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第一章
17.僕女子だし~
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「リリィ・テイク・ア・ルーツ……はぁぁぁぁぁぁ!!」
数十、数百、数千……数万と、僕の周囲の空間を夥しい数の種が埋め尽くす。
「うっ……」
一瞬貧血のようにクラリとするが、地を踏みしめて堪える。明らかに魔力の使いすぎだ。
だけど、ここで倒れるわけにはいかない。
チラリと横目で、建物の陰から熱いエールを視線で送ってくる努を見る。ここで倒れると言うことは、僕も努も、一緒に戦ってるサンもレインも皆殺されるってことだなんだ。
「いっけぇえええ!」
まるで襲撃者を襲うスズメバチのように、花の種が鷹の魔獣に襲いかかる。
それまでヒラリとほとんどの攻撃をよけていた魔獣も、さすがにこれはかわしきれないようで。
ツトトトトと種は鳥の皮膚に突き刺さった。
「スプラウト・アンド・ブルーム!」
僕の放った種が、一斉に発芽する。
全長が五メートルほどある鷹は、明らかに物理法則では飛んでいなかった。
予想通り魔力で風を吹かせていたようで、信じられないほどの百合の花に魔力を吸われるとその魔法を維持できなくなり、大きな地響きを鳴らしながら落下した。
「後は……頼んだ……!」
「任せて! 今度こそ、焼き鳥にしてやるんだから!」
「行くわよサン! レッツ・イグニッション!」
レインの詠唱で、サンの持つ刀に火が纏わり付いた。
「喰らえー! フレイミング・スラッッッシュ!!」
燃えさかる刃は炎の尾を引きながら、百合まみれになった鷹の首を飛ばした。
「うっしゃあ! 次はあんたの……っていないし!」
魔獣が白いモヤになるのも待たず、先ほどまで魔人がいた方へ刀を向けるサン。しかしもうそこには誰もいなかった。
まあこれでひとまず戦闘は終わった……。
「うぅ……」
気が抜けると同時に、魔力を使いすぎたせいかめまいを覚えて倒れる。
それに気付いたサンとレインが慌てて駆け寄ってくるのが見えた……が、ピタリと二人が立ち止まった。
どうしたんだろう? そう思った瞬間、フワリと身体が持ち上げられた。
「大丈夫かつぼ……リリィ」
「え?」
僕の背中と膝の裏を両腕で持ち上げたのは、努であった。
「って、なんでお姫様抱っこ!?」
酒に酔って帰って来た母さんにやってみたことがあるが、自分の体の軸から離れているからとても重いんだ。お姫様抱っこって。
確かこの姿の時は四八キログラムだったはず。痩せている方とは言え、軽々と抱えられるほど軽くはないだろう。
「いや、お前スカートだろう」
あ、確かに。基本的に非効率的な抱き方のお姫様抱っこだけど、抱っこされる側がスカートを穿いているときに中身が見えないという利点がある。
「って、そもそも抱っこしなくて良いだろ!!」
「あのー……」
「はっ!?」
ガッツリサンとレインに見られた!
恥ずかしさが込み上げて来て、顔が赤くなるのが分かった。
「み、見るなぁ……」
穴があったら入りたい……。せめて顔を隠そうと、努の胸に顔を埋めることしか出来なかった。
「いや、そんな見るなって言われても……」
「ええと、お二人はお知り合い……? えっと、あなたはうちの高校の先輩ですよね?」
レインが努に尋ねる。男子はネクタイ。女子はリボンの色で学年が分かるんだ。
「ああ。俺は三年A組の広瀬努だ。一応政府公認の、こいつの協力者だ」
「あ! あなたがあの正夫!」
何なんだ……前も聞いたぞその正夫ってワード……。
「あれ、お兄さんのことなのに知らないの未咲?」
お兄さん。つまり僕のことだ。僕自身に関することなのだろうか。
「広瀬先輩って、蕾先輩といつも一緒にいて、恋仲を噂されても否定せず、それどころか蕾先輩が男の人に告白されてる所にやって来て「俺がいるから」って連れ去っていった正夫って学校中の噂なのよ」
「あぁ……」
……あの時のことか。てかあの男子言いふらしたのか。
「……となると、蕾先輩繋がりで未咲さんが魔法少女になったって知って、協力者になったってことですか?」
「あー、うん。そう」
本当は僕と努だけの関係だから、ずいぶんとややこしい。その内ボロを出しそうだ。
「へぇ……ねえねえ努先輩」
「なんだ?」
「努先輩は結局どっちが本命なの?」
ニヤニヤしながら訊ねてくるサン。なんでこう女子って恋バナが好きなのか……!
