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第一章
18.おぉっと! 手が滑ったー!
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未咲用のスマホを取り出し、ミルクティーを撮っていると、努が覗き込んできた。
「お前、その携帯……」
「んー? わたしのスマホだよ」
そういう設定だ。という念を込めてアイコンタクトを送ると、ちゃんと伝わったのか妙に納得したような顔で頷いていた。
「あ、そうだ」
僕はあることを思いつき、努に詰め寄った。
「ねえね努、コネクトン交換しようよ」
「は? なんで?」
確かに蕾の携帯ではもう友達登録はされている。連絡をとるという目的的にはわざわざ改めて連絡先を交換する必要はない。
「戦闘でスマホ壊れて新しくして、連絡先入ってるの二人と母さんだけだから……」
本当か? 訝しげな視線を送ってくる努に、曖昧な微笑みで返す。
というか、いくら病気で外に出られない設定(勘違いをそのまま利用させてもらっているだけだけど)とはいえ、いつまでも連絡先が三人しかいないというのも怪しい。
現に画面を覗き込まれたときに「まだお友達と会ってないの?」と聞かれた。
まあここから先、こっちのスマホに友達が増える予定はないのだけど……。
せめて事情を知る努を巻き込んでやろうと思ったのだ。
「良いから良いから」
まあ事情を知らない二人の手前、断り辛いだろう。
僕が無理矢理距離を詰めると、仰け反る努。失礼なやつだな。
「わ、わかったからな、一回落ち着け」
「よしっ」
その場でQRコードで友達追加し、未咲のスマホのコネクトンに努が追加された。
四人目だ……!
蕾の方は元クラスメイトと、今のクラスメイトが無駄に登録されていてありがたみも何もないけど、こうして片手で数えられる位しかいないと一人増えただけで随分嬉しく感じる。
あれかな。コレクション欲なのかな。
それにしても、茜ちゃんと蒼衣ちゃんとの付き合いも大変だ。
別に二人の性格に問題があるとかじゃないけど、正体を隠したままっていうのが一番辛い。
それに、僕が元から女の子だったなら良かったのだけど、元々は男と言うことで、今時の女子高生が何を話すのか……恋人もいたことがない僕にはサッパリだ。
「じゃ、さっそくいただきましょうか」
「うんうん!」
「いただきまーす」
さて、撮影会が終わり、いざ実食。
太いストローに口を付け、啜ってみる。
最初に口に飛び込んできたのは、酸味がほんのり効いた爽やかなイチゴの香り。
ストロベリーミルクティーなので、味はそこまでイチゴじゃない。
そして口いっぱいにその香りが満ちたと思ったら、次の瞬間個体が飛び込んできた。
それも数個いっぺんに。
「ん!」
吸うのをやめ、タピオカを噛む……すごい。モチモチしてる……。
思っていたよりずっと歯ごたえがあって、食感が楽しい。
「ほうほう……これはなかなか癖になる」
聞いていた通り、タピオカ自体には味はない。けどなんだろう……例えるなら、キウイジュースに入ってる種みたいな……?
飲み物なのに食感があるって言うのが良い。今気付いたけど、僕はそういうのが好きらしい……。
「うーん、今度スーパーに売ってるやつとか飲み比べしてみようかな」
「未咲ちゃんはすごく気に入ったのね? それに比べて茜は……」
見れば、なんとも言えない微妙な表情をしている茜ちゃん。
「なんて言うか……思ってたより地味……」
「茜が来たい来たい言ってたから来たのに……」
「だってぇ」
今まで話してきた感じ、茜ちゃんは今時の女子高生らしく、流行り物には片っ端から手を出してははまりもせず飽きるタイプらしい。
逆に蒼衣ちゃんは、あんまり新しい物に対しての食いつきは少ないけど、はまれば流行が過ぎても一人楽しんでいるタイプだ。
色々と性格が真逆な二人だけど、けっこう……いやかなり仲が良い。そう言えば馴れ初めとか聞いたことないなぁ……。
「ねね、二人っていつから仲良くなったの?」
「いつからだったっけ……確か……三歳だっけ?」
「二歳よ」
「んぐっ」
ちょっと想定外の答えが返ってきて、タピオカを喉に詰まらせるかと思った。
いや二歳って!
