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第1章
王の寵愛(2)※
しおりを挟む「――陛下、雛鳥様をお連れしました」
「入れ」
入室の許可を出すと静かに開く重厚な扉の音。
自分の通れる隙間だけを開け、そそくさ入室するとすぐに両手で閉める一連の動作が雛鳥らしい。
王が声をかけるまでは傍に近寄らず、扉の前で待機する姿も、何年そばに置こうが変わらずおごらない姿が王は気に入っていた。
「ヒナ、いつまでそうしている。こちらへ来い」
「っ!」
デスクに向かい書類から目を離さず声をかければ、その表情がぱぁぁっと輝き喜びに頬を染め愛らしく近寄ってくるのが見なくともわかる。
いつもなら手を止め、やって来るのを待ち構えるが――今日はあえてそうしなかった。
「陛…下?」
そのただならぬ雰囲気に雛鳥も気付いたのか、デスクを挟んだ一歩手前で歩みが止まる。
「どうした、近くへ来い」
「で、でも…」
オロオロする雛鳥へここで初めて視線を寄越し、その姿をじっと眺める。上から下まで動かした視線はある一点で止まった。
「陛下、僕、なにか…」
「片耳のはどうした」
「っ、!?」
指摘した途端はっと反応するのと同時に、条件反射であるべきものが無い左耳を覆い隠す手。
その反応を見届けた王は、はぁ…とため息をつくと万年筆を起き、緩慢な動作で立ち上がる。
デスクを周り、雛鳥の目の前へ辿り着くのは一瞬だった。
王の胸あたりの身長しかない雛鳥は大きな壁のように立ちはだかる王を目の前に立ちすくんでいた。
だが、俯くことも出来ず、王の目を見つめたままその足は子鹿のように震え、立っているのが精一杯の様子。
そんな雛鳥をもう一度一瞥する王は、次の瞬間、なんの予告もなしに細腰へ片腕を回すとグイッと自分の方へ引き寄せた。あっ、と小さく声を上げながらも、王の目を見るため上半身を反らせた雛鳥は、反対に下半身は密着してしまう。
「っ」
意識した事が王に伝わったのか、下半身の間に割り込まれた筋肉の張った硬い王の太ももがじわじわと刺激を加え、閉じることも叶わず内股でつま先立ちになってしまう。
「へ、へ…か…ぁ」
「雛鳥よ、我が常日頃おまえに言い聞かせていることはなんだ?」
下半身ばかりに気を取られていると、腰に回った腕とは反対の手が大きく裂けたスリットから中へ入り込み、ほぼ紐である下着の上から今朝可愛がって頂いたばかりでまだ緩い入口をやんわりと刺激される。
「っ、…へ…か以外の、人と……ぁ、ん……関わら、ない……っふ」
「そうだ。ならば何故、おまえは庭園であの者と共に居た?」
「ぇ、あっ……んぅっ」
質問をしてくるのに答えさせる気は無いのか、容赦なく下着をくいっと引っ張られ、その刺激で前も後ろも反応し甘い痺れが全身に走った。
体を小刻みにビクつかせる雛鳥を王はさらに強く抱き寄せ、自らかがみながら耳元へ顔を寄せると静かにこう告げる。
「隣国の者…それも騎士団長ともなれば、戦は避けられんな」
「――!だめ、絶対にだめです!」
「それはおまえの行動次第だ。――ヒナセ」
「っ……は、い」
雛鳥こと、ヒナセ。
王のみが呼ぶ事を許された雛鳥の本当の名前。
いま自分のやるべきことを務めるべく、そして、今後の自分の行動を弁えることを固く心に決め、王からそっと距離を取ると、一枚の布であるワンピースをそっと肩から落とした―――。
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