「ブッ、ぼ、僕……じゃない。お兄ちゃんは男だよ!?」
「だって前々から正夫って言われてるし……」
「つ、努はどう思ってるのさ!」
まさか努、同性愛の気があったりしないよな……!?
「いや、俺と蕾はあくまで親友だぞ。あいつが告られて断り切れてなかったからそう言っただけだし」
「へ~? じゃあ未咲のことはどう思ってるの?」
「ちょっと茜……」
「んー、未咲? も、別にそう言う目では見てないぞ。世話のかかる妹みたいな……」
「世話のかかる妹で悪かったな!」
なぜか努のその答えにイラッときた僕は、力をセーブして顎を殴ってお姫様抱っこを抜け出した。
「いって~! 何すんだよ!」
「別に~?」
僕は腕を組んで不機嫌を表現する……が、なんでこんなにイライラしているのか自分でもよく分からないでいた。
「ったく、姉ちゃんみたいな怒り方しやがって……」
「え、お前お姉さんいたの?」
何それ初耳だ。
「あー、もう社会人でな。長期休みとかにしか帰ってこないから、お前に言う機会もなくてな」
「へー、そうなんだ」
なんだなんだ。もう付き合いも三年目になるのに、そんなことも教えてくれてなかったのか……。
あ、ダメだ。イライラが止まらない。
僕がそっぽを向くと、向いた先にサンとレインがいて……なぜか二人ともニヤニヤとした顔で僕を見ていた。
「な、なに?」
「いや~? 別に~?」
「なるほどなるほど、そう言う関係なのね」
「な、なんか勘違いしてない?」
「分かって分かってる。みなまでいうな……ってやつよ」
ううぅ、あらぬ誤解を受けた気がする……。
その後やって来た魔獣対策課の人に戦闘の後処理を頼むと、僕たちは変身を解いて(茜ちゃんと蒼衣ちゃんだけ)打ち上げに向かっていた。
「なあ、俺も行って良いのか? その……」
「魔女子会ですか? もちろん。広瀬先輩はブルーミングリリィの協力者なんですから」
さも当然かのように言う蒼衣ちゃんだけど、何か含むところがありそうだ。
「前は焼き肉だったけど、今日はどこに行くの?」
「うーん、努先輩がいるから焼き肉でも良いけど、実はこの前オープンした店があって……」
「茜がどうしても行きたいって前からうるさくてね。まあ場所が遠くて普段行けないから、せっかくの機会だしそこに行こうってなったの」
へぇ、一体どこなんだろう?
具体的には教えてくれず、着いてからのお楽しみらしい。
「ここよ!」
「こ、ここって……」
僕たちの目の前には、黒い風船が浮かぶ異様な光景。
たくさんのお洒落女子が押し寄せていて、あちこちでスマホのカメラのシャッター音が鳴り響いている。
「そう! タピオカキングダム!」
それは数ヶ月前に東京で始まり、今は全国七店舗まで拡大したタピオカのテーマパークだった。
「こ、ここに入るのか……」
努のひるむ声が聞こえた。
「あっれー? 努くんびびってるのかな~?」
「なっ! お前は平気なのかよ!?」
珍獣を見るような目で見てくる努。失礼じゃないだろうか。
「僕女子だし~、っていうのは置いといて、実は僕も前から気になってたんだよね。タピオカ」
ブラックジョーク? を挟みながら、正直に白状する。
あの黒くて丸いフォルム。ツルッとした舌触りに、モチモチとした食感……と噂されるタピオカ。
わりと以前からコンビニの棚の前で買うか悩んでいたりしたのだ。
しかし流行り物と言うこともあって値段も高いし、本当に美味しいかもわからない。
今まで手を出せずにいたのだ。
「お? なになに未咲も乗り気だね~?」
「うん。楽しみ」
なんだろう? 男の蕾ならまだしも、女の未咲がタピオカに興味あるのがおかしいだろうか?