「まあさすがに当時のことは覚えてないけど……一番古い記憶だと、五歳かな? 幼稚園の遠足で蒼衣が足挫いて、ワタシがおんぶしたの」
「そもそもあれは、あんたがうろちょろして自転車にぶつかりそうになったのを庇ったんじゃない」
「あれ? そうだっけ?」
「……本当に二人とも小さい頃から仲良良いんだね」
僕は少し羨ましくなった。家の手伝いをするようになった頃から友達とは疎遠になり、それより前から今日まで続く友達なんていないんだ……。
「そういう未咲は、努先輩と知り合ってどれくらいなのさ?」
「まだ二年ちょっとだよ」
僕が答えると、二人とも意外そうな顔をした。
「なんて言うか……熟年夫婦みたいな雰囲気を醸し出していたから」
「ゴホッ! ゴホッ!」
今度こそタピオカが喉に詰まった。
むせながら僕は必死に首を振る。
「な、なにさ熟年夫婦って!」
「それはそうと、どうやって知り合ったのか教えてよ!」
「んんっ……」
何だか話をそらされた気もしないでもないけど、僕は僕の記憶にある努との出会いを語った。
本当は、入学式の時にPTAの代表の人が話してる時に振り向いて「この学校は校長よりPTAのおばさんの方が話し長いんだな」って言ってきたあの珍事件が出会いのだけど……。
まず、僕は努より年下という設定だ。そしてもし同学年だったとしても、入学式は男女で分かれて座るから、努が僕に話しかけることは出来ないのだ。
さらに僕は常夏高校には通っていない設定なので、高校でのエピソードを語るわけにはいかないのだ。
僕が頭を悩ませていると、努がはーっとため息をついて僕の頭を軽く叩いた。
「な、なにするのさー」
「お前やっぱり覚えてなかったのか……」
「え、なにを?」
んんん? 話が見えない。努は何のことを言っているのだろう?
「えーと、茜ちゃんに蒼衣ちゃん? 俺がつ……未咲と出会ったはもっと前。まだ小学生の頃だよ」
「えっ!? そうなの!?」
驚きの声を上げたのはもちろん僕。
いやだって、今までずっと高校に入学した日に知り合ったと思っていたから……。
「学校が違って、近所の公園で会うくらいだったんだけど、他のやつがサッカーとか鬼ごっこやってんのに、こいつ草の中に座っててな。何してんだーって聞いたら、花を見てるんだよって……最初どこのお嬢様かと思ったよ」
「それはなんて言うか……未咲らしいね」
う、うん……その頃はまだ男女の性差も少なくて、僕も結構性別を間違われることが多かった。
いや、原因は母さんなんだ。
お金持ちの実家から出て数年。当時の母さんは依然として庶民のセンスが身についてなくて、僕に買い与える服も少し少女趣味だった。そのせいだ。
ともかく、どうやらまだ僕がわがままな子供だった時に、努と出会っていたらしい。
「それって、僕がまだ放課後公園で遊んでた頃だよね……?」
「そうだな。お前ある時から急に公園に来なくなって……お前のこと気になってたやつなんかベソかいてたぞ? ああ、もちろん男な」
「そ、それは知りたくなかった……」
二次性徴期が来て以来、女の子と間違われることはなくなったとは言え、それより前は……色々黒歴史だ。
まだ他の男子が色気付く前だったから告白とかはなかったけど、何回かちょっかいをかけられたことがある。先生に言ったら「○○くんは蕾ちゃんのことが気になってるのよ~」と言われたことがあった。
うん。気になる女子にちょっかいをかけるませガキそのものじゃないか。冗談じゃない。
「それで、次に見たのが中学の頃だったかな?」
「え、まだ続くの」
僕が覚えていないだけで、僕と努のエピソードはまだあるらしい。
「中学は同じだったんだけど、実は全然話したりとかはなくてな」
「うっそ!? 同じ中学だったの!?」
信じられない。さすがに同中出身だったら見覚えがあるはずだ。
「まあ三年間ずっとクラス違ったし……委員会も部活も何も被ってなかったしな。たまーに廊下で見かける程度だったからなぁ」
そういえば、中学の頃は家のこと最優先で委員会も部活もやってなかったし、友達も出来なくて放課後は真っ直ぐ家に帰っていた……。
いや、高校に入ってからも似たり寄ったりだけど。
「そういうわけで、改めてちゃんと合って話したのが、高校のにゅ……」
「おぉっと! 手が滑ったー!」
それ以上はいけない!
