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47: お出かけする二人の少年の話 19
しおりを挟む「ツァイト、一回だけ俺に付き合え」
「んっ」
くたりとレステラーにもたれながら、ツァイトは息を整える。
ツァイトの背を支える手とは反対の手が、成長して伸びたツァイトの亜麻色の髪をかき上げ、あらわになった首筋にレステラーが口づけをする。
そのまま快感を引きずる出すように首筋を舐めてくる舌に、達したばかりの身体がびくりと震えた。
「いっ、かい……?」
「そんなに酷くしねえよ。一回で止めてやる、今はな」
一瞬、朦朧としている頭では何を言われたのか分からなかったが、ツァイトの腿にあたる硬いものにその言葉が意味することに気づかされる。
まともにレステラーの顔を見ていられなくて、頬を赤く染めながらそっぽを向く。
「お、オレ、もう……一回いった」
「知ってる。さっき呑んだからな」
「~~ッ!」
息も絶え絶えに告げた言葉に返された台詞に、二の句が継げない。
にやりと笑った後に口づけられ、舌を絡めたときに感じた味に、ツァイトの眉が僅かに寄った。
「アンタだけ気持ちよくなって、俺には我慢しろなんて不公平じゃねえ?」
「そ、それは……」
「俺が、アンタの中で一回」
ぐいっとツァイトの片足が持ちあげられ、秘所が露わになる。
後ろは浴室の壁で、前にはレステラー。
達した余韻で動かない身体は、絡みつくレステラーの腕に押さえられ、逃げ出す事も出来ない。
「もちろん、いいよな」
「え、あ、やあ、ん、んん……っ!」
無理だという拒否の言葉は、ツァイトの返答を待たずに後孔に押し入って来た、太くて熱い杭に遮られた。
どんなに口と態度で抵抗しようとも、もう何度も受け入れた事がある後孔はそれを拒みはしない。
先端が入ると、レステラーは一気に腰を突き入れて来た。
「あ、ああっ!」
奥深くまで侵入してきた熱に、ツァイトの身体が仰け反る。
ついさっき達したばかりだと言うのに、感じる中を刺激されて、またツァイトの下腹部に熱が溜まってきた。
「ずいぶん奥まで咥えこめるようになったなぁ」
「あ、ああ……あ……っ」
辛うじて床についていた片足も、レステラーに持ちあげられる。
「あ、やだ、むりぃ……お、おち、おちちゃう……れすたぁ、れすたぁ……おちるぅ」
「大丈夫だって。俺がアンタを落とすわけないだろ」
「あ、あんっ」
「ほら、腕、首に回してみな」
いわれるがままに、浴室の壁に寄り掛かっただけの不安定な身体を、レステラーの首に両手を巻きつかせてしがみつくことで支えた。
同時に後孔がぎゅうっと締り、わずかだがレステラーが眉根を寄せた。
「れすたぁ……」
「そのまましっかりつかまってろよ、動くぞ」
耳に届く心地よい声に応えるように、ツァイトがレステラーの服を握りしめた。
それを了承ととり、レステラーは動き出す。
熱い杭が中を擦りながらゆっくりと抜け、完全に抜け切る前に一気に奥まで突き戻される。
その動きを何度も何度も繰り返される。
一回だけ。
その言葉を忠実に守るつもりなのか。
いつも以上に時間をかけて、すべてを味わいつくすかのような緩慢な動きに、先に根を上げたのはツァイトの方だった。
「れ、すたぁ……、レスター……」
レステラーの首に抱き着き、喉元に頭を摺り寄せて、ツァイトが切ない声でレステラーの名前を呼ぶ。
中のいいところを何度も掠め、その度に、後ろがぎゅっぎゅと締まる。
気持ちいいがずっと続いて、思考が蕩けだす。
瞳には生理的な涙がたまり、目の前がちかちかする。
けれど決定的ななにかが足りない。
「も、もっ……と……」
息が乱れてうまく喋れない。
気を抜けばすぐにでも喘ぎ声が出てしまう。
それを堪えるように一度口の中に溜まった唾液をゴクリと飲み込んだ。
「ん? どうした」
いつもと変わらないツァイトを気遣うレステラーの声。
自分はこんなにも乱されているのに、レステラーは平然としているのが悔しい。
「もっと……ちゃ、んと、あ、はぁ……う、ごいて……っ」
朦朧とする意識を懸命に保ちながら、消えそうになるくらいか細い声で、非難する言葉を懸命に絞り出す。
「ちゃんと動いてるだろ」
