異世界の裏口

千代子レイ子

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番外編 クリスマス

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※今回は少し長めです。


「花とオリバーは悪い子だったんだね……」

 オリバーと淀み近くの泥沼から帰ってきてからの一言。

「どういうこと?」
「クリスマスのプレゼントは諦めるしかないよ」
「あぁ……(それね)」

 マリーはため息をついて同情するような目で見てきた。

「お気の毒に……」
「…………」

 (大人なのにプレゼントを貰う子供から同情された……)



 淀み泥事件から2日後クリスマスは開催された。場所は屋敷の裏側にあるコンサバトリー。そこから見える木に色々飾りつけをしてクリスマスツリーを表現。

 (さすがにこの日のために木を切るのは可哀想だからね)

 そしてご馳走をこれでもかと用意してみんなを迎える。

「わぁぁぁー!!! すごーい!!! 夢のようなパーティーだ!」
「…………」

 嬉しくてはしゃぐマリーに対して言葉を無くして喜ぶメリー。対照的だけど2人ともとても感激してるようでよかった。

「おぉ!! これがクリスマスか! すげーな! やるじゃん、シッター!!」
「わぁ。こんなに手間暇かけて色々用意してくれたんですね。本当に何から何までありがとうございます」

 豪快に喜ぶ次男カルロスとそれまでの背景を考えてこちら側の苦労を労う長男アルベルト。こちらも違う意味で対照的なのが面白い。

「わぁーー!!!! と、父ちゃん!! すっ、スッゲェぇ~!!」
「……ふぁー……」
「はっはー!! すげぇな! さっすが花様だぜー!! 良かったな、お前ら!!」
「わぁー……。懐かしい……。あっ、クリスマスツリーに星まである!」

 へルマン家族も全員喜んでくれて嬉しい。子供たちは始めての豪華な催しに感激しているが、妻のリナは日本人らしく懐かしさに感動していた。

「喜んで貰えて良かったな!」
「飾りつけは大変でしたが皆さんがこんなに感激した姿をみたら苦労もぶっ飛びますね」

 飾り担当のオリバーとルーベンスさんが嬉しそうに苦労を労ってくれた。

「わぁ……。素敵……」
「だろ? きて良かったな!」
「うん。カルロス、ありがとう」
「なっ、いや、別に、お前のためだけじゃねぇし!!」
「うん。分かってるよ。それでも招待してくれて嬉しかったから……。私1人でごめんね……」
「あっ、いや、その、……悪い、言い過ぎた……」

 こちらはこちらで、折角宮沢さんの娘さんがわざわざ来てくれたのに相変わらずのツンデレを発揮してしまって慌てるカルロス。しょうがない助け船出してやりますか。

「メリークリスマス! 今日は来てくれて本当にありがとうございます! いっぱい食べて楽しんで下さいね? それが今回の目的ですからね!」
「はい! こちらこそありがとうございます。こんなに素敵なパーティーは生まれて始めてなので凄く嬉しいです! あっ、それとこれ父からです」
「わざわざすみません。お母様の体調は大丈夫ですか?」
「はい。母も赤ちゃんもとっても元気です。私も弟が生まれたので念願のお姉さんになれて、こちらで祝われてるような感じもして嬉しいんです!」
「ふふ。いいですね! お姉さん記念! それも含めてお祝いしましょう! 楽しいことや嬉しいことはいっぱいあるほうがいいですから!」
「はい!」

 笑顔を取り戻したカルロスの想い人にこちらも笑顔を向けると何故かカルロスが恨めしそうに少し睨んでる? あれ? 助け船失敗したかな?

「あら、皆さんに揃ったようね。じゃ、他の料理も運んで来ましょうかね?」
「あっ、私も手伝うよ!」
「ダメダメ! 花ちゃんは主催者でしょ? お兄様、こちらも手伝って下さいな!」
「相変わらず人使いが荒いですねぇ」

 おばあちゃんはルーベンスさんを引っ張ってキッチンへと向かったので花はクリスマスパーティーの開始を告げた。

「後でデザートのケーキやお菓子も出るのでその分の余裕も考えて食べて下さいねー!!」
「「「「ケーキ!!」」」」

 ケーキと聞いてテンションが上がるのはやはり子供で苦笑する。きっと今日は子供時代での楽しい1日になるだろうから全力で夢を叶えよう。

 その後料理を食べながら談笑し花とカメリアが作った渾身の特大ケーキを見てみんな大喜びをしてくれた。そしてミニゲームなどを沢山してその日は終了したが、ある意味ここからが本番だ。