「いや、蕾先輩の妹だけあって、未咲もなかなかお嬢様な感じだからさ。古き良きを大切にして、流行り物には手を出さなさそうなイメージが……」
「なにそれ……? 言っとくけど、うち貧乏だよ。母さんの実家はお金持ちだけどねぇ」
そんなことよりも早速注文したい。僕も気付かない内に、ファンシーな内装にテンションが上がっていたようだ。
無駄話もそこそこに列に並び、各々注文するメニューを決める。
決める。
決め……。
「つとむ」
「おい、さすがにその格好ではキツいぞ」
「むう……」
僕は今迷っている。
タピオカチョコレートミルクティーと、タピオカストロベリーミルクティー。
どっちにすべきか。
努と半々にする作戦はなぜか却下された。いや、なぜかは分かるんだけど……。
「俺はこのタピオカバナナチョコクレープにするかな」
「なに!?」
く、クレープ、だと……!?
な、なんて汚い……! 飲み物しかないと思っていたから、迷う物も飲み物だけで悩んでいたのに……まさか食べ物まであるなんて!
その時、僕は決めた。
見た目の性別がなんぼのもんじゃい。僕は両方食べたいんだ。ほら、協力者なんだから無理矢理にでも協力させてやる……と。
努がタピオカチョコバナナクレープを頼んだのを確認し、今度は僕が注文する番。
僕は清々しい顔で店員さんに「タピオカストロベリーミルクティーお願いします」と頼むのであった。
数十、数百、数千……数万と、僕の周囲の空間を夥しい数の種が埋め尽くす。
「うっ……」
一瞬貧血のようにクラリとするが、地を踏みしめて堪える。明らかに魔力の使いすぎだ。
だけど、ここで倒れるわけにはいかない。
チラリと横目で、建物の陰から熱いエールを視線で送ってくる努を見る。ここで倒れると言うことは、僕も努も、一緒に戦ってるサンもレインも皆殺されるってことだなんだ。
「いっけぇえええ!」
まるで襲撃者を襲うスズメバチのように、花の種が鷹の魔獣に襲いかかる。
それまでヒラリとほとんどの攻撃をよけていた魔獣も、さすがにこれはかわしきれないようで。
ツトトトトと種は鳥の皮膚に突き刺さった。
「スプラウト・アンド・ブルーム!」
僕の放った種が、一斉に発芽する。
全長が五メートルほどある鷹は、明らかに物理法則では飛んでいなかった。
予想通り魔力で風を吹かせていたようで、信じられないほどの百合の花に魔力を吸われるとその魔法を維持できなくなり、大きな地響きを鳴らしながら落下した。
「後は……頼んだ……!」
「任せて! 今度こそ、焼き鳥にしてやるんだから!」
「行くわよサン! レッツ・イグニッション!」
レインの詠唱で、サンの持つ刀に火が纏わり付いた。
「喰らえー! フレイミング・スラッッッシュ!!」
燃えさかる刃は炎の尾を引きながら、百合まみれになった鷹の首を飛ばした。
「うっしゃあ! 次はあんたの……っていないし!」
魔獣が白いモヤになるのも待たず、先ほどまで魔人がいた方へ刀を向けるサン。しかしもうそこには誰もいなかった。
まあこれでひとまず戦闘は終わった……。
「うぅ……」
気が抜けると同時に、魔力を使いすぎたせいかめまいを覚えて倒れる。
それに気付いたサンとレインが慌てて駆け寄ってくるのが見えた……が、ピタリと二人が立ち止まった。
どうしたんだろう? そう思った瞬間、フワリと身体が持ち上げられた。
「大丈夫かつぼ……リリィ」
「え?」
僕の背中と膝の裏を両腕で持ち上げたのは、努であった。
「って、なんでお姫様抱っこ!?」
酒に酔って帰って来た母さんにやってみたことがあるが、自分の体の軸から離れているからとても重いんだ。お姫様抱っこって。
確かこの姿の時は四八キログラムだったはず。痩せている方とは言え、軽々と抱えられるほど軽くはないだろう。
「いや、お前スカートだろう」
あ、確かに。基本的に非効率的な抱き方のお姫様抱っこだけど、抱っこされる側がスカートを穿いているときに中身が見えないという利点がある。
「って、そもそも抱っこしなくて良いだろ!!」
「あのー……」
「はっ!?」
ガッツリサンとレインに見られた!
