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SS・IF・パロディー
【SS】血は争えない(3)
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「それにしても、いつの間にラルドにお熱になってたんだろ知らなかったなぁ…」
「やけに目で追うなとは思っていたけど…あそこまでとはさすがに驚いてしまうね」
熟睡してくれた事でやっとラルドから引き離すことに成功すると、従者たちを持ち場へと戻らせ、今ここにはラズと私、熟睡するジェイドという家族水入らずの空間。
ベビーベッドへ横たえる後ろ姿をソファに腰掛け見守り、役目を終えヘロヘロな様子で戻ってきたラズを腕の中へ迎え入れる。心底疲れたのか素直に甘えてくる姿が珍しい。
「ふふ、お疲れ様」
「はぁー…ハイハイできるようになったのもつい最近だよ?なのに一人であの距離を移動するなんて……ポテンシャル高すぎ、すっごい熱量だよね」
「私たちそれぞれに似ちゃったかな」
「……」
「ん?なぁに?」
何か言いたげに大きな瞳でじーっと見つめてくるラズの頬を優しく撫でる。
「そこは嫉妬しないんだなぁ、って思って。ジェイドがラルドにお熱なこと。クオーツも大概親バカじゃん」
「んー…もちろん変なやつにちょっかい出されるのは親として黙っていないけど、あの子が誰を愛すかはあの子の自由かなって割り切ってるよ。第二の性はまだわからないけど、恐らく狙った獲物は逃がさない。───私の子だからね」
「こっわぁ……」
ブルっと震えるラズに微笑むと、壊れ物のように大切に持ち上げた両頬を優しく撫でながらそっと唇にキスを落とす。
「捕まっちゃったね」
「……悪いアルファだ」
「そうだなぁ、そんな悪いアルファと今からいけないことをしようか」
「……何その言い方、変態くさ」
ふははっと笑うラズの唇を軽く塞ぎ、角度を変えながら段々と深めていく。
ラルドには悪いが、この先我が子がどう成長していくか、そしてどう狙った獲物を落としに行くか、楽しみで仕方がない。
私たち親が出来ることはただ見守ることだけ。
「っはぁ…ラルドにも幸せになって欲しいなぁ」
「そうだね、って言いたいところだけど、こんな状況でほかの男の名前を口にするなんて随分余裕ですねぇラズさん?」
「へ……や、今のは無し!ノーカン!」
「嫌です、嫉妬しました」
「ちょ、やっ、ねぇーーー!」
「しー、ジェイドが起きるよ」
「~~っ!」
いまだ外は明るい昼下がり、二つのくぐもった声が静かに消えていった───。
-END-
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