異世界の裏口

千代子レイ子

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番外編 長女パトリシア

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 窓辺で1人のお嬢様が手紙を読んでいる。そして読み終えるとベルを鳴らしてメイドを呼ぶ。

「もう実家に帰ってもいいわよ。終わったから・・・・・・
「!!」
「辛かったわね。でももう平気よ。妹たちも弟たちも皆、元気に笑っているわ」

 メイドは静かに涙を溢してありがとうございましたとお礼を言う。

「よく我慢したわ。何度も実家に帰りたかったでしょうに……」
「……いえ、お嬢様のお陰で大切な家族が守れました」
「ふふ。ならユージンも連れて1度帰りなさいね」
「!! お、お嬢様?!」
「見守ることしか出来なかったあなたを支えた功労者をそろそろ安心させてもいいんじゃない? 伯爵家うちは夫婦共働きを推奨しているから大丈夫よ」

 お嬢様の言葉に顔を真っ赤にして狼狽えているメイドは可愛い。

「あなたが関与しなかったお陰で皆、生きてるわ。その目で確かめに行きなさい。パトリシア・・・・・
「はい! お嬢様。ありがとうございます」


 メークイン男爵家、長女パトリシア。彼女はお仕えするお嬢様から初日に告げられた。

「これから何があっても実家に関与してはダメ! 弟や妹たちが大切ならどんなに辛くとも静観しなさい!」
「えっ?」
「あなたが関与したら全てバッドエンド・・・・・・になる!」
「バッドエンド……あなたは……」
「時間はいっぱいあるわ。ゆっくり話しましょう。5度目のパトリシア・・・・・・・・・
「!!!」

 あれからどんなに辛くとも実家とは最低限のやり取りしかしなかった。でもそのお陰で全員が生きている・・・・・・・


 皇太子に起きたバグは実はここでも起きていた。1度目、愛する家族が死に弟たちが壊れてゆく未来を見た。なので2回目は妹を助けるためにすぐにミム夫人の所へ行ったが既に風邪を拗らせ物置でメリーは息を引き取っていた。

「幼子の死はしょがない」といった事にキレた私はミム夫人を惨殺していた。現場を見ていたマリーはあまりの恐ろしさに心が壊れてしまい、私は殺人罪で捕まった。

 3度目は前回の失敗を踏まえて先にミム夫人だけを呼び出し殺した。彼女はやはり裏で悪事をしていたらしく、その揉め事が原因だと思われて私は容疑もかからなかった。

 たが運命は残酷で助かった妹の代わりとばかりに今度は弟たちが淀みの討伐で命を失った。お金がないことが悔しくて悔しくてしかたない。だけど爵位を返還すれば義務や一時的にお金を貰えて楽にはなるが、平民となるのでぐっと就職場所も減り生活するのに苦労することが分かる。

 下っ端でも貴族なら平民より高給取りだし、就職場所も多い。幸いうちは領地を持ってないのでそちらの面倒がないのが救いだ。

 4度目はミム夫人の悪事を知っていたので騎士を連れていき、妹たちを保護して夫人はその場で捕まった。弟たちにもお金はいいから文官になって欲しいと懇願したらしぶしぶだが納得してくれた。命さえあればお金などどうとでもなる。私が頑張ればいいだけのことだ。

 ……そう思っていたのに、弟が自殺した。カメリアと言う女に遊ばれ捨てられたのだ。彼女はその美貌を使って色んな男を渡り歩いてついには皇太子まで射止めた悪女。

 やっと家族が死ぬ運命から救いだせたと思ったのに文官を進めたばかりに悪女に囚われ、またもや消えてしまう。だが悪女はやり過ぎていた。隣国の王子にまで手を出したことが分かり拷問の上、公開処刑となる。

「なんでよ! 私がヒロインの世界でしょ!! バッドエンドなんて聞いてない!!」

 そんな頭のおかしいことを言っていた悪女も市民から罵詈雑言と石を投げられて心が折れたところで死んだ。ついでにそんな悪女に騙された皇太子も廃棄され北の棟にいれられ幽閉されている。

 私は屍となった悪女に呪いの言葉をかけて後にした。弟に向こうで悪女にあっても絆されるなと釘を刺すために……。



 そうして5度目の今回はお嬢様から呼び出され話し合い、手を出さないでいた。

「皇太子殿下と私は少し関わりがあるのたけど、どうやら貴女と殿下が手を回すと助けたい人達をみんな死なせてしまうらしいの」
「どういうことですか?! 皇太子殿下も記憶があるのですか?!」
「えぇ。そうみたい。そして今回はとても上手くいっているようなの。だからどうか我慢して欲しいそうよ」
「ですが、信用なんて出来ません!!」
「……ハナと言う異界人が双子を助けて元気にしているそうよ。そしてミム夫人は投獄されて死刑が確定したの」
「…………」
「手紙を送ればいいわ」
「いえ。こちらこらは出しません。少しでも関わって危険に及ぶことが恐いです」

 (私が動き出す前に妹たちが救われて、元凶のミム夫人が裁かれた。本当に私が関わらなければ救われるの? 恐い……でもそれで家族の命が助かるのなら……)

 私はお嬢様を信じた。でも本当は心がこの時少し折れかけていたのかもしれない。きっと始めの頃なら反対して自分でやっていただろう。


「おめでとう。我慢して貴女の勝ちよ」
「……ありがとうございました……」

 私の知らない幸せな未来。望んだ未来が生まれた。

 (異界人のハナさん。本当に本当にありがとう……)



 そして今日、私は婚約者・・・と共に家族へ会いにいく。私もまた幸せになったのだと報告も兼ねて……。



「さぁ、ユージン行きましょう」
「あぁ。君の家族に会えるのが楽しみだよ」

 懐かしい門が綺麗になっていて驚く。両親が生きていた頃に戻ったようだ。

 私は目に浮かべた涙を拭って笑顔を作り大きな声をかける。

「みんなー!! ただいまー!!」
「「あー!! お姉ちゃん!!」」
「「姉上ー!!」」


「「「「おかえりー!!!」」」」
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