恥ずかしさが込み上げて来て、顔が赤くなるのが分かった。
「み、見るなぁ……」
穴があったら入りたい……。せめて顔を隠そうと、努の胸に顔を埋めることしか出来なかった。
「いや、そんな見るなって言われても……」
「ええと、お二人はお知り合い……? えっと、あなたはうちの高校の先輩ですよね?」
レインが努に尋ねる。男子はネクタイ。女子はリボンの色で学年が分かるんだ。
「ああ。俺は三年A組の広瀬努だ。一応政府公認の、こいつの協力者だ」
「あ! あなたがあの正夫!」
何なんだ……前も聞いたぞその正夫ってワード……。
「あれ、お兄さんのことなのに知らないの未咲?」
お兄さん。つまり僕のことだ。僕自身に関することなのだろうか。
「広瀬先輩って、蕾先輩といつも一緒にいて、恋仲を噂されても否定せず、それどころか蕾先輩が男の人に告白されてる所にやって来て「俺がいるから」って連れ去っていった正夫って学校中の噂なのよ」
「あぁ……」
……あの時のことか。てかあの男子言いふらしたのか。
「……となると、蕾先輩繋がりで未咲さんが魔法少女になったって知って、協力者になったってことですか?」
「あー、うん。そう」
本当は僕と努だけの関係だから、ずいぶんとややこしい。その内ボロを出しそうだ。
「へぇ……ねえねえ努先輩」
「なんだ?」
「努先輩は結局どっちが本命なの?」
ニヤニヤしながら訊ねてくるサン。なんでこう女子って恋バナが好きなのか……!
「ブッ、ぼ、僕……じゃない。お兄ちゃんは男だよ!?」
「だって前々から正夫って言われてるし……」
「つ、努はどう思ってるのさ!」
まさか努、同性愛の気があったりしないよな……!?
「いや、俺と蕾はあくまで親友だぞ。あいつが告られて断り切れてなかったからそう言っただけだし」
「へ~? じゃあ未咲のことはどう思ってるの?」
「ちょっと茜……」
「んー、未咲? も、別にそう言う目では見てないぞ。世話のかかる妹みたいな……」
「世話のかかる妹で悪かったな!」
なぜか努のその答えにイラッときた僕は、力をセーブして顎を殴ってお姫様抱っこを抜け出した。
「いって~! 何すんだよ!」
「別に~?」
僕は腕を組んで不機嫌を表現する……が、なんでこんなにイライラしているのか自分でもよく分からないでいた。
「ったく、姉ちゃんみたいな怒り方しやがって……」
「え、お前お姉さんいたの?」
何それ初耳だ。
「あー、もう社会人でな。長期休みとかにしか帰ってこないから、お前に言う機会もなくてな」
「へー、そうなんだ」
なんだなんだ。もう付き合いも三年目になるのに、そんなことも教えてくれてなかったのか……。
あ、ダメだ。イライラが止まらない。
僕がそっぽを向くと、向いた先にサンとレインがいて……なぜか二人ともニヤニヤとした顔で僕を見ていた。
「な、なに?」
「いや~? 別に~?」
「なるほどなるほど、そう言う関係なのね」
「な、なんか勘違いしてない?」
「分かって分かってる。みなまでいうな……ってやつよ」
ううぅ、あらぬ誤解を受けた気がする……。
その後やって来た魔獣対策課の人に戦闘の後処理を頼むと、僕たちは変身を解いて(茜ちゃんと蒼衣ちゃんだけ)打ち上げに向かっていた。
「なあ、俺も行って良いのか? その……」
「魔女子会ですか? もちろん。広瀬先輩はブルーミングリリィの協力者なんですから」
さも当然かのように言う蒼衣ちゃんだけど、何か含むところがありそうだ。
「前は焼き肉だったけど、今日はどこに行くの?」
「うーん、努先輩がいるから焼き肉でも良いけど、実はこの前オープンした店があって……」
「茜がどうしても行きたいって前からうるさくてね。まあ場所が遠くて普段行けないから、せっかくの機会だしそこに行こうってなったの」
へぇ、一体どこなんだろう?