僕は持っていた飲みかけのタピオカストロベリーミルクティーのストローを努の口にねじ込む。
未咲は常夏高校に通っていないのだ! 入学式のエピソードは内緒だ。
しかしなかなかに聡い努だ。それだけで何を言ってはいけないのかわかったのか、ズゾゾと一啜りすると、架空のエピソードを話した。
「俺が高校に入学して、蕾と出会って……それで、それ繋がりで未咲と改めて会ってな」
「なるほど……」
「なんだぁ、未咲もちゃんと幼馴染みエピソードあんじゃん!」
「あはは……、私は覚えてなかったから……」
しかし、まさかそんな昔から出会っていたなんて。それに、小学生の頃公園でちょっと話しただけなのに、ちゃんと覚えていてくれたんだ……。
改めて、努はすごいやつだと思った。
「ほら」
「あ」
僕が感心していると、努は半分ほどの大きさになったクレープを差し出してきた。
ちなみに僕が押しつけたミルクティーはもう空になっていた。
「あ、ありがとう……」
すごい、以心伝心だ。僕のミルクティーとクレープ交換計画はバレていたようだ。
ふふふ……なんだ。僕にも幼馴染み? がいたんだ。それも親友。
やばい、妙に嬉しい。
僕は少しにやけながらそれを受け取り…………そして固まった。
何でだろう。努の歯形が付いたクレープを口に含もうとした時、不思議とためらってしまった。
いっつも食べかけの物を奪ったり奪われたりするのに。どうしてだろう……。
別に不快感とかはないんだけど……妙に恥ずかしいような、心臓が大きく鳴ったような……。
「どうした?」
「え、あ、いや、なんでもないよ」
固まる僕を不審に思ったのか、努が怪訝そうに訊ねてきて、僕は正気に戻った。
戻ったのかな? 謎の胸の高まりを誤魔化すように、勢いよく僕はクレープを口に押し込んでいったのだった。
「お前、その携帯……」
「んー? わたしのスマホだよ」
そういう設定だ。という念を込めてアイコンタクトを送ると、ちゃんと伝わったのか妙に納得したような顔で頷いていた。
「あ、そうだ」
僕はあることを思いつき、努に詰め寄った。
「ねえね努、コネクトン交換しようよ」
「は? なんで?」
確かに蕾の携帯ではもう友達登録はされている。連絡をとるという目的的にはわざわざ改めて連絡先を交換する必要はない。
「戦闘でスマホ壊れて新しくして、連絡先入ってるの二人と母さんだけだから……」
本当か? 訝しげな視線を送ってくる努に、曖昧な微笑みで返す。
というか、いくら病気で外に出られない設定(勘違いをそのまま利用させてもらっているだけだけど)とはいえ、いつまでも連絡先が三人しかいないというのも怪しい。
現に画面を覗き込まれたときに「まだお友達と会ってないの?」と聞かれた。
まあここから先、こっちのスマホに友達が増える予定はないのだけど……。
せめて事情を知る努を巻き込んでやろうと思ったのだ。
「良いから良いから」
まあ事情を知らない二人の手前、断り辛いだろう。
僕が無理矢理距離を詰めると、仰け反る努。失礼なやつだな。
「わ、わかったからな、一回落ち着け」
「よしっ」
その場でQRコードで友達追加し、未咲のスマホのコネクトンに努が追加された。
四人目だ……!
