VRMMOで神様の使徒、始めました。

一 八重

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本編

第31話 マヨイの除草作業再び。

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 プロゲーマーチーム"流星群"のシブンギさんたちと簡単な情報交換を済ませた僕は暁たちに追いつくため北に向かって走っていたが、2人がモンスターを倒しながら北上していたのもあって5分も掛からずに追いつくことができた。

「おかえりなさい!」

「うん、ただいま……って暁、どうした?むすっとして」

「兄さん、ごめん」

「あぁ……それはいいよ。次に会ったら謝ろうな」

「うん」

 どうやらシブンギさんに対する態度を今になって反省しているらしい。確かに問題がある態度だったがシブンギさんにも非がなかったわけじゃない。次に会った時に謝れば許してくれるだろう。

「アカちゃんから聞きました。お知り合いだったんですね」

「まだ僕が動画配信者ストリーマーとして活動してた頃に何度か会ってるんだ。さっき声を掛けてきたシブンギさんがリーダーでね、中核のメンバーには日本で見られる流星群になんだ名前が付いてるんだよ」

「シブンギさん?も流星群の名前なんですか?」

「四分儀座流星群っていう12月の終わりから1月の上旬に見ることができる流星群が元ネタだよ」

「ちなみに兄さんが3年前に"流星群"の人にガチギレしたせいで人気だけが取り柄だったクズが引退したんだよ。で、その人の取り巻きしてた若手のプロゲーマーたちも引退したの。だから若手のプロゲーマーが少ないチームなんだよ」

「え、どういうことですか?」

「兄さんと藍香お姉ちゃんの生配信で当時の"流星群"のメンバーが招待された時にね、あのクズが兄さんを本気で怒らせちゃったの」

「藍香に負けた言い訳で『お金貰って八百長頼まれた』とか言い出した人がいたんだよ。あと暁、ゴミ屑に失礼だからクズっていうのはやめとこ」

 自分で言っておいてなんだけど僕も彼はクズだと思う。

「分かった」

「そんな人がいたんですね……」

 それまでも似たような事を言い出すゲストがいなかったわけじゃないけど、配信中に言い出したのは当時の"流星群"のサブリーダーだった男が初めてだった。
 モデル兼業プロゲーマーという少し変わった肩書きで売れていた彼の発言力は大きくて生配信中のコメントは大炎上した。

「それで藍香が泣き出しちゃってね。僕も我慢の限界だったからシブンギさん腹黒策士の提案に乗って懲らしめたんだ」

 僕たちとのトラブル以外にも問題を抱えていた彼をシブンギさんはアッサリと切り捨てた。生配信中に送られてきたシブンギさんからのメールには、チームのリーダーとしての謝罪文とプロゲーマーとしてのプライドも尊厳もズタズタにして欲しいという依頼が書かれていたのだ。
 冷水を浴びせられたかのように冷静さを取り戻した僕はシブンギさんと協力して彼のプライドをズタズタにした。

「そしたら関係ないメンバーの心までポッキリ」

「あのクズ未満の腰巾着みたいな奴らだったし罪悪感はなかったのが救いだね。シブンギさんは困ってたけど」

 それでも主要メンバーの世代交代として花奏かなでさん──今のオリオンさん──を前面に押し出してプロデュースしたことで以前とは違うファンを獲得したらしい。タダでは転ばないとはこの事だろう。

「そのクズミマンさん?という方は今どうしてるんですか?」

「しばらくモデルとして活動してたのは知ってるけど、今は分からないなぁ……」

 クズミマンは名前じゃないんだけどね。

「あ、あれじゃない!?」

「あの煙ってお風呂屋さんかな?」

 見えてきたのは砦のような厳つい印象をウケる壁の向こう側に何本もの煙の筋が並ぶ光景だ。おそらく壁の向こう側が金属加工で有名らしいテコの街なんだろう。
 その奥には山が見える。金属加工で有名ということは鉱山なんだろう。加工するもの鉱石がなければ金属加工はできないのだから。

「金属加工で有名って言うなら鍛冶屋じゃないかな。あの奥に見える山が火山でお湯が湧いてるって可能性もゼロじゃないだろうけど」

「温泉ってVRで入って意味あるの?」

「湯治の気分は味わえるからいいじゃないか」

「こ、混浴とかあるんでしょうか!?」

「クレア!?」

 ローマ帝国時代の温泉──テルマエだったかな?──や日本の江戸時代の大衆浴場も基本的に混浴しかなかったらしいけど、ゲームの世界だから流石に混浴はないと思う。

「それにしても街道沿いに進むとモンスターと全く遭遇しないな」

「これなら位階が低くても来れそうだね」

 たまに探索スキルに引っかかるけど街道からは離れているので放置している。ログアウトしなければならない時間が決まっている以上、目的地に着く方を優先したい。
 問題があるとすればクレアちゃんのレベリングがほとんど進まなかったことだ。

「そういえば別に同じパーティなら手出ししてなくても経験値は入ったよな?」

「うん、そうだけど……あ、お兄ちゃんストッ──」

「魔力弾×220」

 着弾とほぼ同時に鳴り響く聞き慣れた爆発音。今回は探索スキルで把握できたモンスター22体に向けて各10発の魔力弾を放った。まとまっているので狼の群れだろう。着弾予測地点にプレイヤーがいないことも確認済みだ。

「すごい!位階が6も上がりました!」

「ちょっと!やるなら先に言ってよ!」


[Grass King wolfを1匹倒した]
[素材:草原狼王の魔石を獲得した]
[素材:草原狼王の大牙を獲得した]
[素材:草原狼王の毛皮を獲得した]
[装備:草原狼王なりきりセットを獲得した]
[称号:草原狼王の討伐者]


「またエリアボス倒してる!?」

「エリアボスというか、ここまでの傾向的に種族毎のボスというかレアモンスターなんじゃないかな」

 誰がエリアボスと呼び始めたのかは知らないけど、エリアボスというのは僕の中では『倒さなければ先に進めないよう設定されているボスモンスター』だ。現に森大猪はスルーして先に進むことが可能だったらしいし、ボスというよりはレアモンスターと考えた方がしっくりくる。

「そうかも……でもエリアボスで呼び慣れちゃったし」

「お、お兄さん!この装備はお兄さんが着てください」

「素材ならクレアちゃんにあげ……装備?」


名称:草原狼王なりきりセット
分類:装備 頭
部位:頭
効果:Genom of wolf
   筋力+15%
   敏捷+15%
制限:[称号:草原狼王の討伐者]


 もはや僕の中で定番になりつつある称号が装備するための条件になっているタイプの装備だ。
"Genom of wolf"は移動速度向上と狂狼化という効果を持っているようだ。移動速度向上は読んで字の如く移動速度が速くなる効果で補正値は敏捷の数値に比例する。そして狂狼化は一時的に知力を0にし、知力以外のステータスに知力の元々の数値を加算するという頭のおかしい効果だった。この効果の発動中は毎秒10の魔力が消費され"封魔"と"狂乱"という状態異常を受けるようだ。


 そして"狂狼化"の効果中は狼の耳と尻尾が生えるらしい。


───────────────
お読みいただきありがとうございます。
本作品は本話で設定集を含めれば10万文字を超えました。ここまで書き続けることができたのは読者の皆さんのおかげです。
今後ともよろしくお願いします。

それと今更ですがマヨイの細かな容姿を書いてませんね。
わざとです。そういうことにしてください。
書き忘れてたわけじゃないんですからねっ!
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