具体的には教えてくれず、着いてからのお楽しみらしい。
「ここよ!」
「こ、ここって……」
僕たちの目の前には、黒い風船が浮かぶ異様な光景。
たくさんのお洒落女子が押し寄せていて、あちこちでスマホのカメラのシャッター音が鳴り響いている。
「そう! タピオカキングダム!」
それは数ヶ月前に東京で始まり、今は全国七店舗まで拡大したタピオカのテーマパークだった。
「こ、ここに入るのか……」
努のひるむ声が聞こえた。
「あっれー? 努くんびびってるのかな~?」
「なっ! お前は平気なのかよ!?」
珍獣を見るような目で見てくる努。失礼じゃないだろうか。
「僕女子だし~、っていうのは置いといて、実は僕も前から気になってたんだよね。タピオカ」
ブラックジョーク? を挟みながら、正直に白状する。
あの黒くて丸いフォルム。ツルッとした舌触りに、モチモチとした食感……と噂されるタピオカ。
わりと以前からコンビニの棚の前で買うか悩んでいたりしたのだ。
しかし流行り物と言うこともあって値段も高いし、本当に美味しいかもわからない。
今まで手を出せずにいたのだ。
「お? なになに未咲も乗り気だね~?」
「うん。楽しみ」
なんだろう? 男の蕾ならまだしも、女の未咲がタピオカに興味あるのがおかしいだろうか?
「いや、蕾先輩の妹だけあって、未咲もなかなかお嬢様な感じだからさ。古き良きを大切にして、流行り物には手を出さなさそうなイメージが……」
「なにそれ……? 言っとくけど、うち貧乏だよ。母さんの実家はお金持ちだけどねぇ」
そんなことよりも早速注文したい。僕も気付かない内に、ファンシーな内装にテンションが上がっていたようだ。
無駄話もそこそこに列に並び、各々注文するメニューを決める。
決める。
決め……。
「つとむ」
「おい、さすがにその格好ではキツいぞ」
「むう……」
僕は今迷っている。
タピオカチョコレートミルクティーと、タピオカストロベリーミルクティー。
どっちにすべきか。
努と半々にする作戦はなぜか却下された。いや、なぜかは分かるんだけど……。
「俺はこのタピオカバナナチョコクレープにするかな」
「なに!?」
く、クレープ、だと……!?
な、なんて汚い……! 飲み物しかないと思っていたから、迷う物も飲み物だけで悩んでいたのに……まさか食べ物まであるなんて!
その時、僕は決めた。
見た目の性別がなんぼのもんじゃい。僕は両方食べたいんだ。ほら、協力者なんだから無理矢理にでも協力させてやる……と。
努がタピオカチョコバナナクレープを頼んだのを確認し、今度は僕が注文する番。
僕は清々しい顔で店員さんに「タピオカストロベリーミルクティーお願いします」と頼むのであった。
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