母様の身体が心配だわ」
「1日ぐらい平気よ。それに王弟妃様のお子様がどのような赤ちゃんか気になるわ。私の代わりによく観察してきて」

 さすが宰相の妻だ。王城の新しい情報に目を光らせている。私はお祝いの品をもって母の代わりに登城した。

 だが私は少し気が抜けていたらしい。城に呼ばれると言うことは王子たちに会う確率も上がるのだということを……

「おい、お前はデビュタントで叔父上と踊ってた令嬢だろ」
「……はい。左様でございます」
「ふん! 叔父上に色目を使うなど、よくその容姿で自信が持てたものだ。叔母上の美しさを知らぬ愚か者め!」

 まさか第2王子とばったり会ったと思ったらいきなりこの前の文句を言われた。いや罵倒だな。

「なんの用事か知らんがその醜い顔を見せるな!」
「はい。では御前を失礼します」
「ふん! アバズレが!」

 よく分からないが嫌われているらしい。これは良い傾向だ。このまま皇太子にも嫌われたい。

 私は気にもせず約束の部屋に通され、王弟を待つと満面の笑みで現れた。

「おぉ! ノーザンルビー公爵令嬢! 待っていた! ささ、息子・・を見てくれ!!」

 案内された部屋には可愛らしい赤子が口をモゴモゴしながら眠っていた。

「そなたの言った通りだった! ほら、この顔の形といい、鼻も口も妃にそっくりそのままだ!!」
「……そうですね。やっぱり当たりました」
「あぁ、素晴らしい限りだ! 髪と瞳は私の色なのだが、それでも妃にそっくりで可愛いのだから不思議なものだ」

 今度は親バカが発揮されそうで、今から王弟妃も周りも大変そうだ。

「全て当たった令嬢にお礼がしたくてな。何かあれば言ってくれ!」
「はい、困ったら頼らせてもらいます」

 全て当たったと言うがはっきり言ってよく分からない。何となく王弟妃に似てるかな? 程度だ。ほぼ親の欲目だろう。だがこれで貸しを作れるのなら何も言わない。私の死亡フラグが完璧に無くなるまでは有効活用させてもらう。

 そして帰りの廊下で今度は本命の皇太子にばったり会ってしまった。

「やぁ、ノーザンルビー公爵令嬢。デビュタント以来だね」

 最悪だ。もう少し時間をずらせばよかった。帰りに今度は違う王子に会うってこれも強制力とか言うやつか?

「はい。皇太子殿下にこのような場所でお声をかけて頂き誠にありがとうございます」
「叔父上の赤ん坊を見に来たんだろう。わざわざすまないね。今有頂天になっていて自慢したくて仕方ないんだよ」
「恐れ多いことでございます」
「ねぇ、良かったらこの後お茶でもどうかな?」
「いえ、私は第2王子殿下から王家の者に私の醜い顔を見せることを先ほど禁じられましたのでこれで失礼させて貰います」
「えっ? 醜い?!!」
「はい。申し訳ございません。では御前を失礼します」

 なるべく目線を合わせないように挨拶をしてそのまま帰ろうとすると、いきなり腕を捕まれた。

「どういうこと? 詳しく話してくれない?」
「……詳しくも何もそのままの意味です。それに私はもう登城することは無くなると思いますので気にすることはございません」
「城に来ない? 何か禁止されたのか?」
「いえ、私は母の出産が終わりしだい、領地に戻り貴族位を返上して平民になる予定ですから」
「何故……」
「……幸せに長生きするためですかね……」

 そう、私は断罪されたくない。穏やかに生きて家族に見守られながら天寿を全うしたいんだ。

「長生きなら直ぐに医者を呼べる貴族の方が良くないかい?」
「そうですね。でも冤罪をかけられたり毒を飲まされたり危険具合は変わりません。ならまだ自由な平民の方がましだと思いませんか?」
「冤罪? 毒?!」
「もしもの話です。それでは失礼します」

 その時はこれで2度と登城せずに領地でゆっくり過ごせるものだと思ってた。しかし強制力は私を物語から解放してはくれなかった。

「皇太子殿下の婚約者?! その話は流れたのでは?」
「王命が下された。すまない。私の力が足りないばかりに」
「では今すぐ私を除籍してください!!」
「それが式まで後2ヶ月なんだ。今から手続きしても間に合わない」
「そんな……」

 こうしてお妃教育もなく私は皇太子殿下と短い婚約期間を経て結婚した。だが私はまだ諦めない。王族でも離縁に近いことは出来るから。

 みすみす殺されるなんてまっぴらごめんだ!!
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