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本編
第41話 マヨイは仲裁(?)する。
しおりを挟む⚫︎マヨイ
「頼む、お願いだから助けてくれ!」
「ふざけんな!都合の良い時だけ善人面すんなよ!」
組合に入って最初に思ったのは『なにこれ?』という疑問、次に口論しているプレイヤーの名前を見て『なるほどなぁ……』と納得した。
ようするに他のプレイヤーに散々迷惑を掛けていたプレイヤーが、NPCを助けてくれと迷惑を掛けた相手に嘆願しているのだ。そりゃ「ふざけんな!」と怒鳴りたくもなる。
その迷惑プレイヤーの名前はチャラ王。僕の名前を掲示板に晒した害悪プレイヤーだ。チャラ王を血祭りにあげるのは決定事項として、この場をどう引っ掻き回せば彼を壇上に上げられるだろうか。
「オリオンさん、タイムリミットってあとどれくらい?」
「えっと、あと40分くらい」
「治療するタイミング、僕が指示するまで待って貰えないかな?」
「……いいよ。その代わり後でステータス見せ合いっこしよ?」
「見せたステータスを他の人に教えないなら」
「契約成立」
僕が覚醒を持っていることは既に知られているからステータスを見せるだけなら問題ない。交換条件としては問題ない……と思う。
「お話のところすいません、チャラ王さんですか?」
「そうだ、です。俺がチャラ王です」
「チャラ王さんは重体の状態異常を治したい、そちらの女性は治す手段を持っているがチャラ王さんの望みは叶えたくない、で合ってます?」
「そうよ、それが何よ」
おー、怖っ。
でも話に耳を傾けてくれるのは手間が掛からなくていいね。
「でしたらチャラ王さんが治したいと考えているNPCだけ治療せず、他のNPCは治してあげませんか?このまま治療を拒否し続けたらヒーラーさんが一方的に悪者のように言われてしまうかもしれません。何せチャラ王さんは他人を掲示板に晒した事もおありですからね」
「お、おま、それはないだろう!?」
「……そうね、あの門番以外は治すわ。ただ聖術スキルの"欠損治癒"は魔力を100も消費するから魔力回復薬がないと全員は無理よ」
「それについては野次馬の皆さんに助けて貰いましょう。さすがにこの状態で協力しないなんて酷いことを言うプレイヤーはいないでしょう?」
そう言って周りを見渡せば何人かが魔力回復薬をヒーラーさんに渡そうと近づいてきた。中には組合の受付まで行って魔力回復薬をわざわざ購入して渡そうとするプレイヤーもいる。やっぱりMMOなんだから助け合ってなんぼだよね。
逆に僕を睨んでるプレイヤーもいるけど、たぶんヒーラーさんに見捨てられた門番と交流のあったプレイヤーたちだろう。そう誘導したのは僕だけど、そんなに睨むなら僕がチャラ王と彼女の口論に口を挟んだタイミングで文句を言ってくればいいのにね。
「それじゃ残り時間の少ないNPCから治療を始まるわ。詠唱時間も長いし、急がないとね」
そう言って組合の奥へと案内されるヒーラーさんを追いかけようとするチャラ王の腕を掴む。ようするに彼女はチャラ王に対して意趣返しがしたいのであってNPCを助けたくないわけではないのだ。なら意趣返ししつつNPCを治せる両取りの選択肢を提示すれば済む話だった。
「てめぇ!どういうつもりだ!?」
「さて……この場に彼女、ヒーラーさん以外に重体の状態異常を治せるプレイヤーがいる」
「なっ……」
「でも僕も君には少なからず迷惑を掛けられているんだよね」
「ごめ────」
声が小さくて聞き取れないが、どうやら彼は僕に謝っているつもりらしい。
「何をしたのか自覚もないのに謝んな。黙って最後まで話を聞け害悪プレイヤー」
「…………」
「僕らで決闘しよう。勝てば重体を治せるプレイヤーを紹介するよ」
