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一泊二日の遠征(4)
しおりを挟む幸い大きな傷や怪我を負った者はおらず、数人の騎士団員がその場に残り賊の後始末に当たる事が決まると、あとはそのまま出発するはこびとなった。
「ラズお待たせ、出発するよ」
「……ん」
現場の状況確認が終わり戻ってきたクオーツと再び二人きりで馬車に揺られ始めるが、シーンと静まり会話がない。
眠気もすっかりどこかへいき、ただぼぉっと窓の外を眺め過ごしていた。
*****
「そういえばさ、今日ってどこに泊まるんだっけ」
「野宿だよ」
「げぇ……」
昼過ぎに王城を出発してから何回かの休憩を経て、段々日が傾いてきた頃。眺める景色がずっと森の中で今後も一向に抜け出す気配が見られずふと尋ね、返ってきた答えに心底げんなりしてしまった。
自分で言うのはなんだが前世も今世も根っからの温室育ちのぼんぼんである。特に今世は生まれてこの方蝶よ花よと育てられた自覚は大分あり、記憶の中で野外で寝るということをした経験が無かった。
そのため、野宿=危ないもの、の認識が強くある。
「うえぇ…一国の王が野宿て…マジかぁ…」
「案外やってみたらいいものだよ。それに私たちはテントだし、見張りは騎士団が夜通ししてくれる」
「ぬあぁぁ…それはそれで申し訳なさすぎる」
「風呂もないから水浴びがしたければ近くの川――」
「ラルド様の水浴びシーン見れる!?」
「見せません」
「……けち」
ブーと口を尖らせ抗議の視線を送っている間にも次第に馬車のスピードが遅くなり、完全に止まったことを窓の外を見て確認した。
クオーツの手を借り、とん、と地面に降り立つ。
ぐぬぬぬぅ…と大きく伸びをし深呼吸を繰り返している間にも後ろでは騎士団員達がせっせと野営の準備を始めていた。
「陛下、ラズ様、本日お休みいただくテントの準備が整い次第そちらへご案内します。夕食の準備も併せて進行中ですのでもう暫しお待ちください」
「わかった」
トールがクオーツへ報告しているのを横で聞きながら、少し離れたところではマリンが馬から荷物を下ろしている光景を見つけ、じーっと眺める。一泊二日のわりに大荷物なそれらは恐らく僕たち二人の荷物。
思うことがあると黙っておけない性格が発揮し、とことこと近寄り邪魔にならないよう気をつけながら話しかけた。
「ねぇマリン」
「はいはい~なんです?もしかしてお腹すいちゃった?何かすぐ食べれる物あったかな…ちょっと待ってくださいね~」
「んーん、まだ大丈夫。それよりさ、マリン達は今日どこで寝る予定?ちゃんとした所で寝れる?大丈夫?見た感じみんな分のテントとか無い…よね…荷物の量的に…」
「んわっもしかしてラズ様俺達のこと心配してくれてます?ひゃ~俺の主が優しすぎて感動ぉ~」
「むむむ…はぐらかさないでよ」
ぶくっと膨れ睨みをきかせていると、あはっと笑ったマリンは荷物を全て置き、畏まって立ち直る。
「ご心配ありがとうございます。でも本当に大丈夫ですよ、俺達はラズ様と陛下が道中快適に過ごせるよう最善を尽くすためにいます。ラズ様はのびのびと過ごしてくださいな~」
「でも…もしあれだったら僕のとこ一緒に―――」
「無理無理絶対無理、俺の首が飛ぶ、色んな意味で」
普段陽気な人物の未だかつて無いほど即答かつ真顔は謎の迫力があり、うっ、とつまると、これ以上何も言えずすごすご戻るしか無かった。
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