 そう! 子供たちにプレゼントをバレないように靴下に入れると言うミッションが大人たちには課せられている。

「マリー! メリー! いつまでも起きてるのは果たして良い子なのでしょうか? 確か悪い子供にはプレゼントは無いのでしたよね?」
「マリーはいい子供だから、すぐに寝るよ!!」
「メリーも、寝る!」

 ルーベンス神の一声にマリーは勿論、おっとりメリーまでもが素早く就寝を決意表明してベッドに潜る。

 (よっぽど欲しいのが分かる。さすが2人の先生。良く理解してる)

「へルマンの所も上手くいくといいけど……」
「あっちは庭を駆け回ってたりへルマンといっぱい遊んでたから多分爆睡してるよ」
「さすが親。こちらもよく理解してるわ」
「じゃ、サンタクロースさん! よろしくね!」
「ははっ、まさかこんなところで冒険者スキルがいかされるとはね……」
「変装セットはバッチリだから任せて!!」
「この年でおじいさん役かぁ……」
「……ちゃんと出来たら私からもプレゼントあげるよ!」
「! 花自身?」
「っ、バカ!!」




 翌日は予想通り朝から騒がしかった。

「サンタクロースが来たー!! やっぱりマリーはいい子だったよ!!」
「……メリーにも来てた……花の言う通り、サンタクロースはいい子だって言ってくれた……うっ、うっ……」
「わっ、わっ、ど、どうしたの? メリーのプレゼント嫌だった?」
「……ううん。プレゼントの中身より……サンタクロースがメリーを……ちゃんといい子だって……思ってくれたのが……嬉しいの……」

 嬉し涙を流すメリーをそっと抱きしめて「よかったね」と背中を優しく撫でる。これでもうミム夫人から逃げてきた罪悪感も無くなるだろう。やっと呪縛が溶けたのだ。クリスマスを本当にして良かったな。

 落ち着いたメリーと共に食堂にやってくると、マリーは皆にプレゼントを自慢していた。

「あれ? メリーどうしたの?!」
「……プレゼントが嬉しくて……」
「分かる。大きい靴下を花から貰って良かったよね! いっぱい入ってたもん! これがへルマンの靴下だったら取り出すのも勇気がいるところだったよ……」

 マリーが安心するようにホッとため息をついていると、そっとアルベルトが花にお礼をいってきた。

「プレゼント、ありがとうございます。ドアノブに引っかけてくれたのってマリーですよね?」
「ふふ。さてどうでしょう? サンタクロースからかもしれませんよ? だってアルベルトさんもいい子ですからね!」

 茶目っ気に花がとぼけるとアルベルトは一瞬ビックリしてから、「そっか……」と呟いて嬉しそうに微笑んだ。

「そういえばカルロスさんは?」
「あぁ、カルロスならあそこに」

 示された場所は庭先。よく見るとボーっと空を見てる。

「フラれた?」
「いえ、逆みたいですね」
「あら? 聖なる夜に結ばれたんですね!」
「それは喜ばしいんですけど……」

 何だかあんまり嬉しそうじゃない。先を越されたのが悔しい? いや、アルベルトはそんな人じゃない。では一体?

「……うるさいんです!! 隣部屋だから昨日1日中奇声を発したり壁を叩いたり暴れたりするから寝不足ですよ!!
 しかも何度も注意したのに心ここに非ずで聞いちゃいない!! たまに自分の唇を触ってにやけたりして気味が悪いし、最悪ですよ!!」
「……この後、ゆっくり二度寝してください。マリーやメリーも近付かないようにしますので……」

 (多分、告白が上手くいって雰囲気も良かったんだろう。そのまま大好きな彼女とキス出来て夢ごこちのまま、嬉しくて恥ずかしくて悶えてたんだろうね……そして被害者兄は睡眠不足)

 色々あった最初のクリスマスはこうして幕を閉じた。

 そして翌年から毎年クリスマスを開催することになり、それは次第に口コミで広がり数年後は国のお祭として皆に愛されるようになるのだった。
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