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第2章
双子の片割れ〜カイ〜
しおりを挟む軽く休憩を取ったあと、少しのあいだ偵察組のアランとルイ、留守番組のカイとヒナセに分かれての行動になると告げられる。
了承の意を込めこくりと頷いていると「俺も雛ちゃんと待ってたぁい」と駄々をこねるルイは座るヒナセにしがみつくがすぐさま頭をべシッと叩かれ問答無用でアランに襟を引っ張られていた。
入れ替わるように今度はカイが隣に座ってくる。
「雛ちゃんの事は僕に任せて、濃い良質な情報を集めてきてください」
「頼んだ。それじゃあ俺たち行くけど、すぐ戻ってくるからカイと一緒にいてね」
「ついでに何か食べ物も買ってくっね~」
「大人しく待ってます、お気をつけて」
大きく手を振るルイと軽く手をあげるアランにふりふりっと小さく手を振ったヒナセは言いつけを守るためベンチにしっかり腰を沈める。そんなヒナセの様子にクスッと笑ったカイも同様に深く腰掛けた。
「雛ちゃん、どう?城下町見物は楽しいですか?」
「楽しい、です。これまでお城の中からあまり出たことがなかったから…どれも新鮮で、すごく楽しい」
心からそう言うヒナセは自然と表情も興奮で明るい。それはもう、いまなら聞かれた事はなんでも答えてしまうほどに―――浮かれていた。
そんなヒナセの様子に気付いていたカイはすかさず話を続ける。
「雛ちゃんはいつから城に?」
「んんん……正確にはわからないです。でも、十年以上は前、僕みたいな子が大勢集められた所から陛下に拾っていただきました」
「―――!」
自分と同じ元孤児なのだと知り咄嗟に目を見開いてしまうカイ。
「……そう…なんだ。ねぇ雛ちゃん、城に同年代の子は見かけないけど、もしかしていつもひとりで過ごしてたのかな…?寂しくない?」
「陛下は忙しい方なので……大丈夫です、ひとりは慣れてます。それに、ずっとひとりだったわけじゃないんですよ、僕に沢山の事を教えてくれた優しい方もいました」
「へぇ、そうなんだ、その人は今は?」
「……亡くなりました」
「!」
「本当に本当に、優しくて大好きでした」
無邪気に答えるヒナセと違いカイの表情は曇るばかりだが、丁度広場で始まった大道芸に目を奪われていたヒナセはまったく気付かなかった。
会話が途絶え、沈黙が二人の間を流れる。
こういう時、ルイだったらすぐに話を切り替えうまくやるのに…と自分の苦手部分を補ってくれる双子の弟のことを考えてしまう。
「―――くん?カイくん?」
「!」
「大丈夫、ですか…?ごめんなさい、僕ばかり話しちゃいましたつまらなかった、ですよね…」
「全然!全然だよ……もっと聞かせて、雛ちゃんのこと、もっと知りたい」
ルイのコミュ力に頼るのではなく、カイとしてヒナセと会話をして、ヒナセの事が知りたい―――
いつもふたりでワンセット、そんな双子の片割れカイが、ルイを伴わない望みを持った初めての瞬間だった。
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