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SS・IF・パロディー
【SS】雪の日の思い出sideラルド(2)
しおりを挟むこちらを見るラズ様の視線を感じ、表情を引き締めると落とした速度を再び取り戻し近くまで駆け寄る。
自分の気持ちを切り替える意味も込め今度はしっかりラズ様の名を呼び直した。
「ラズ様」
「ラルド様!?へ、何で!?まだ訓練中ですよね!?僕お邪魔しちゃいましたか!?」
「いえ、我々は問題ありません。ただ、このような日に薄着では風邪を引いてしまいますよ」
「……あ、すみません、ご心配ありがとうございます。雪が嬉しくて飛び出してきちゃいました」
へへ、と照れくさそうに笑うラズ様の赤くなった鼻先を目に止め、考えるより先に体が動き出す。
着ていた自分の厚手のコートをラズ様の肩にふわりとかけた。
「え!?ラルド様!?」
「着ていてください。このような寒空の日です、雪も降って参りましたし、お早めにお戻りくださいね」
「……ありがとうございます、お言葉に甘えます」
ご自分の立場を理解し、ここは素直に受け入れコートで暖を取るラズ様を眺めている内に自然と笑みが浮かんでいた。
ふと、ラズ様の頭に薄らつもり始める雪に気付き払おうと伸ばした自分の手がそこへ到達する前に突如、その声は響いた。
「───ラズ」
ピタッと止めた手をラズ様に気付かれる前に素早く引き上げる。そうこうしている内に呼ばれた声に振り返ったラズ様とこちらへやって来る声の主──クオーツ様の距離が縮まっていた。
「……げ、クオーツ」
「はぁ、もっと嬉しそうな顔で出迎えておくれ」
ザッザッとこちらまでやってきたクオーツ様はチラッと一瞬私へ目をやるもすぐさまラズ様の隣に歩み寄りその頬へ手を伸ばす。
私は触れることが叶わないそこへ番であるクオーツ様はこうも簡単に到達してしまう。そんな到底口にはできない暗い思いをぐっと呑み込み二人のやり取りを空気になって見守る。
「すっかり冷えているね。誰にも言わず飛び出してきたでしょ、マリンが大騒ぎだよ」
「……だって、雪だもん」
「ふふ、幾つになっても雪で喜べるのは無邪気でいい事だね。……それは?ラルドのかい?」
「あ、そう!わざわざ僕に貸してくださったの、ご自分も寒くなってしまうのに…お優しぃ~…」
「……」
肩にはおるオーバーサイズのコートをギュッと首元まで引き上げ温まる姿をじっと眺めるクオーツ様。その目が冷ややかであることをラズ様はお気付きにならない。
「……ラルド、ありがとう私からも礼を言う」
「いえ」
「ラズそれはラルドに返しなさい。私のマントの中にお入り」
「えぇ…どうせ来るなら僕のコート持ってきてくれればよかったじゃん」
人ひとり懐に覆えるマントをはためかせ誘うクオーツ様に嫌そうな表情を隠さないラズ様。文句を言いながらもコートがない今の私の格好を見ると肩からコートをはずし丁寧にこちらへ渡してくる。
「ラルド様、寒い中貸してくださってありがとうございました、ラルド様もお風邪にはお気をつけください」
「…お心遣い感謝致します」
ほんの僅かの間にコートへ移ったラズ様の体温を受け取った腕で感じる。
「さ、部屋へ戻って冷えてしまった体を温めよう」
「その前に雪だるま作ろ」
「……元気だねぇ」
「元気元気~ここまで来たならとことん付き合え。それではラルド様、失礼します。訓練頑張ってください!」
「はい、ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げ挨拶を終えたラズ様の姿はクオーツ様のマントの中へと消えていく。最後まで残ったクオーツ様の視線に会釈を送り、それすらもこちらを見なくなると遠ざかる二人の姿が視界から見えなくなるまでその場で見送った。
雪ではしゃぐあの方を見守る役目も、
一緒に雪だるまを作る役目も、
寒いぃ~と鼻を真っ赤に染めながらくっついて来る体を懐で受け止める役目も、
ラルドである私にはやってこない。
二度とないその思い出だけが私の中で残り続ける。
どうかラズ様が幸せでありますように───
そう願いながら今日もその姿を遠くから見守っていた。
【雪の日の思い出】END
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