「ん、んっ」
話ながらも、レステラーの動きは止む事はない。
腰を何度も突き入れながら、赤く染まっているツァイトの耳朶に軽く歯を立てる。
「や、だぁ……」
「なんで? 気持ちいいだろ。俺の、食いちぎるかってぐらい、ぎゅうぎゅうに締め付けてるぞ」
「あ、ああ……あっ」
確かに気持ちはいい。
突き入れられるたびに、中でいいところが擦れて意識が飛びそうになる。
「後で湯浴みするからいいものの、前もこんなに濡らすぐらい感じてるくせに、なにがイヤなんだ?」
「あっ、や……だって……」
何かが物足りない。
いつもの、我を忘れるような快感が欲しくて、欲しくて、仕方がないのだ。
じれったい責め苦に、我慢できなくなったツァイトが、とうとう懇願した。
「もっと、激しくして……っ! いつもみたいに、いっぱい、動いて……!」
このままじゃイケないとツァイトは訴えた。
身も心も全部ぐずぐずに蕩けて、いっそ理性も飛ばしてしまいたい。
普段の少年の姿の時には聞けない甘えた言葉に、ツァイトには気づかれないように、レステラーが口元だけで小さく笑った。
「激しくって……んなことしたら、アンタ絶対後で文句言うだろ」
「い、言わない……言わない、からぁ……」
縋りつくようにレステラーの首に抱きついたまま、「お願い、レスター」と囁く声は力なく震えている。
そんなツァイトの姿を、動きを止めてしばらく眺めた後、レステラーはわざとらしくため息を吐いた。
自分を置いて城下町に出かけて、危険な目にあったにも関わらず、一度もレステラーの名を呼んで助けを請わなかったツァイトに対して、ほんの少しお仕置きをしてやろうと思っただけなのだが、そんな声を出されてしまってはこれ以上苛めるのはかわいそうになってしまう。
相変わらず甘いなぁと、レステラーは自嘲気味に小さく笑った。
「ツァイト、顔上げろ」
レステラーの口から出る声はあくまでも甘い。
自分の肩に顔を埋めるように抱きついているツァイトの、露わになった首筋に舌を這わせながら囁く。
びくりと一度大きく震えた後、ツァイトはゆっくりと顔を上げ、彼の潤んだ深緑の双眸がレステラーを見た。
少し苛めすぎたかと思わなくもない。
それにこれ以上長引かせて臍を曲げられてしまっても困るので、レステラーはツァイトの要望に従ってやることにした。
「………しょうがねえなぁ。アンタには負けたよ」
惚れた弱みだ。
言うや否や、目の前にあるツァイトの濡れた唇に、噛みつくように口づけをする。
動きを止めていた後ろも、今までとはがらりと変わり激しく突きあげを開始した。
「ん、んん……あっ、ああっ」
嵐のように襲ってくる快感から逃げようと、ツァイトは無意識に首を横に振る。
「も、もう……ダメ……あ、ああーっ!」
敏感な部分を強く擦られて、身体を思いっきり仰け反らせながら、ツァイトはあっけなく達した。
ぎゅうっと締め付けて来た後孔に、レステラーが一瞬眉を寄せたが、そのまま二、三度、抜き差しを繰り返した後、ツァイトの中に精を吐き出した。
身体の中で感じる男の熱に、ツァイトが恍惚とした表情で無意識に息を吐く。
「れす、たぁ……」
小さく名前を呼べば、軽い口づけがツァイトの唇に与えられた。
「分かってるって。今はこれでやめてやるよ」
ツァイトが言おうとしている事を察して、レステラーが苦笑する。
その言葉を証明するように、ツァイトの中に収まっていたものがずるりと抜けていく。
そして抱えていたツァイトの足を下ろしてやった。
後ろからどろりとしたものが垂れ出てきて、太股を伝い、ツァイトはぶるりと身体を震わせた。
けれど、行為で疲れ切ったのか、ツァイトは自力で立とうとせず、レステラーの腕に支えられるがままに身体を預けていた。
「大丈夫か?」
ふわりと優しい仕草で前髪を前から後ろに梳かれて、ツァイトが視線を上げた。
そう聞くぐらいなら最初からするなとレステラーに言いたかったが、それよりも別の事がツァイトの頭を占めていた。
「……お腹……空いた……」
ぽつりと呟いた声は十分レステラーの耳にも届いたようで、レステラーが呆れたように笑ったのが見えた。
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