蕾の方は元クラスメイトと、今のクラスメイトが無駄に登録されていてありがたみも何もないけど、こうして片手で数えられる位しかいないと一人増えただけで随分嬉しく感じる。
あれかな。コレクション欲なのかな。
それにしても、茜ちゃんと蒼衣ちゃんとの付き合いも大変だ。
別に二人の性格に問題があるとかじゃないけど、正体を隠したままっていうのが一番辛い。
それに、僕が元から女の子だったなら良かったのだけど、元々は男と言うことで、今時の女子高生が何を話すのか……恋人もいたことがない僕にはサッパリだ。
「じゃ、さっそくいただきましょうか」
「うんうん!」
「いただきまーす」
さて、撮影会が終わり、いざ実食。
太いストローに口を付け、啜ってみる。
最初に口に飛び込んできたのは、酸味がほんのり効いた爽やかなイチゴの香り。
ストロベリーミルクティーなので、味はそこまでイチゴじゃない。
そして口いっぱいにその香りが満ちたと思ったら、次の瞬間個体が飛び込んできた。
それも数個いっぺんに。
「ん!」
吸うのをやめ、タピオカを噛む……すごい。モチモチしてる……。
思っていたよりずっと歯ごたえがあって、食感が楽しい。
「ほうほう……これはなかなか癖になる」
聞いていた通り、タピオカ自体には味はない。けどなんだろう……例えるなら、キウイジュースに入ってる種みたいな……?
飲み物なのに食感があるって言うのが良い。今気付いたけど、僕はそういうのが好きらしい……。
「うーん、今度スーパーに売ってるやつとか飲み比べしてみようかな」
「未咲ちゃんはすごく気に入ったのね? それに比べて茜は……」
見れば、なんとも言えない微妙な表情をしている茜ちゃん。
「なんて言うか……思ってたより地味……」
「茜が来たい来たい言ってたから来たのに……」
「だってぇ」
今まで話してきた感じ、茜ちゃんは今時の女子高生らしく、流行り物には片っ端から手を出してははまりもせず飽きるタイプらしい。
逆に蒼衣ちゃんは、あんまり新しい物に対しての食いつきは少ないけど、はまれば流行が過ぎても一人楽しんでいるタイプだ。
色々と性格が真逆な二人だけど、けっこう……いやかなり仲が良い。そう言えば馴れ初めとか聞いたことないなぁ……。
「ねね、二人っていつから仲良くなったの?」
「いつからだったっけ……確か……三歳だっけ?」
「二歳よ」
「んぐっ」
ちょっと想定外の答えが返ってきて、タピオカを喉に詰まらせるかと思った。
いや二歳って!
「まあさすがに当時のことは覚えてないけど……一番古い記憶だと、五歳かな? 幼稚園の遠足で蒼衣が足挫いて、ワタシがおんぶしたの」
「そもそもあれは、あんたがうろちょろして自転車にぶつかりそうになったのを庇ったんじゃない」
「あれ? そうだっけ?」
「……本当に二人とも小さい頃から仲良良いんだね」
僕は少し羨ましくなった。家の手伝いをするようになった頃から友達とは疎遠になり、それより前から今日まで続く友達なんていないんだ……。
「そういう未咲は、努先輩と知り合ってどれくらいなのさ?」
「まだ二年ちょっとだよ」
僕が答えると、二人とも意外そうな顔をした。
「なんて言うか……熟年夫婦みたいな雰囲気を醸し出していたから」
「ゴホッ! ゴホッ!」
今度こそタピオカが喉に詰まった。
むせながら僕は必死に首を振る。
「な、なにさ熟年夫婦って!」
「それはそうと、どうやって知り合ったのか教えてよ!」
「んんっ……」
何だか話をそらされた気もしないでもないけど、僕は僕の記憶にある努との出会いを語った。
本当は、入学式の時にPTAの代表の人が話してる時に振り向いて「この学校は校長よりPTAのおばさんの方が話し長いんだな」って言ってきたあの珍事件が出会いのだけど……。
まず、僕は努より年下という設定だ。そしてもし同学年だったとしても、入学式は男女で分かれて座るから、努が僕に話しかけることは出来ないのだ。
さらに僕は常夏高校には通っていない設定なので、高校でのエピソードを語るわけにはいかないのだ。
僕が頭を悩ませていると、努がはーっとため息をついて僕の頭を軽く叩いた。
「な、なにするのさー」
「お前やっぱり覚えてなかったのか……」
「え、なにを?」
んんん? 話が見えない。努は何のことを言っているのだろう?