「……俺が負けたら?」
「紹介しないだけさ」
「……俺が勝ったら、俺がお前に何をしたか教えて欲しい」
「いいよ、んじゃどこか開けた場所に移動しようか」
僕と一緒に組合に入ってきたプレイヤーを問い詰めればいいという簡単な事にも気がついてない辺り、僕の予想以上に追い詰められているのかもしれない。
…………………………………
……………………………
………………………
さすがに屋内で対戦するわけにはいかないので組合の奥にあるトラック競技ができそうなくらい広い訓練場で決闘することになった。
案内された訓練場の地面は焦げ跡や水溜まりが散見できた。案内してくれているプレイヤーの方によれば街に侵入したワイバーンを訓練場まで誘導して戦ったらしい。
ちなみにチャラ王はこの場にいない。武器を修理に出しているとかで取りに行っている。
「あの焼け焦げた建物は?」
「あれは薬草庫……だった場所だな。戦闘中、ワイバーンの火属性魔術が当たって燃え落ちたんだ」
「ワイバーンの火属性魔術ってどんなのだったんですか?」
「目がチカチカするくらいの量の火の粉を翼で煽って飛ばしてくるんだよ。ダメージはそこまでじゃなかったけど"火傷"や"延焼"の状態異常を重複して与えてきたんだ」
"火傷"は受けた部位の広さに比例した割合のダメージを受ける状態異常だ。それに対して"延焼"は受けた部位とそれに触れたものに"火傷"を与える状態異常らしい。もちろん後者の方が厄介だけど、どちらも水を掛けるだけで治るそうだ。ワイバーンとの戦闘では"延焼"を受けたプレイヤーに何度も水を掛けたせいなのだろう。訓練所には大きな水溜りが複数あった。決闘する時は足を取られないように気をつけよう。
「その火属性魔術から瀕死のチャラ王を助けようとしたNPCがいてな。この街の東門で門番をしてるスーガってNPCだ。チャラ王を庇って大量の火の粉を浴びたスーガは瀕死の重体、ワイバーンにトドメを刺したチャラ王が門番に感謝を伝えようとしたら余命のカウントダウン真っ最中だったわけだ」
「それは精神的にキツそうだね」
「で、そんな精神的にキツいチャラ王に追い討ちを掛けたのが昨日と一昨日の自分の行いだって言うんだから皮肉なもんだ。さっきの彼女もリアフレがチャラ王に絡まれて初日でゲームをやめたらしいからな。協力してくれ、助けてくれって言われても素直に応じる気にはなれなかったんだろ」
『真宵、思い出したことがあるんだけど、ちょっといい?』
「あ、フレンドコール来たんで」
「おっけー、んじゃ俺はこれで」
そう言って見覚えのあるプレイヤー名の男性は訓練場の端へと移動していった。どうやら仲の良いプレイヤーと一緒に僕とチャラ王の決闘を見学するらしい。
『いいよ、まだ決闘相手が来てないし』
『なんか修理中の武器を取りに行ったみたいね。あとチャラ王ってプレイヤーの顔を見て思い出したんだけど、私も初日に絡まれたのよ』
は?
『絡まれたって何をされたの?ナンパ?』
『ナンパしてきた彼にハラスメント行為を受けただけよ』
へぇ……
『……それ、このタイミングで僕に教えた意図は?』
『ハラスメントの仕返し、まだしてないから真宵にお願いしようと思って』
『任されましたよ、お姫様』
『もぅ……私はオリオンと一緒に見てるからね』
『りょーかい』
チャラ王、もう蜂の巣にするだけじゃ足りないよね。
ただ僕だって後味の悪い結末にはしたくない。チャラ王がここに来るまでの間に手を回しておこう。
───────────────
お読みいただきありがとうございます。
なんで思い出したぁぁぁ!?
アイのセリフを一部変更しました。
大筋に変更はありません。
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