【本編完結】今日も推しに辿り着く前に嫉妬が激しい番に連れ戻されます

カニ蒲鉾

文字の大きさ
28 / 140

一泊二日の遠征(4)

しおりを挟む

 
 幸い大きな傷や怪我を負った者はおらず、数人の騎士団員がその場に残り賊の後始末に当たる事が決まると、あとはそのまま出発するはこびとなった。
 
 
「ラズお待たせ、出発するよ」
「……ん」
 
 
 現場の状況確認が終わり戻ってきたクオーツと再び二人きりで馬車に揺られ始めるが、シーンと静まり会話がない。
 眠気もすっかりどこかへいき、ただぼぉっと窓の外を眺め過ごしていた。
 
 
 
 *****
 
 
「そういえばさ、今日ってどこに泊まるんだっけ」
「野宿だよ」
「げぇ……」
 
 
 昼過ぎに王城を出発してから何回かの休憩を経て、段々日が傾いてきた頃。眺める景色がずっと森の中で今後も一向に抜け出す気配が見られずふと尋ね、返ってきた答えに心底げんなりしてしまった。
 自分で言うのはなんだが前世も今世も根っからの温室育ちのぼんぼんである。特に今世は生まれてこの方蝶よ花よと育てられた自覚は大分あり、記憶の中で野外で寝るということをした経験が無かった。

 そのため、野宿=危ないもの、の認識が強くある。
 
 
「うえぇ…一国の王が野宿て…マジかぁ…」
「案外やってみたらいいものだよ。それに私たちはテントだし、見張りは騎士団が夜通ししてくれる」
「ぬあぁぁ…それはそれで申し訳なさすぎる」
「風呂もないから水浴びがしたければ近くの川――」
「ラルド様の水浴びシーン見れる!?」
「見せません」
「……けち」
 
 
 ブーと口を尖らせ抗議の視線を送っている間にも次第に馬車のスピードが遅くなり、完全に止まったことを窓の外を見て確認した。
 


 
 クオーツの手を借り、とん、と地面に降り立つ。
 
 ぐぬぬぬぅ…と大きく伸びをし深呼吸を繰り返している間にも後ろでは騎士団員達がせっせと野営の準備を始めていた。
 
 
「陛下、ラズ様、本日お休みいただくテントの準備が整い次第そちらへご案内します。夕食の準備も併せて進行中ですのでもう暫しお待ちください」
「わかった」
 
 
 トールがクオーツへ報告しているのを横で聞きながら、少し離れたところではマリンが馬から荷物を下ろしている光景を見つけ、じーっと眺める。一泊二日のわりに大荷物なそれらは恐らく僕たち二人の荷物。
 思うことがあると黙っておけない性格が発揮し、とことこと近寄り邪魔にならないよう気をつけながら話しかけた。
 
 
「ねぇマリン」
「はいはい~なんです?もしかしてお腹すいちゃった?何かすぐ食べれる物あったかな…ちょっと待ってくださいね~」
「んーん、まだ大丈夫。それよりさ、マリン達は今日どこで寝る予定?ちゃんとした所で寝れる?大丈夫?見た感じみんな分のテントとか無い…よね…荷物の量的に…」
「んわっもしかしてラズ様俺達のこと心配してくれてます?ひゃ~俺の主が優しすぎて感動ぉ~」
「むむむ…はぐらかさないでよ」
 
 
 ぶくっと膨れ睨みをきかせていると、あはっと笑ったマリンは荷物を全て置き、畏まって立ち直る。
 
 
「ご心配ありがとうございます。でも本当に大丈夫ですよ、俺達はラズ様と陛下が道中快適に過ごせるよう最善を尽くすためにいます。ラズ様はのびのびと過ごしてくださいな~」
「でも…もしあれだったら僕のとこ一緒に―――」
「無理無理絶対無理、俺の首が飛ぶ、色んな意味で」
 
 
 普段陽気な人物の未だかつて無いほど即答かつ真顔は謎の迫力があり、うっ、とつまると、これ以上何も言えずすごすご戻るしか無かった。
 
 
 
 
 
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった

cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。 一途なシオンと、皇帝のお話。 ※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

処理中です...