「えーと、茜ちゃんに蒼衣ちゃん? 俺がつ……未咲と出会ったはもっと前。まだ小学生の頃だよ」
「えっ!? そうなの!?」
驚きの声を上げたのはもちろん僕。
いやだって、今までずっと高校に入学した日に知り合ったと思っていたから……。
「学校が違って、近所の公園で会うくらいだったんだけど、他のやつがサッカーとか鬼ごっこやってんのに、こいつ草の中に座っててな。何してんだーって聞いたら、花を見てるんだよって……最初どこのお嬢様かと思ったよ」
「それはなんて言うか……未咲らしいね」
う、うん……その頃はまだ男女の性差も少なくて、僕も結構性別を間違われることが多かった。
いや、原因は母さんなんだ。
お金持ちの実家から出て数年。当時の母さんは依然として庶民のセンスが身についてなくて、僕に買い与える服も少し少女趣味だった。そのせいだ。
ともかく、どうやらまだ僕がわがままな子供だった時に、努と出会っていたらしい。
「それって、僕がまだ放課後公園で遊んでた頃だよね……?」
「そうだな。お前ある時から急に公園に来なくなって……お前のこと気になってたやつなんかベソかいてたぞ? ああ、もちろん男な」
「そ、それは知りたくなかった……」
二次性徴期が来て以来、女の子と間違われることはなくなったとは言え、それより前は……色々黒歴史だ。
まだ他の男子が色気付く前だったから告白とかはなかったけど、何回かちょっかいをかけられたことがある。先生に言ったら「○○くんは蕾ちゃんのことが気になってるのよ~」と言われたことがあった。
うん。気になる女子にちょっかいをかけるませガキそのものじゃないか。冗談じゃない。
「それで、次に見たのが中学の頃だったかな?」
「え、まだ続くの」
僕が覚えていないだけで、僕と努のエピソードはまだあるらしい。
「中学は同じだったんだけど、実は全然話したりとかはなくてな」
「うっそ!? 同じ中学だったの!?」
信じられない。さすがに同中出身だったら見覚えがあるはずだ。
「まあ三年間ずっとクラス違ったし……委員会も部活も何も被ってなかったしな。たまーに廊下で見かける程度だったからなぁ」
そういえば、中学の頃は家のこと最優先で委員会も部活もやってなかったし、友達も出来なくて放課後は真っ直ぐ家に帰っていた……。
いや、高校に入ってからも似たり寄ったりだけど。
「そういうわけで、改めてちゃんと合って話したのが、高校のにゅ……」
「おぉっと! 手が滑ったー!」
それ以上はいけない!
僕は持っていた飲みかけのタピオカストロベリーミルクティーのストローを努の口にねじ込む。
未咲は常夏高校に通っていないのだ! 入学式のエピソードは内緒だ。
しかしなかなかに聡い努だ。それだけで何を言ってはいけないのかわかったのか、ズゾゾと一啜りすると、架空のエピソードを話した。
「俺が高校に入学して、蕾と出会って……それで、それ繋がりで未咲と改めて会ってな」
「なるほど……」
「なんだぁ、未咲もちゃんと幼馴染みエピソードあんじゃん!」
「あはは……、私は覚えてなかったから……」
しかし、まさかそんな昔から出会っていたなんて。それに、小学生の頃公園でちょっと話しただけなのに、ちゃんと覚えていてくれたんだ……。
改めて、努はすごいやつだと思った。
「ほら」
「あ」
僕が感心していると、努は半分ほどの大きさになったクレープを差し出してきた。
ちなみに僕が押しつけたミルクティーはもう空になっていた。
「あ、ありがとう……」
すごい、以心伝心だ。僕のミルクティーとクレープ交換計画はバレていたようだ。
ふふふ……なんだ。僕にも幼馴染み? がいたんだ。それも親友。
やばい、妙に嬉しい。
僕は少しにやけながらそれを受け取り…………そして固まった。
何でだろう。努の歯形が付いたクレープを口に含もうとした時、不思議とためらってしまった。
いっつも食べかけの物を奪ったり奪われたりするのに。どうしてだろう……。
別に不快感とかはないんだけど……妙に恥ずかしいような、心臓が大きく鳴ったような……。
「どうした?」
「え、あ、いや、なんでもないよ」
固まる僕を不審に思ったのか、努が怪訝そうに訊ねてきて、僕は正気に戻った。
戻ったのかな? 謎の胸の高まりを誤魔化すように、勢いよく僕はクレープを口に押し込んでいったのだった。
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